壮絶な戦い、優勝しても次は勝負に勝ちたいというプロのかっこ良さ 〜スーパーフォーミュラ第5戦 モビリティリゾートもてぎ〜

大盛り上がりだった夏の富士大会、あれから1ヶ月のインターバルを経て、灼熱のもてぎに行って来ました。

  • スーパーフォーミュラ第5戦 表彰式

今回のレース、壮絶なバトルの末、優勝したけれど勝負には負けた、次は勝ちたいと勝者に言わせたレースでした。そんな勝者が“負け”と言ったレースを振り返ります。

2台でトップ争いのできる強さ

  • 牧野任祐選手/DOCOMO TEAM DANDELION RACING

とにかく今回はココ!ドコモチームダンデライアンレーシングですよ。レース後、あれこれ考えていろんな思いを持ち帰って来ました。こちらのチームの決勝、終盤のバトルに注目。まだの方は、SFgoアプリでご視聴くださいな。あらためて何度見てもあのバトルは、かっこいい。しかもチームメイト同士によるバチバチのバトルなのです。

  • 1位を走る6号車とそれを追う5号車/ともにDOCOMO TEAM DANDELION RACING

早めにタイヤ交換しトップをいく6号車 太田格之進選手。5号車 牧野任祐選手がそれを追います。終盤、いよいよ追いつきそうと思って見ていたら、しっかり太田選手の背後につき並びました。これだけでも興奮します(笑)。

その後、コーナーを挟みながらバトルが始まりますが、ビジュアル的にもかっこいいのですよ。負けられない戦いの始まり始まり。カメラのアングルも良かった。牧野選手が接近するも抜くにいたらず…、勝負あったか?の流れ。

その直後、それでもワンツーだなと思って見ていたら、ファイナルラップ目前で太田選手がスピン。サーキットに衝撃が走りました。リスタートできるかなと思ってみていたらできず…。マシントラブルで残念ながらここでリタイアという予想もしなかった結末を迎えることに。驚愕でした。

優勝のチェッカーを受けウィニングラップを経てパルクフェルメでクルマを降りた牧野選手には、笑顔はなかったです…。今季、第2戦オートポリスで自身スーパーフォーミュラ初優勝を遂げた時の彼の喜ぶ様は、忘れることのできない光景でした。見ているみんなが感動を引き寄せられて行ったと思うのですが、全く対照的で今回の「笑顔無き勝利」もとても印象に残るものでした。

レースが終わってからは、ミックスゾーンやトップ3記者会見では、牧野選手、太田選手お二人の仲に注目が集まりました。クリーンなバトルの末に決着がついていて、お互いに否はないですが、戦いぶりのかっこ良さとお二人が仲良しだからこそ、メディアもそこに注目したのかなと思います。

では、チームメイト同士のこの結果はどう受け止めるのか?というような主旨の質問もありましたが、そこはプロですからね。

牧野選手のコメントから引用すると、一緒に移動して一緒にご飯を食べて…。今はそうだけれども、遡ると小さい頃からレースを戦う仲。終わってしまえば、友人というか牧野選手は先輩ですが、オンとオフの切り替えできていると。お互いの関係に何も変化はナシ。良い関係は続くと。

  • 優勝した牧野任祐選手と村岡潔総監督/ DOCOMO TEAM DANDELION RACING

先に行われた優勝チーム監督記者会見での村岡潔総監督のコメントにもプロのカッコ良さを感じました。まず前提として、リタイアはこの時点で(接触はないけど、トラブルの詳細がまだわかっていないのでこう書きますね)マシントラブルということ。ですので、二人のドライバーは何も悪くなく、クルマをしっかり整備して次に繋げるということ。これが大事とまずコメント。

そして、このトップ争いが見られることは、「監督冥利に尽きる」とおっしゃいました。もし、また二人がトップ争いをして、どちらかがリタイアになったとしても、うれしいですと言い切る。

