激動の10年! 今「1990年代のクルマ」が注目されている2つのワケ

当時を知っている人のみならず、20代の若いクルマ好きの間でも1990年代のクルマ(90年代車)が注目されています。

「子どものころ親が乗っていた」という懐かしさから90年代車に興味を持つ人もいれば、90年代らしい雰囲気や車種ラインナップにおもしろさを見出す人もいて、さまざまな角度から関心が集まっているのです。

そこで今回は、1990年代のクルマの変化にフォーカスしていきます。懐かしさなどを抜きにしても、1990年代は語るべきことが多い時代なのです!

今見ても個性を放つ90年代車のラインアップ

今、90年代車に注目が集まっている理由は、大きく2つ。ひとつは、「車種の豊富さ」です。

もちろん、車種ラインナップでいえば、今だってたくさんあります。でも、1990年代はいわゆる“クルマ好き”の人たちが熱くなるモデルが、多い時代だったと言えるのです。たとえば、日本メーカーだけでも次のような車種がありました。

<トヨタ>

セルシオ、クラウン、ソアラ、スープラ、アリスト、ウインダム、マークⅡ、クレスタ、チェイサー、カローラ(レビン、セレス、FXなど)、スプリンター(トレノ、マリノなど)、エスティマ、エスティマルシーダ/エミーナ、イプサム、ガイア、コロナエクシヴ、カリーナED、セラ、カレン、サイノス、MR2、MR-S、RAV4、アルテッツァなど。

<日産>

シーマ、セドリック、グロリア、セフィーロ、プリメーラ、ブルーバード、スカイライン、フェアレディZ、ローレル、シルビア、180SX、パオ、フィガロ、キューブ、パルサー、プレーリー、ラシーン、サニー、NXクーペ、プレセア、レパード、ステージア、マーチなど。

<ホンダ>

トゥデイ、シビック、アコード、ビガー、アスコット、インスパイア、ラファーガ、レジェンド、コンチェルト、オデッセイ、S-MX、ロゴ、HR-V、CR-V、CR-X、インテグラ、NSX、ビート、ドマーニ、ライフ、ステップワゴン、オルティア、S2000など。

<マツダ>

センティア、MPV、RX-7、ロードスター、カペラ、ファミリア、デミオ、クロノス、ランティス、ユーノス800(ミレーニア)/500/300、オートザムAZ-3/AZ-1、アンフィニMS-6など。

<三菱>

デボネア、ディアマンテ、シグマ、ギャラン、エテルナ、エメロード、ランサー、ミラージュ、パジェロ、パジェロミニ、デリカスターワゴン/スペースギア、チャレンジャー、RVR、シャリオ、エクリプス、GTO、レグナムなど。

<スバル>

レガシィ、インプレッサ、ヴィヴィオ、ジャスティ、アルシオーネSVX、ドミンゴ、プレオなど。

<スズキ>

アルト、アルトワークス、セルボモード、ワゴンR、エスクード、エスクードノマド、ジムニー、ジムニーワイド(シエラ)、カプチーノ、キャラ、カルタス、Keiなど。

<ダイハツ>

ミラ、ムーヴ、リーザ、オプティ、テリオス、ネイキッド、アプローズ、シャレード、ストーリア、パイザー、ミゼットIIなど。

今も残るモデルネームもありますが、失われてしまった名前も多く、それだけでも20年以上もの時間の経過を感じさせます。でも、“忘れ去られてしまった名前”は意外と少ないのではないでしょうか。セラやアルシオーネSVX、AZ-1、デルソルなどは、超がつくほど個性的で、今も根強いファンが存在しています。

では、なぜこれほど車種ラインナップが豊富だったのか。それを紐解くと、1990年代という時代の変化が掴めます。

クラシックからハイブリッドまで進化が凝縮!

ひとくちに1990年代と言っても、1990年と1999年では時代も車種ラインナップも大きく変わっています。1990年代が熱いもうひとつの理由は、「激動の時代」にあると言えるのです。

バブル経済の終焉やドイツ・ベルリンの壁崩壊など、社会をとりまく環境は大きく変わりました。バブル崩壊後の日本では価値観の変化が大きく、クルマに求めるものが“ステータス性”や“モテ”から、“自分らしさ”や“ライフスタイル”といった方向へシフト。

RV(今で言うSUV)ブームが加速したり、オデッセイやステップワゴンの登場をきっかけにミニバンがファミリーカーの主役へと台頭してきたり、選ばれる車種も大きく変わりました。

  • ホンダ オデッセイ

また、景気が低迷する中、キューブやデミオといったコンパクトカーが生まれ、ヒットするようになったのも、1990年代後半です。1997年に日産が高級ミニバンのエルグランドを発売したのは、その後の“ミニバンシフト”を示唆する一例だと言えるでしょう。

  • 日産 キューブ

さらに1990年代は、クルマに求められる性能が急激に厳しくなっていった時代です。その性能とは、「衝突安全性能」と燃費や排ガスをはじめとした「環境性能」です。

1990年代初頭は、まだクラシックなスタイルのクルマが現役で、製造・販売されていました。たとえば、センチュリー、ジャガーXJ、サーブ900、ルノー4(キャトル)は、1960年代に発売されたものが改良を重ねて作り続けられていましたし、シトロエン2CVにいたっては1948年からフルモデルチェンジすることなく1993年まで作られました。

こうした当時、すでにクラシックだったクルマの多くは、1990年代前半に生産を終了します(MINIは異例で1959年から2000年まで生産された!)。安全性や環境性能への対応が厳しくなったためです。

当時を知っている人なら、エアバッグの標準装備化やトヨタの「GOAボディ」といった衝突安全ボディを訴求するテレビCMや広告を覚えているかもしれません。1990年代中頃からは、各社がこうした衝突安全ボディのPRを盛んに行いました。

燃費や排ガスに対する規制が厳しくなったのも、この頃。1990年代前半には、1リッターで4~5㎞しか走らないようなビッグセダンもあったものですが(アメリカには排気量7リッター超という車種も!)、世界的に低燃費化が進みます。

特筆すべきは、1997年の出来事でしょう。量産車初のハイブリッドカー、プリウスの誕生です。

  • プリウス

1リッターで4㎞しか走らないような、クラシックなセダンが現役だったころから、わずか数年で1リッターで28.0㎞(10・15モード)を実現したプリウスが生まれたと考えると、1990年代は“進化が凝縮された時代”だったと言えます。

懐かしく新鮮な30年前の追憶

2000年代になると、ノア/ヴォクシーやアルファードが生まれ、ファミリーカーの主役は完全にミニバンへ。また、排ガス規制強化の影響から、2002年にシルビアやスープラといったスポーツカーが生産終了となり、しばらくはコンパクトカーとミニバンが中心の時代となります。

  • トヨタ ノア

今のようなSUVブームやトヨタ86といったスポーツカーの再燃は、2010年頃からのこと。だからこそ、1990年代のクルマが今も輝いて見え、また当時を知る人だけでなく、若い人の気持ちを熱くさせるのです。

とはいえ、今その希少価値から高値で取引されている1990年代車だって、当時は“普通のクルマ”の一部でした。あと10年もすると、初代のヴォクシーやアルファードが“平成レトロ”として再注目される日が、くるのかもしれません。いつの時代も、「30年前」は懐かしく、また新鮮に映るのです。

(文・編集:木谷宗義type-e+ノオト/写真:トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、SUBARU、スズキ、ダイハツ工業、Jaguar)

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