クルマとカヌーで大人の運動会?! 誰でも参加できるアウトドアイベント「リバーレイド」レポート 1/2
クルマの利便性って何だろう。それはドライバーの行きたいところに、自動車運転免許があれば誰でもがいつでもどこでも行けることだと思う。電車のようにレールのあるところしか移動できないわけでなく、その気になれば1日1,000kmでも移動できる。そして移動中、仲間とのプライベート空間が確保され、気兼ねなく会話や音楽を楽しめる。さらに宅配便に頼ることなく荷物を積んで目的地まで一緒に行ける。プライベートを仲間と楽しむ移動の「手段」として最高の乗り物だ。また何より運転そのものが「目的」として楽しめる。そんなクルマの利便性を最大限活かして、大自然の中、楽しめるイベント「リバーレイド」が今年で20回目を迎えた。仲間と一緒にカヌーやキャンプ道具を積んで、アウトドアをエシカルに楽しむ。冒険心をクルマとカヌーに載せて挑む「リバーレイド」を紹介しよう。
緑生い茂る今、アウトドアを楽しむ絶好の季節
参加者の多くは、金曜の仕事を終えたら愛車にキャンプ道具とカヌーを載せて、静岡県・川根本町にある八木キャンプ場へ向かう。明るいうちにキャンプ場に着き、テントやタープをセットしてのんびりするチームや土曜日の朝の受付に間に合うよう、ぎりぎりに到着するチームなど、みな自分達のペースで集まってくる。まるでダカールラリーのビバークのようだ。「リバーレイド」は日本人として初めてパリダカールラリーにクルマで参戦し、世界中でキャンプをしながら取材活動をしてきた横田紀一郎さんが生み出したものだから、参加者に自由と自己管理を任せる欧米スタイルになっている。
運営は地元・川根本町に暮らす方々が中心となる。カヌーのスペシャリストや大のクルマ好きなど個性豊かな方々だが、何より自分の町を愛し、そこに集まる参加者に川根本町ならではの川、森、湖を存分に楽しんでもらおうと最上級のおもてなしの心で出迎えてくれる。
今回で20回目を迎えるリバーレイドは、1994年の「国際家族年」に、ゲームをしながら家族や仲間達と河川流域の生物の多様性や美しい風景を楽しもうというテーマで始まり、その後「人とクルマと自然との共生」、近年は人や社会、自然に優しく配慮した考え方や行動を育む「エシカル・スポーツ」として事務局と参加者がともに協力しながら成長し続けているユニークなイベント
- 川根本町の鈴木 敏夫町長も応援に駆けつけ、県外からやってくる参加者達にエールを送る
- このルートブックに従って、川根本町を走る。町内を流れる大井川はくねくねと蛇行しているため、川を基準にしていると道に迷うこともある。このルートブック通りに走ることが重要になる
- トヨタ・ランドクルーザー、スバル・XV、ホンダ・ヴェゼルなどSUVにカヌーを載せてかっこいい。なかにはコンパクトなスズキ・エスクードに載せるチームも
- ビバークから1台ずつ出発していく。今日1日の冒険の扉がここから開かれる
クルマはタイヤ交換とアベレージ走行へ
初日のカヌーは、ダム湖がフィールドとなる。まずは湖畔の広場で、全員参加のタイヤ交換ゲーム。最近はスペアタイヤの代わりにパンク修理キットが装備されているクルマが多いが、アウトドアを楽しむドライバーは、ジャッキを使って持ち上げて、タイヤ交換ぐらいは朝飯前。4名で協力し合ってタイヤを外したら、クルマの周りを外したタイヤとともに1周し、再度組み付ける。さらにルーフに載っているカヌーを降ろして2人がライフジャケットとヘルメットを身に着け、カヌーに乗ったらゴールといった具合だ。タイヤサイズも様々、外すホイールナットの数も様々だが、参加者はみな久しぶりに愛車のタイヤ交換をすることに集中する。ふだんパンクやスタッドレスタイヤへ交換するときぐらいしか、やらない作業を、日常の練習を兼ねてゲームでできるのがいい。
- カヌーを載せて整列するクルマ。1台1台まるで武士の横顔のように凛々しく見える
- タイヤ交換ゲームを仕切るのは、地元の神谷毅さん。富士スピードウェイで開催されるSUPER GTやTOYOTA GAZOO Racing FESTIVALは毎年欠かさず観戦に行くほど大のモータースポーツ好き
