ランドクルーザー&三浦選手 ダカールラリー2017へ向け特訓中!
TOYOTA GAZOO Racingのモータースポーツ活動のひとつであるチームランドクルーザー トヨタオートボデー(TLC)によるダカールラリー参戦。「もっといいクルマづくり」のため、市販車部門にランドクルーザーで挑戦し続け、現在市販車部門3連覇中である。先日、南米でトヨタ・ハイラックスの試乗インプレッションをしていただいた三浦昂(あきら)選手は、トヨタ車体の社員であり、このチームで過去ナビゲーターとして参戦していたが、今年のダカールラリーよりドライバーとして挑戦し、見事完走を果たしている。次回のダカールラリーではチームの市販車部門4連覇に貢献すべくマシンの改良や自身のドライビングスキル向上のために世界を駆け巡っている。
ロシアから中国を走破しながら実戦訓練
5月にモロッコでトレーニングをし、7月8日から24日にかけロシアと中国を舞台に開催されたシルクウェイラリーに参戦した。16日間11,000kmにおよぶ壮大なラリーでの実戦訓練はどのようなものだったのか聞いてみた。
三浦:新しいサスペンションをテストしているので、このラリーに参戦し、ダカールに耐えうる耐久性を確認したかったというのが一番大きな目的です。もう一つは、社員ドライバーである私自身がまだまだドライバーとしての経験が浅く、スキルを伸ばしていかなればなりません。この長いラリーで自身の経験値を積み上げ、スキルの向上と安定感を身につけるトレーニングという意味でも大切なラリーでした。
- 砂塵を巻き上げ疾走するランドクルーザー
- 蜃気楼のように見える山をめがけて走る
- 過酷な大地でも村と村をつなぐ生活道路があり、そこがルートになることも多い。こうして道が人を鍛え、クルマを鍛えていく
なかなか観ることがないロシアと中国の奥地のルートはどのようなものだったのだろうか。
三浦:ロシアは雨天のケースが多くマディで滑りやすい場所が多く気を遣いました。またこれまであまり走ったことのなかった草原の風景は気持ちよかったです。あと、ロシアは涼しかったので競技環境という意味でも助かりました。一方中国は広大な砂丘が地平線まで広がり、気を抜いたら脱水症状に見舞われるような暑い日もあり、社員ナビとしてラリーデビューとなったダカール2007年大会のアフリカを思い出させられました!他チームのベテラン選手もみんな「これぞダカール!すばらしいルートだ!」と言って絶賛していました。
- ロシアの大草原を走る
- 草原があれば川や湿地もあるロシア。オンルートに突如現れたぬかるみでスタックし、牽引してもらうためにロープを持つナビゲーターのローラン・リシトロイシター選手
- 日本人とフランス人のメカニックがマシンを支える
- 中国では大きな砂丘がいくつも現れ、難易度が増した
- 永遠と続く砂丘と土漠。中国にはこういったエリアがいくつもある
そしてこのラリーは初参戦にもかかわらず市販車部門2位で完走。しかも最終日スタートまでトップを走っていた。
三浦:市販車部門トップ、総合17位と最終日スタート時点で狙い通りの位置につけていました。しかしドライブシャフトにトラブルを抱えてしまい、最後の80km続く砂丘をリア2輪駆動で越えなければならないという厳しい状況になり、13分差のクラス2位という残念な結果となってしまいました。ただクルマとしての課題は明確になったので、モロッコでのテストもやりやすかったです。またトラブルを抱えても戦えるポジションに着くためのドライビングを身に着けなければならないと思っています。そのためにはもっともっとロスを留めることが必要で、砂丘でのスタックをまずは減らしていかなければいけません。走り方以上に砂丘上のライン取りに課題があることがシルクウェイラリーではっきりしたので、収穫は多かったです。
- 北京オリンピックのメインスタジアムであった北京国家体育場(通称:鳥巣)前のポディウムにゴールした。ただ次回のダカールラリーに向けて、ここはチェックポイントのひとつにすぎない
モロッコで砂丘を中心に2,000kmの走りこみ
9月23日から29日にかけ、再びモロッコでトレーニングやマシンテストを行った。5月にテストしたときとマシンはどこまで改良できたのか、自身のドライビングスキルがどこまでアップしたかを確認した。そして単にドライバーとしてだけでなく、このテストの現場責任者としてスケジュール組み立てから進行管理も行った。その手ごたえはどれくらいのものだったのだろうか。
- 今まで砂丘ではできるだけスタックしないように慎重に見極めてから走っていたが、今回のトレーニングでは砂丘の走りやすいルートを走りながら瞬時に見極められるようになってきた
