初ニュルブルクリンク24時間レース! 〜 6年降りに聖地に戻ったトヨタガズールーキーレーシングのピットにて想うこと〜
今でも自分が信じられないのですが、モータースポーツの聖地へ足を踏み入れて来ました。ドイツにあるニュルブルクリンクに行ってまいりました!そもそも好奇心の塊で、どうしても24時間レースが見てみたかったというのもありました。ル・マン24時間は仕事で行かせていただいたことがありますが、今回はプライベートでも行きたいと、好奇心が燃油サーチャージを凌駕していた感じでした。
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スタンドで最初の走行を観戦 親子3代の光景などまさにモータースポーツが文化と感じました
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予選直前 上のクラスは先にコースインするために待機していました そんな特別なルールもあるようです
その「好奇心」とは、トヨタ自動車のテストドライバーのみなさまが2007年からニュルブルクリンク24時間レースに参戦した際のお話をメンバーの方々から伺っていたことに影響されています。
当時の私は、ル・マン24時間も夢のまた夢で名前しか知らなかったのですが、次第にいつか24時間レースを見たいと思うようになっていきました。それが心の根っこにありました。そしていよいよ自分で叶えちゃいました(笑)。
気づけば18年近くにわたり考えていたことですが、いつしかなにか覚悟を持って行く気分になって、自分の中で少し大ごとにもなっていました。ちょっとチャンスもあったのですが、消え去ったりして諦めていたかもしれません。コロナ禍を挟み、さらにその夢を追うこともなくなるかと思っていた矢先、今年の1月、東京オートサロンで発表になった参戦プロジェクトの復活。新たにトヨタガズールーキーレーシング(以下、TGRR)としてニュルブルクリンク24時間レースに参戦することがアナウンスされ、それが「原点回帰」の意味を投げかけていました。
2019年以来止まっていたマスタードライバーとしてのモリゾウのチャレンジも復活するとのことで、これは今だ!ということで勇んでドイツへ行きました。
国際免許証を取得しないままでしたので、誰かについていく方法を編み出した私は(予約済みのヒッチハイク)、大ベテランのニュルブルクリンク取材歴20年の方、ラリーの写真だけではないけれどシビれる写真を撮られる大ベテランカメラマンさんなど、メディアの大先輩方にくっついて現地入りを企みました(恐縮です)。
行きたい!連れて行ってください!は、だいたい社交辞令と取られると思うのですが、私の辞書に社交辞令という言葉はなく、帯同の承諾を得た時には、ワクワクしかなかったです。
フランクフルトの空港で合流し、アウトバーンを走り(感謝)サーキットへと到着。
サーキットはとても静かでしたが、いつもの設営、搬入の様子が日本と同様に進んでいました。そのいつもの光景ではあるけれども、舞台はニュルブルクリンク…と違うわけで。かみしめるような面持ちでした。大袈裟でもなく初めてですので、いちいち感動ですよ、ほんとに。まだファンの方の姿も本当に少しで、粛々と一日が過ぎていきました。
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各所にあるこのブースで引き換え
ちなみに、チケットはオンラインで購入できますが、火曜日、水曜日の車検日はチケットなしで誰でも入場ができます。だからピット周りをしよう!と決めていたら、さあ大変。知ってる人がけっこういてちょっと笑ってしまいました。
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車検の様子
火曜日から車検が始まりますが、車検は何かのんびり。人がいないように見えましたが、実際いなかったです(笑)。クルマは順番待ちで並んでいたんだけどね。ようやく人が来られた様子と思ったら、そのうち流れが気持ち早くなり、車検が終わると一台一台、オフィシャルフォトグラファーの撮影を流れ作業のように終えてピットにクルマが戻って行きました。
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ピットの設営