確かに、チームの2台どちらとも速いというのは、ざっと見渡して今のところ、同じHonda陣営のチーム無限さんくらいですよね。だからこのめちゃくちゃ僅差で予選もガラリとグリッドの順番が変わるこのカテゴリーに置いて、レースでトップ争いがチーム内でできることは、本当に名誉なことだと思います。村岡総監督の言葉を噛み締めることができました。

  • 優勝チーム記者会見 村岡総監督/ DOCOMO TEAM DANDELION RACING

そして、バトルをした二人のドライバーに特別な言葉をかけるのかという意味の質問には、マイナスの言葉もプラスになる言葉もかけず、プロとして接していくとおっしゃいました。まずはマシントラブルの原因を見つけるのが先決ですしね。そして、このバトルでメンタルが負けてしまうようなドライバーは、ここまで這い上がって来られていないはずともコメント。ですよね、プロだものとうなずいてしまいました。

わたしは母性の塊だけで生きているので、悲しい人は慰めたくなるし、おめでとうな人は祝いたくなるし、まあ余計なお世話なことしか考えていない生き物。でも、こういう時に「男の生き様」を学ばせていただくんですよ。今回も強烈に印象づけられました。そのプロとして接していく、特別な言葉はかけないというところにね。

自分が走った訳でもないのにメンタルが弱いので、困ったものです(わたしの事ね)。苦しい思いとか、すぐ抱えてしまうタイプの人間ですが、この会見でスッキリした気持ちで帰宅しました。

きっと、マシントラブルの原因をリサーチしすぐ前を向くことでしょう。チームとドライバーの信頼関係はそう簡単には壊れないです。そう思って長年見てきています。まずはおめでとうございました。

ピット作業

夏のもてぎ大会は、暑さゆえ?過去にもピット作業にミスが生じています。酷暑の中、集中力を保ちながらメカニックたちは作業にあたるのですが、今年は湿度もすごかったですね。終わってみればわたしが取材したトヨタ系チームでは、3チームがピットでロスタイムがあったようです。

前戦では、KCMGがピット作業のミスで優勝を逃してしまいました。戦績にも大きく関わりますし、失った時間をコース上で取り戻すのは至難の業。ほぼ不可能かもしれません。

今回もミスをしたチームがありましたが、これはもう少し取材を分厚くしたいので、ここでは深く触れないでおきます。振っておいてすみません。自分の中で、取材が少し薄いと感じたもので。チーム事情もあるのでどこまでできるかわからないけどね。

ただ感じたのは、練習量は成功率に比例する。当たり前か…。それは感じました。ほんとこれ。あと、人が足りないのも感じました。タイヤ交換担当が来られない時に、チーム内で穴埋めができればそれで良いのですが、できない場合もあったり、かつ、タイヤ交換ができるメカが少ないとかね。チーム事情もそれぞれで、切なくなりましたね。

ざっくりですみません。もう少し時間かけて取材していきますね。

最後に

  • (左から) 山下健太選手/ KONDO RACING, 牧野任祐選手/ DOCOMO TEAM DANDELION RACING, 野尻智紀選手/ TEAM MUGEN

  • ランキングトップ 16号車 野尻智紀選手/ TEAM MUGEN

ランキングトップを死守し3度目のタイトルを目指す野尻智紀選手がしっかり表彰台に乗りました。“終わってみれば のじりん”です。このしぶとさが、TEAM無限さんなんです。SUPER GTで言えば、36号車 (TGR TEAM au TOM'S)。絶望的なサクセスウェイトなのに、ポイントをしっかり取って来るチャンピオンチーム。同じに見えます、トップチームの貫禄と実力。

スーパーフォーミュラは残り2ラウンド4レースとなりましたが、さあどうなるか。苦戦しているトヨタ勢が奮起するのか、このまま逃げ切り体制のHonda勢なのか楽しみです。1大会2レースはバタバタですけどね。

しっかし、レースがおもしろいね。毎回感じますよ!まだの方は、SFgoアプリでご覧ください。TGR関連は、TGRコラムにて。それでは、また!

(写真 日本レースプロモーション、テキスト 大谷幸子)

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