レクサスが全日本ラリーに初参戦!RC Fの咆哮が新城に轟く【その2】
ボディサイズが大きいとかパワーがある分、最低重量を重くしなければならないからラリーに向かないと言った下馬評を覆し、初日を終えてクラス2番手につけたRC Fと私たち。石井選手はRC Fの車内で「今まで参戦していないマシン、しかもレクサスで参戦すれば、ラリーを知らない人でもラリーに興味を持ってもらえるから選びましたが、それ以上にRC Fは素性がよく扱いやすいから選んだんです。最初から勝ち目のないのがわかっていたら選びません。RC Fは本当にいいマシンなんです」と自信に満ち溢れた声で言いました。
助手席に乗っていて確かに回頭性が素直で、コーナーの立ち上がりや登りでは太いトルクを活かしてぐんぐん加速していきます。田原工場で「2UR-GSE」エンジンを知り尽くした男だけになおさら説得力があります。ただ全日本ラリーに初参戦の私たちをサポートをしていただいているCUSCOの長瀬さんからは「乗り慣れてくる2日目の午後が一番ミスしやすいから、しっかりナビゲートしてね」と指示をいただき、気を引き締めて2日目、LEG2をスタートしました。
- 内装は純正のまま。BRIDEのシートとCUSCOで組んだロールバーがラリーカーであることを主張している
- LEG1での経験をベースにサービスを出てLEG2に挑む
ギャラリーステージで初のクラストップをゲット
LEG2は県営新城総合公園のギャラリーステージ(580m)と2車線を使える高速ステージの鬼久保(6.42km)は同じですが、雁峰北に変わり、より細く距離が長く、所々砂が浮いて滑りやすい雁峰西(14.84km)になります。雁峰西のレキをしていたときに、道の細さは気になりませんが、砂や水が出ているところが多く、ひとつ間違えれば一瞬でリタイアだなと、ペースノートに特に危険な箇所をしっかり書き込みました。
この日も最初はギャラリーステージから。新城ラリーのために舗装されたアスファルトが昨日走って思っていたほど滑らないことがわかったので、今回はアタックします。サービスからSSスタートまでが200mくらいしかないので、ブレーキもタイヤも冷えたまま。90度ターンは慎重に行きながら、大きめのコーナーはリヤタイヤが滑り出さない程度のところで石井選手がうまくアクセルとトラクションをマネージメントしながら走ります。RC FのV8が奏でるエキゾーストノートの向こう側から観客の感嘆の声が重なり、ラリーのライブ感を助手席で楽しんでいました。ただ昨日より確実に速いのは感じていたので、ゴールについてタイムを見ると、クラストップより0.5秒速いタイム。クラス全車が走ったあと見てみると、クラストップタイムが確定しました。まさかデビュー戦でクラストップが獲れるとは、僕らを含め誰も予想していなかったことです。
- 公園内のギャラリーステージで初となるクラストップタイムをたたき出す
スリッピーなコーナーでホイールが欠けた
気をよくして雁峰西へ向かいます。ここは細く長く鋭角ターンではところどころ砂や水がある、トラップ多めのSSです。1本目は安全マージンを多めに取りながら行こうと二人で決めてスタート。確かにルートは細く、トレッドの広いRC Fは誰も踏んでいない落ち葉や砂の上を一部走らなければなりませんが、石井選手のリズミカルなドライビングでいいペースで走ります。
- 林道を駆けるRC F
レキで確認した砂があるターンも確実にコールしながらあと少しと思ったところで、先行車がインカットして舗装路に出された砂が予想以上にあり、リヤが流れ 法面を固めたコンクリートにリヤホイールが接触。本来ならボディサイドまでぶつかりそうなところ、石井選手の巧みなアクセレーションでリヤホイールのみ当てるという離れ業で、幸いパンクやエア抜けもなく、そのままSSをゴールしました。見るとリヤホイールのフランジが1/3くらい欠けていて、エア抜けしなかったのは本当にラッキーでした。このSSは3台がリタイアした今大会一番の難所だったようです。生き残った私たちは、リエゾン途中でスペアタイヤに交換し、気を取り直して鬼久保へ。
鬼久保は高速SSなので、ここはパワーを活かしていけるのではと思っていましたが、LEG1では走り慣れたベテラン選手たちにどうしても追いつけず。クラストップから4秒近く遅れてしまいました。そこでLEG2では石井選手がラインどりを模索しながら変えて走ったところ、ここでも2番手に4.1秒差をつけてクラストップでゴール。二人の息も少しずつ合ってきましたが、それ以上に石井選手の補正能力の高さに驚きました。
午後も同じSSを走り、ギャラリーステージではクラストップが午前の私たちのタイムを上回ってきましたが、こちらもさらにタイムを詰め、ここでもクラストップ。ただ続く雁峰西では1分以上の差。やはり細い林道ではヴィッツGRMNの圧倒的な速さに脱帽です。それでも2台のヴィッツGRMNの間に割って入れたのはうれしかったです。
- FUJITSUBOが奏でるV8サウンドが林道に木霊する
季節外れの雪で最終SSが途中キャンセル。初参戦でクラス2位入賞
最終SSの鬼久保は、お互いさらに攻めたい気持ちもありましたが、デビュー戦の結果にこだわり、抑えていこうと決めました。すると雪が降り始め、なんと最終SSがキャンセルになりました。そして雪降る鬼久保をゆっくり走り、新城総合公園へ。ここは晴れていて不思議な気持ちでしたが、ゴールセレモニーでクラス2位と紹介され、観客もよくRC Fでここまで来たと微笑ましく、その健闘を称えてくれました。全日本ラリー初参戦で、最初はどうなることかと私たちよりサポートしてくれるチームや、他の選手たちのほうが不安だったようですが、マシンと向き合い、ラリーに真剣に挑んで結果が出るたびにみなさんが応援してくださったことが何より私たちの力になりました。
今後はRC Fがホイールサイズの関係上、グラベルタイヤがないため、ターマックのみ参戦予定です。石井選手とのコンビは5月に愛媛で開催される「久万高原ラリー」の予定です。次回はもっとコドライバーとしての精度を上げて挑もうと思います。石井選手がもっと安心して走れて、観客のみなさんに心地よいV8サウンドとその走りを楽しんでいただくために。ありがとうございます。
- 突然の雪で鬼久保のSSはキャンセル
(テキスト:寺田昌弘/写真:山本佳吾・高橋学・熊谷泰三)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
あわせて読みたいラリーの記事
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-