141台の参戦。想像がつきません。パドックにはテントにトランスポーターなどが設営を開始していきます。のんびりに見えていたのですが、いつしか、そこかしこにパズルのように敷き詰められて行きました。4台から5台が1つのピットに収まっています。これが噂に聞いたマシンの同居のことか。とピットの看板を見てまわりました。
翌日、TGRRの集合写真の撮影があると伺ったので、ピットロードで待っているとTGRRのみなさんが徐々に出て来られ、本当に来ちゃいました!と自分からうれしい報告をしたあと、しばし眺める私。
これまで見て来た写真などが、自分の中でこれはここで撮影されていたのかと、徐々にリンクしていきました。ピットの前も裏も、ゲートやスタンド方面に向かうブリッヂなど、これはここにあるんだ〜と。これがね、とてもうれしかったんですよね。長年写真などを見過ぎていたので、感動でしたよ。
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TGRR、ヒョンデのモーターホーム
草レース(参加型レース)ということで、パドックの自動車メーカーのモーターホームは、控えめ。ただ、とても立派なこの2つのモーターホームが鎮座していました。中はまだ準備中。ゲスト用のラウンジでしたが、ヒョンデとのWRCのコラボブースとなっていました。WRCのラリー1のクルマがこうしてニュルブルクリンクに鎮座するのは、この上なく素敵なことで驚くばかり。
パドックへブラックのダイムラートラックが登場しました。タイミングが良いですね。先日、ダイムラートラック社との提携を発表したばかりでしたので、これもそうかとプチ感動。トラックの中には、もちろんGRヤリスが入っていました。
TGR-WRTの春名ディレクターがいらして、搬入も実際にされていました。おまけですが、TGR-WRTが世界一と自慢できるポイントを伺ったんですよね。これは内緒話となりますが、クルマのメンテナンスのお話のひとつでしたね。ここがすごいんです!ということでした。他のクルマと比較して私が語れるようになると良いのですがね。とても楽しかったです。
原点回帰
決勝日まで話が飛びます。決勝日、朝、TGRRの朝礼があると教えていただきましたので向かいました。これが、滞在した中で印象の一番残った思い出です。チェッカーまで居たかったのですが、レースが続くのでぎりぎりでサーキットをあとにしたのです。きっと終わってからもまたお話があったのかもしれません。最後まで居られなく残念でしたが、そのお話とは…。手っ取り早くトヨタイムズの動画をご覧になっていただきたく。
わたしはここでレースウィークを過ごした数日をあらためて噛み締めることとなったんです。TGRRは3台参戦していますが、朝礼で各クルマを代表してドライバー、車両の担当から状況や目標などのご挨拶がありました。
最後にマスタードライバーモリゾウからの挨拶がありました。その前にわたし、モリゾウさんの卒業されたアメリカのバブソン大学の卒業式でモリゾウさんがスピーチされている動画のファンです。ジョークを巧みに取り入れつつ心を鷲掴みにするスピーチがとても好きで、英語の勉強にもなるのでよく視聴させていただいております。もちろん企業のトップが楽しい話ばかりの日常である訳がないのはわかっておりますが、当方は気分が楽しくなるわけです。
その中で、自分の大好きなドーナツ(目標の比喩)を探しにいくフレーズがあるのですが、わたしもドーナツをドイツに探しに来た思いでニュルブルクリンクに行ったんです。そして、この朝礼で私はまさにドーナツを見つけたと。これまで見たことのない光景を目の当たりにすることとなりました。
手にお持ちだったノートに目がいきました。そこには一緒にこの場に来たみなさん、ここには来られてないみなさん、また過去に一緒に戦ったみなさんに伝えたいメッセージが書かれていたんです。きっと一文字も漏らさず伝えたいという思いだったに違いありません。もちろん、全て見ながら話したという訳ではありません。そこが全てご自身が書かれたテキストだということがわかります。
ニュルブルクリンクの挑戦を初めてから、「モリゾウ」と「豊田章男」を使い分けて来たというお話から始まり、このチャレンジを認めてもらえなかった苦労、これは以前にもどこかで伺ったことがありますが。それを乗り越えての今、そして車両開発に仲間と打ち込んでこられたことなどが語られました。