- ミーティングの進行も三浦選手の仕事。メカニックたちへ当日の仕事内容の確認などを行う
三浦:砂丘路面を中心に約2,000kmを走行しました。これまで2回のテストの中で基本的なセッティングなどは固まってきましたが、平均車速が上がってきたら、当然マシンへの負荷も今まで以上に高くなってきました。その影響の一つとしてドライブシャフトのブーツへのダメージなどがありましたが、こういったマイナートラブルの一つ一つを確実に潰していかなければダカールで勝つことは難しいため、細部の細部まで徹底的にマシンをチェックしました。
- 連日このような広い砂丘を走り続けた
- 今回は夜間走行もメニューに加えた。昼とは全く別世界の暗闇は走りにくく不安がつきまとう
平均車速が上がってきたということは、マシンも三浦選手のドライビングスキルも上がってきた証拠だ。次回のダカールラリーに向け確実に準備が進められている。
三浦:今回のテストでは特に砂丘路面での走行ラインの考え方を徹底的に学ばせていただいています。サスペンションセッティングを担当したプロドライバーのクリスチャン・ラヴィエルさんの指導のもと、スタックしない場所をいかに見つけるかという課題に取り組みました。
- 運転席に座るクリスチャン選手から砂丘での走らせ方のレクチャーを受ける三浦選手
確かにダカールラリーでは、一瞬の速さよりも、まずスタックやパンクで停まらないことが、タイムにとても重要になる。クリスチャン選手はダカールラリーで総合10位以内を走るベテランドライバーで彼をインストラクターとして教えてもらえたことは三浦選手にとって、得るものがとても多い。
三浦:スタックの回数は日に日に減少させることができ、100km以上の砂丘コースをノースタックで帰ってこられた日もありました。先回走ったときよりも確実にロスを少なくできたという実感はあります。今回指導してくれたクリスチャンはもちろんのこと、ずっと自分のドライビングを客観的に見てくれたナビゲーターのローランの協力があり、順調にテストを進められたと感じています。
- ナビゲーターのローラン選手と走りについて絶えずディスカッションをする三浦選手
ナビゲーターとしてコンビを組むローラン・リシトロイシター選手は、絶えず三浦選手といるから、三浦選手がどれだけ成長しているか一番分かっているだろう。そこでローラン選手に三浦選手の成長ぶりを聞いてみると
「5月のテスト、7月のシルクウェイラリー、そして今回のテストと着実にスキルアップできているのを実感できている。前回のダカールから比べれば、スピードも格段に向上し、安定した走りになった。アキラ(三浦選手)は自分ができないことをできるようにしようとイメージするために色々なことを考えていることが分かるし、そのために他のドライバーだけでなく、私やメカニックの意見なども積極的に聞いてくれるし、頼ってくれる」
と、三浦選手が着実に成長していることを証明してくれている。
三浦:社員ドライバーでのダカール挑戦というプロジェクトは、モータースポーツ経験のなかった全くの素人が、一つずつでも分からなかったこと、できなかったことをクリアし、不可能を可能にすることを示していくことに意味があると思っています。だからこそ、少しでも今後の可能性を示して、このチャレンジを続けられる環境を作りたいと思っています。まだまだ歴代のダカールドライバーには遠く及ばないですが、『社員だから』という言い訳は絶対にしたくないので、少しでも上位が狙えるよう気持ちを強く持ち続けたいと思っています。ぜひ一緒に南米大陸を走破している気持ちで応援よろしくお願いいたします」
- 今回のモロッコトレーニングのメンバー。チームメートと力を合わせ、ダカールラリー2017へ向け準備を進めている
シルクウェイラリーでは砂丘を2輪駆動で走らなければならないなど、幾多の困難を乗り越えてゴールした三浦選手は、たくさんの道なき道に鍛えられ、次回のダカールラリーに向け腕を磨き、もっといいラリーマシン作りをチーム一丸となって進めている。次回のダカールラリーは、TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICAがハイラックスで総合優勝を狙い、チームランドクルーザー トヨタオートボデーが市販車部門4連覇を目指す。これからも三浦選手をはじめ、ダカールラリーに挑む日本人選手、ジャパンブランドに注目していただきたい。
(写真:トヨタ車体)
(テキスト:寺田昌弘)
[ガズー編集部]
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