憧れの運営スタッフの立場から振り返るラリージャパン

2023年、最後の原稿となりました。今シーズンは例年になくあっという間…に過ぎましたね。驚くほどに。コロナ禍であれだけ苦悩を味わった3年間を振り返る暇もなく、世の中は一気に前進して行き、その流れで仕事をしていたのできっと早かったのでしょう。

モータースポーツもこれまで出来なかったことが蘇りました。3年のブランクは、あちこちに爪痕を残してはおりますけどね。そして、酷暑という環境。ほんとうにしんどかったです。体力の無さを感じましたし、スケジュールも辛かったです、ほんとに(笑)。

そんなシーズンでしたが、新しい経験もさせていただきました。今季の最後にラリージャパンの運営側のお仕事に携わることが出来ました。

これは、私にとって驚きの出来事でした。WEC富士もそうですが、国際レースに携われるのは憧れです。普段の仕事もですが、好きなことがいつしか仕事になってしまっているので、わたしは「遣り甲斐の塊」です(笑)。

少しその中で経験したことを最後に綴りたいと思います。

プロローグ

今年からラリージャパンは、愛知県豊田市が運営することになりました。自治体主催に変更となることは、昨年すでにアナウンスされていましたね。なるほどと、傍から見る一ファンとして、今年の開催も変わらずに楽しみにしていました。

昨年はファンとして観戦に行き、4日間、豊田市に滞在。土地勘が少しわかるようになったころに帰宅しました。土地勘と言っても、豊田市駅から豊田スタジアムのあの道を行ったり来たりの程度でしたが、方向と距離感がわかるというのはとても大事でね。

バスが出るというデマも流れていましたが、豊田市駅付近に滞在しているチームのスタッフも歩いて通勤していました。自分で動けるようになる良い指針となりました。

今年は友人と、SSに行きたいとか椅子も持って行こう!などと話しながら開催を楽しみにしていました。しかし、春にひょんなことからメディアオフィスのお仕事にお誘いいただき、6月末くらいから少しずつ関わっていました。もちろん本番がメインですけどね。

そもそもラリージャパン…、昨年は愛知県まで行って見るのか?テレビかな?と考えていたところに、スーパーフォーミュラ最終戦が開催された鈴鹿サーキットで、平川亮選手の応援に来られていた勝田貴元選手と再会。

そこでお話したことで、行ってみようかなとホントに思うきっかけとなったのです。これからラリージャパンに来られる方が、色々参考になるように残して欲しい、というのが彼のリクエストでした。

彼が、全日本F3選手権で走っていた10年ほど前は、いつもサーキットで会っていましたが、そのうちラリーに転向され、海外に行かれてさみしく思っていましたので、これはサポートしてあげたい!と素直に思いましたね。

とても偉大になられた勝田選手ですが、いまだに「お母様」と呼んでくださるドライバーさんでね。つくづくありがたいと思っているんです。

  • 木曜日のオートグラフセッション ドライバーによるサイン会 列に並んで先着順で対応していました

そして、あの昨年の鈴鹿に話を戻すと、勝田選手が「ラリージャパンで僕と会えるのは、シェイクダウンが終わってスタジアムに戻ってからの木曜日くらいかもです」と、おっしゃったんですよ。

私、メディアではなく一ファンとして行く気になったのは良いのですが、レース同様に土日に行けばいいんだと思っていて…木曜日???それだけWRCの詳細を知らなかったんです。

それに、応援に行く!と社交辞令をうっかり言うような性格ではないので、よくわかっていないけど、よし!木曜日から行ってしまおう!と、チケットとホテルを手配した…というのが昨年でした。

結局、昨年観戦しに行ったことが今回のラリージャパンでのお仕事に活かせて良かったですけどね。また、昨年は私のレース業界の大親友とそのご家族(豊田市在住なんです)にまでお世話になりました。

行く前は不安でね、知らないところで4日間も過ごすことが。海外ひとり旅とか仕事となると一人行動は全く平気なのに、ファンとしてモータースポーツのイベントを追いかけたことがないので、何かこう…不安しかなく。豊田市に行ったことは何度かありますし、文明の利器を駆使し、スマホで呼び出せばどこにでも行ける時代ですがね。

でも友人家族や豊田市の友人たち、毎日いろんな方に会って、お世話にもなり切り抜けました(大げさ)。感謝しかなかったです。それもあって、もう愛知県豊田市は私のテリトリー(笑)。憧れの仕事もやることになり、結果的に行って良かった!でした。