これね、わたし簡単に書けないです。言葉の重みが消えてしまう気がしてね。ただ、ずっと取材されてきたジャーナリストの山本シンヤさんが文字に起こしていました。わたしのように、にわかに押しかけたものが語るのは失礼なのでやりません…。
自分で動画も撮影しましたが、動画を投稿して終わりだなんて到底できません。ですので、トヨタイムズを見てくださいね。本当に心を揺さぶられるお話で、実際に涙していた方もいました。わたしは言葉の数々に引き込まれた気持ちをどうにか取り戻して、一日過ごしました。持っていかれたままだと動けないですからね…切実。
大袈裟に感じるかもしれませんが、実際にこの場にいないとわからないものが、この朝礼だけではなくありました。勝手に感じていただけではないと思うのですよね。
いろんな立場があります。この活動を理解していただけるまでのご苦労は、プロジェクトの今やリーダーとなったルーキーレーシングの関谷さんからもよく伺っていました。
そんな話が走馬灯のように蘇りましたが、彼(関谷氏)に楽しんでって!と言ってもらえたことで、取材というよりも一ファンとして気持ちを切り替え、楽しく過ごすことに専念しました。
そうこうしているうちに走行が始まり、スタートの時間を迎えました。
他に参戦している日本勢にも、スタート前までに訪問してお話をしていましたが、できなかったことがありました。
ジェントルマンドライバーさんの情報を2件掴んでいたんです。こちらも追いたかったのもありましたが、取材も中途半端になりそうと思いTGRRでまず今回は勉強をしようと自分の中で方向性を変えました。
決勝でGRヤリスDATで過去最高の計15周回を走破したモリゾウマスタードライバー。市販のパワートレーンDATの車両開発は、モータースポーツから市販車へのフィードバッグという点で私にはわかりやすく。8速ATの性能と耐久性が皆さんの目標のどこまで達成されたのか詳しいことは当然わかりませんが、きっとそのうち搭載したクルマが身近な場所を走るのかと想うと、自動車会社のお仕事を目で見る機会となってとても良かったです。
日本からコンドーレーシングも参戦していて、予選は総合2位とフロントロウを獲得していました。現地のドライバーとチームサポートでフェラーリで参戦しておりましたが、近藤真彦監督の写真をドイツで撮るというレアな体験をしました(笑)。ファンの方々は2ショット撮影をしておりましたが、私は仕事柄あまりそんなことをしたことがないので。ここはなぜか仕事魂が抜けきれていない感じでしたね。決勝の昼にピットをのぞきに行ったら、他車にあてられたタイミングだったようで、残念ながらリタイアをなってしまいました。残念…。
最後に
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白夜、陽が長い時期を選んで24時間レースが開催されます
TGRRのみなさんは、参戦するチームのドライバーたちにニュルブルクリンクを走っていいよと言われるまでクルマを作り上げ、この車両開発の聖地に来ています。人、クルマを鍛えることがメインなのはこれまでも伝えられてきました。サーキットを走らせ、そしてレースをするとなるとモータースポーツの知識も身につけないといけません。みんな二足の草鞋だなと想うとね、とても遣り甲斐があると思います。大変だけどね。
あれこれ思いが尽きなくて様々なことを自分が仕事としているモータースポーツとリンクさせながら、ピットに立たせていただきました。ただ感慨深いは束の間でピットにいると邪魔になってしまうというオチ。ピットの空気を読むことに忙しくしていて、慣れない自分に驚きもありました。初めてって何事も大変だなと(笑)。
そして、自分が人生で初めてピットに入って仕事をしたことを思い出したりと、私も原点回帰となっていることに気づきました。
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カリーヴルスト ソーセージを炒めたものにカレーパウダーで味をつけたソウルフードもようやく食べました
細かな様子については、インスタグラムをご参照。あらためて振り返る機会があればと思います。では、また!
(写真:トヨタ自動車、大谷幸子/テキスト:大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
レポーター(お)ねえさんコラム
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