- 2台同時スタート。約20m走ってタイヤ交換をして、再び約20mを走ってカヌーを降ろしてゴールする
- アジアやグアムのオフロードレースに参戦している参加者は、さすがに手慣れたものでチームワークも抜群。またお母さんと娘が慣れない手つきでジャッキアップして、お父さんがホイールナットを緩めるチームなど様々
- タイヤを外したら、そのタイヤと一緒にクルマの周りを1周して再び組み付ける
- タイヤを交換するだけだが、その顔は真剣そのもの。とても画になる2人
- ゴールエリアに入ったら、ルーフからカヌーを降ろし、ライフジャケットとヘルメットをつけてカヌーに乗ってゴール
静かで雄大な湖上をカヌーで楽しむ
ランチは湖畔で地元の方に用意してもらったお弁当を食べる。自然の中、カヌーに乗ってクルマで遊ぶイベントだから、昼間は料理を目的にしない。そしてカヌーのゲームへ。リバーレイドは通常4名が1チームとなり、2名はクルマを使ったゲームに挑み、もう2人はカヌーに乗ってゲームをする。いつもはそうなのだが、今回はクルマに乗る2人にもカヌーに挑戦してもらおうとゲームを作った。もちろん初めてカヌーに乗る参加者が多く、なかなかうまく漕げなかったり、真っ直ぐ進まなかったりと、もがきながらも笑顔で湖上から見える自然の景色を存分に楽しんだ。その後カヌーチームがゲームをしている間、クルマチームは約3kmの林道を平均時速10km/hで走行するアベレージ走行ゲームに挑戦。路面がターマック(舗装路)からグラベル(未舗装路)になったり、上り下りがあったりと、遅く走りながら定速をコントロールすることが意外と難しいと気づく。都会ではできないクルマの楽しみ方を知る。
- 大人になるとなかなかアウトドアでお弁当を食べることもない。新鮮な体験
- この湖を自分の庭のようにカヌーを楽しんでいる地元の小林健実さん(写真右)がゲームをプロデュース。カヌーに乗るみんなが笑顔になるゲームに定評がある
- 湖面に浮かぶ透明のケースの中にある丸いケースを獲る。やっとカヌーが真っ直ぐ進んでも、今度は止まれず慌てて丸いケースを獲る。真剣そのもの
- 丸いケースの中には、ルートブックのコマ図のヒトコマが。これがないとミスコース必至。だからみんな必死
- 参加者のカヌーをロープでつなぎ、2組に分かれ綱引きも。リバーレイドならではの恒例ゲームになってきた
- 雄大な湖を悠々と楽しむ。天気も景色も最高
- 湖でのゲームが終わり、記念に一枚
- ベースキャンプとなるキャンプ場に戻る
料理がゲームに。共通素材は地元産
キャンプ場に戻ってシャワーを浴びたり、近くの温泉に入って汗を流しても、まだゲームは続く。まずは火おこしゲーム。紐、棒、板、麻紐を使って火をおこす。人間は火を使うようになってほかの動物と異なる食文化、ライフスタイルを確立してきた。ライターひとつで簡単に火がつけられることを、敢えて苦労して火をつけてもらうことで、火のありがたみに再び気づいてもらう。そしてキャンプの醍醐味のひとつである料理もゲームになる。各チームに地元産のそば粉200gが配られ、制限時間1時間でチームそれぞれの発想と料理の腕を競う。審査員は参加者と地元の事務局スタッフが食べ比べる。同じ素材をベースにしたとは思えないユニークな発想の料理が並び、日が暮れるまで参加者みんなで楽しんだ。
- 紐を丸い棒に巻き付け、回転させて下の板に擦りつけ、摩擦で火種を作る
- 火種ができたら麻紐をほどいて作った火口に載せ、適度に息を吹きかけ炎にする
- 地元産そば粉を使った料理で対決。みんなで試食しながら、おいしい逸品に投票する
- 共通素材のそば粉は事前に告知されるので、どんな料理を作るか決めて、現地に乗り込む。レシピを書いてきたり、盛る器まで持ち込むチームも
- 優勝はそば粉で生地を作ったどら焼き。川根本町はお茶で有名な町なので、お茶を生地に混ぜるアイデアも。器は河原に落ちていた木をバーナーで炙って、和風な器をその場で作った。アイデアの勝利
- 満天の星空の下、参加者、事務局スタッフみんなで飲みながらアウトドアを楽しむ。贅沢な時間
(写真:新飼亮也・芳沢 直樹・加納正也)
(テキスト:寺田昌弘)
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