いざ、本番

いざ豊田市入りしてからは、8月にも伺った豊田スタジアムの中で迷子になる始末でした。メディアセンターがある地下のスタッフエリアと地上を行ったり来たりするだけなのにね。やーね(笑)。来た道を帰るだけなのに(笑)。

設営をしていますが、某ブロック感がハンパないです リアルの世界に見えない…全て某ブロックみたい

サッカースタジアムですから大きいのですが、準備する光景を見ながら少しずつ仕事も変化していき、大きなスタジアムも一つの風景として心の中におさまるようになると、会場もどんどん出来上がり、車検も始まって、開幕に近づくと緊張感とワクワクに襲われました。

スタッフと共にいただくごはんタイムも楽しかったです。いろいろ勉強になりましたので。新しい仲間たちと長い期間の現場も貴重な時間でした。他の仕事もたまたまなく、早めに入り思いがけず長い期間となりましたが、行って良かったです。あと少し早くても良かったかも(笑)。寝不足はいつも戦いですが、どうにかこれも切り抜けられました。

私はスポットのお手伝いですが、豊田市の職員のみなさまは一年がかり、いやそれ以上なのかな? ほんと普段と全く関係ないモータースポーツの仕事をやるのは、大変だっただろうなと、ご苦労も想像以上だったと思います。何事も一度経験してしまえば経験値。今年を起点として改善により進化して行って欲しいです。

もちろん、きっとそうなると思っております。それにね、地元でこのようなイベントが開催されるなんて、ふるさとの誇りですよ。めちゃくちゃうらやましいです。街の財産となって絶対に残りますしね。

そして、またこれがバイタリティ溢れるスタッフの方々ばかりだったんですよね。私は一部の方としかご一緒していないんですけど、ほんと若さがとてもいいなあと思いました。あと20年、30年、同じメンバーで出来るかもですよ。いいなあ…。

ラッピング列車の走る山岡駅付近 実際に走るところは動画で撮りました…

  • こちらは、一両だけではないラッピング列車

また、ラリーの大ベテランのカメラマンさんたちからも沢山学ばせていただきました。SSへは慣れていないので、行くことは当然無理でしたし、本番は豊田スタジアムにいることになるので、せめてリエゾンだけでも見たいと思いましてね。

アドバイスをいただきレッキの様子とリエゾンの見学に行きました。岡崎市SSと、恵那市の山岡駅付近の観戦エリアと、行って見たかった岩村リエゾンエリア。

恵那市、岩村と昨年行ってないけれども、すぐ写真と動画を見て憧れの地になりました。ラリージャパンが終わってからも、ぜひ行ってみたいと思うようになり…。ラリージャパンの影響をもろに受けた結果ですが、今年も人気だったようですね。

岩村は、素敵な街並みを実際クルマで走りました。競技当日は、雪予報も出ていたので迷いに迷って諦めたのですが、行けば良かったと後悔しております…。

山岡駅付近もラッピング電車を撮りたく向かいました。連れていってくれたカメラマンくんは、撮り鉄だったみたいです。撮影に関するスマートなお作法を知っていました。あの世界、私いつでも入って行けそう。田舎の風景と一両だけの車両(これは動画で撮りました)、萌えます、ヤバイ。

味噌樽が置かれている

岡崎市SSの開催地は、今年、岡崎中央総合公園に変わりました。夏に一度ご案内いただき場所を把握。前年から全く雰囲気の違ったSSになることに驚きました。

スタート地点に味噌樽が登場しますと夏にさらっと言われた時は「?」でした。スタッフと朝、移動中に味噌樽の話になり、こちらの名物ですものねって言ったら、かなり細かく八丁味噌について説明を受けました。深い深い…。

ラリー当日は、岡崎のサービスにも岡崎市出身の中嶋一貴さんがお見えになってましたね。そうか、岡崎だったと思って送られてきた動画を拝見していました。あとステージのような場所で、街のみなさんで「海老すくい」を踊っている動画が送られて来ました。知ってますよ、大河ドラマのアレですね。

今回は、TOYOTA GAZOO Racingのコンテンツもあちこちでありましたが、それに張り付くこともなく過ごしていました…。不思議な感じでしたけどね。

豊田スタジアムもTGRドライバーによる盛り上げコンテンツがいくつかあったり、外でトークショーをやられていたり、実はとっても豪華でした。小林可夢偉選手、平川亮選手に中嶋一貴さん、そりゃ豪華に決まってます。「世界」には「世界」ですね。TGRワールドラリーチームのホームとなる日本開催に華を添えていました。

