地平線の彼方に夢を描く、ある夫婦の話(前編)
1980年代から90年代にかけ、世界的に特に注目されたモータースポーツといえばパリダカールラリー(通称:パリダカ)。ポルシェやプジョー、シトロエン、三菱などメーカーワークスがしのぎを削り、また人生を賭け完走を目指すプライベーターも多く参戦し、クルマ、サハラ砂漠など壮大な風景だけでなく、選手達の人間模様が映し出されたテレビに、多くの視聴者は感動しました。私もそのひとりで中学生の時にブラウン管越しに観たサハラ砂漠を走るクルマやバイクに惹かれ、後にランドクルーザーに乗ってヨーロッパ、アフリカ大陸時代のパリダカそして現在の南米大陸を走破するダカールラリーに6回参戦してきました。そして同じようにパリダカに魅せられ、オフロードモータースポーツに挑み続ける仲間がいます。新堀忠光さん、香織さん。彼らは国内、海外のラリー、クロスカントリーレイドなどオフロードモータースポーツに挑み続ける夫婦です。特にオフロードモータースポーツが盛んな海外で果敢に挑む姿がかっこいい。そんなお2人を紹介します。
どんな競技でも勝つことにこだわるドライバー、忠光さん
小学生の時にテレビでパリダカを観て、出場して優勝したいと思った忠光さん。ただサッカーや野球のように身近に教えてくれる人もいません。「夢は信じていればかなうもの」の言葉を信じ、行動に出ます。国内でクロスカントリーカー・ダートチャレンジという競技が始まり、初年度に優勝、シリーズチャンピオンまで獲得。次は海外ラリーに参戦する目標を立てます。
まずは2001年に東南アジアのタイを中心とするアジアクロスカントリーラリー(AXCR)に参戦。初参戦で総合3位入賞を果たします。この時海外クロスカントリーレイドの魅力に取りつかれ、その「冒険の扉」を開け、飛び込んでいきました。その後もAXCRに参戦し、タイで注目されるようになった忠光さんは、タイTRDから誘いを受け「TOYOTA CROSS COUNTRY TEAM THAILAND」に加入。タイトヨタワークスのドライバーになりました。タイにはピックアップを生産する多くのメーカーがあり、AXCRだけでなく、タイ国内でもクロスカントリーラリー選手権(全8戦)が始まり、トヨタ、三菱、シボレー、いすゞ、マツダがしのぎを削る戦いが盛り上がりました。そして加入したその年のAXCRそしてタイ・クロスカントリーラリー選手権で総合優勝することができ完全制覇を達成!翌年もAXCRで総合優勝します。
そんな時に出会ったのが、世界で活躍し、現在も全日本ラリー選手権でトップを争う新井敏弘選手。「目が追いつく時に速いクルマに乗った方がいいよ」の声に響き、新井選手のインプレッサを買って教えてもらうことに。そして今度は2010年にWRCラリージャパンに参戦しました。クロスカントリーラリーはプロフェッショナルですが、ラリーはよくわからないままでの参戦。それでも完走を目指し、気付けば久世アワードで表彰されました。
(久世アワード:スバルテクニカインターナショナル(STI)創業者 久世隆一郎さんの名がついた賞。スバル車で走る選手権部門上位3台、一般クラス上位3台を表彰され、忠光さんは一般クラスで1位)
その後もアジアパシフィックラリー選手権(APRC)に参戦し、上位入賞を果たしていましたが、ふと「私が目指しているのは、パリダカだ」と強く思い、ラリー参戦はひとまず休止。オーストラリアでクロスカントリーラリーがあったので、それに出ようと調べると、すでに大会がなくなっていて、そのかわり、SXS(サイド・バイ・サイドビークル/多用途四輪車)のPOLARIS ワンメイクオフロードレース選手権が始まることを知り、日本人として初参戦をします。第1戦でいきなりの3位表彰台。最終戦では優勝して、イコールコンディションのマシンでドライバーの腕を実証しました。これは現在ではPOLARISだけでなく様々なメーカーのSXSも参戦出来るように拡大され、忠光さんはシリーズ戦に挑んでいます。ドライバーとしてのスキルを磨きながら、やはりクロスカントリーラリーに参戦しようと思っていたところ、TRDタイランドからドライバーとして抜擢され、2016年に再びAXCRに参戦することになりました。しかもTRDが製作するハイラックスの競技車に乗ります。そして総合2位。翌年も総合2位と上位入賞を果たします。この間アメリカ最大のオフロードレースであるBAJA1000にも塙郁夫選手とコンビを組んで参戦し、完走を果たします。今年は、オーストラリア最大のオフロードレース、フィンクデザートレースにTRD仕様のハイラックスに乗り、日本人選手として初参戦しました。
日本、アジア、アメリカそしてオーストラリアとオフロードレースに挑戦し続ける忠光さん。それでもいつも思っているのは「いつかはダカールラリー参戦、そして優勝する」ということ。ここまで実力をつけた忠光さんの挑戦が楽しみです。
(写真:DIRT COMP MAGAZINE・Rallye Aïcha des Gazelles du Maroc / テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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