豊田市駅前で行われたファンイベントも伺いました

こちらは、開幕前の水曜日に開催されたファンイベント。もちろん無料です。これも貴重。近隣の方やこの為にかけつけたファンの皆さんでいっぱいでしたね。マシンも展示されていましたが、もちろんマシンに乗って豊田スタジアムから移動して来るので、街を走るラリーカーが見られました。これもまた貴重。

たくさんのコンテンツがぎっしりでしたが、平日にもっともっと豊田スタジアムに足を運んでいただく方法を考えなくてはいけませんね。日曜日は、セレモニーしかなく競技がないし、平日はメインの夜のスーパーSS。これはもっと宣伝すれば入ると思います。

土曜日、自由席はチケットが売り切れていました。すかすかに見えてしまうスタジアムですが、なんせ広いし、ゲートの反対側は埋まっていないので仕方ない。人、入っているんですけどね。

いつかあそこがいっぱいになったら感無量でしょう。ギリシャのアテネを参考にしたら良いと外国のメディアの方に言われました。チケットがとっても安かったそうです。その方から聞いた話なので、言質を取っていないのですがね。

豊田スタジアムのセレモニアルスタートから競技まで、かなり変わりましたね。外国人のメディアには、俺はサムライの方が好きだ(昨年のオープニング)と言ってる方がおりましたが(笑)。

いろいろ趣向を凝らしていましたが、セレモニーがスタートしたときは鳥肌が立ちました。前日にリハーサルを見たというのに。本番になり、夜は待ちに待ったスーパーSSをもったいないからスタッフルームから出て生で拝見しました。

オット・タナック選手とカッレ・ロバンペラ選手

これわかりやすくていい! 格闘技を見ているみたいでした。テーマ曲(名前は不明だけど)に乗って登場して、1対1のバトル。しかもこの上ない取り組み(対戦相手の組み合わせ)だったので萌えました!

ラリーは、タイムアタックの競技ですので、私が取材しているモータースポーツと少し違って、相手と戦うのではなく、自分との戦い。

競技中に相手が見えるという事はまずありません。このスタイルは競うことがドライバー自身の目に見えるのかも。見えなくても感じるかもね。勝田貴元選手のお父様で、勝田範彦選手は、豊田スタジアムのデュエルコースは相手が見えるのでつい見てしまうとおっしゃっていましたが…本番でクラッシュしてしまいました。残念でした。

ラリーウィークに突入し、日々スタジアムに詰めていて、リアルタイムにサービスの様子などが入る無線が室内に流れる中、テレビでSSを見て仕事をしていました。勝田貴元選手のSS2のクラッシュ後のしんどい姿も見て、その後連続でトップタイムを出しまくって、それを出迎えて囲み取材を拝見して…。

最終的に22あるSSのうち10のトップタイムを記録。スタジアムに戻って来てご機嫌な顔をたくさん拝み、カメラで激写、と普段やっていることと変わらないのですが、わたしは初体験でしたので毎回感慨深かったです。

TGRの表彰台独占で幕を閉じましたが、勝田選手はSS2のロスが最後まで響いてひとりだけ5位で表彰台に上がれませんでした。寂しかったけれど、何かとてもポジティブ。てっぺんに立つ日も近いのかもと思いました。ぜひこの目で見られるといいなと思います。

そして、自分にとって日本ではあるけれど、「世界」をひしひしと感じる瞬間。彼らはプロだから、ダメな結果でももちろん良い結果でもきちんとインタビューを受けますし、その表情を生で見られることがとても素晴らしい時間でした。

豊田スタジアムに戻って来た車両

そして、最後にカミングアウトをさせていただくと、神様セバスチャン・オジェ選手のファンでして、世の中にたくさんいるセバスチャンさんの中で一番好きです(笑)。神がかった走りと笑顔と笑顔のしわが好きです。たまにはミーハーな事言わせてください。というわけでちょっと写真を足しておきますね。

あとね、全日本の方でも触れたいことがあるのですが、長くなりましたので、こちらはまたいつか。自分の取材の課題でもあります。ちょっと取材したいことがあるんだよね。

まずは、一旦の区切りといたします。今年もお世話になりました。来年、どうも初体験がありそうです。おばちゃんもうちょっとだけ頑張ります!では、また来年!

(写真、テキスト 大谷幸子)

[GAZOO編集部]