世界累計販売が1,000万台を超えた『ランドクルーザー』の魅力とは
1951年8月1日にトヨタジープBJ型が発売され、この8月末に『ランドクルーザー』シリーズ(以降“ランクル”)のグローバル累計販売台数が1,000万台を突破しました。今では世界170ヶ国で販売され、トヨタで最も長い68年の歴史を持つブランドです。
もともと警察予備隊への納入を目指し企画されましたが、三菱がアメリカ・ウィリス・オーバーランド・モータースのジープをノックダウン生産することが採用されたことで、逆に国内に留まらず、いち早く海外に出ました。
まだ世界的に舗装率が低かった時代に、信頼性、耐久性、悪路走破性の高さを世に知ってもらうとともに、トヨタ車そのものの、信頼性の高さを印象づけたブランドです。私は30年前から海外に出かけるようになり、世界中どこへ行っても見かけるのが“ランクル”で、見るたびに好きになってきました。
そして現在、1996年式の『ランクル70』と2017年式の『ランクルプラド』の2台の“ランクル”を所有するほどに。そこで私がこれまで海外で観て印象深かった“ランクル”について紹介したいと思います。
オーストラリアで観た、カンガルー、ワラビーそして“ランクル”
1990年8月、オーストラリア大陸を縦断する「オーストラリアンサファリ」というラリーにバイクで参戦しました。南東部のシドニーをスタートし、西北西に向かいながら内陸に入り、大陸を縦断するスチュアート・ハイウェイを基準にアウトバックのオフロードを疾走しました。
このあたりは町と町が数百kmも離れていて、ハイウェイでは、トレーラーを数台連結したロードトレインと多くすれ違い、ひとたび町に近づいてくると、一気に“ランクル”を見かけるようになります。60系、70系、特に70系はバンよりピックアップを多く見かけました。
またオーストラリアで販売されている“ランクル”は、燃料タンクが2つあり、給油口の蓋を開けると給油口が2つあり、メインタンクとサブタンクへ、それぞれ給油します。90リットルタンクが2つあり、180リットル給油可能です。(トゥーループキャリアの場合。それ以外は130リットル仕様もあります。)
オーストラリアでは、町と町、ガソリンスタンドが離れているだけでなく、1,000km以上も給油ができない場所もあります。ガス欠が命を危険にさらすことにもなる過酷な環境下で、“ランクル”は大陸を移動する夢を叶えてくれます。20歳でオーストラリア大陸を縦断したとき、カンガルーやワラビーを見て驚いたと同じくらい、アウトバックでブルダストで、赤く染まった“ランクル”を見て心躍らせていました。
- 広大なオーストラリア。地平線に向かって走るのが爽快
- 左側をよく見ると燃料系が2つ。メインとサブをそれぞれ表示
- 最初はメインタンクと使い、なくなってきたらSUBボタンを押してメインタンクへ燃料を移し替える
- 『トゥルーピー』はとても長いが、オーストラリア、アフリカではこれがスタンダード
サハラ砂漠の奥地で会った乗り物は、“ラクダ”と“ランクル”
1996年から1998年まで毎年1ヶ月、モーリタニア・イスラム共和国に暮らし、医療支援のNPO活動をしていたとき、サハラ砂漠を走破していた私たちの活動車は、もちろん“ランクル”でした。
20歳の時にオーストラリアで見たトゥーループキャリアをサハラ砂漠で走らせたときはホイールベースの長さに驚き、首都のヌアクショットから、舗装路でアタールまで、450kmを走り、そこから未舗装路でシンゲッティまで約100kmを走りました。
そして、初めて柔らかいサハラ砂漠へ入って、ステアリングを切ったら、まんまとスタックしてびっくりしました。“ランクル”ならだれでも砂漠を簡単に走れると思っていましたが、タイヤの空気圧を2.5kg/㎠のままではさすがに埋まります。
首都のヌアクショットでは、“ランクル”も見ますが、タクシーや古い乗用車の多くはフランスから廃車同然で持ち込まれたプジョー504をよく見かけました。そして砂漠エリアへ近づくアタールでは“ランクル”と“ランドローバー・ディフェンダー”、“日産パトロール”(日本名:サファリ)を見かけ、砂漠にある町、シンゲッティでは“ランクル”と“ラクダ”しか乗り物は見かけません。
つまり、砂漠に暮らす人々にとって、もう“ラクダ”と“ランクル”しか、乗り物として認められていませんでした。
NPO活動では現地の方々に自動車修理訓練をしましたが、ここでは“ランクル”しかないので、“ランクル”の修理、整備の仕方だけ教えればよい状態でした。おかげでランクルを修理できるメカニックが何人も誕生しました。
また“ランクル”は、走る役目を終えて路地裏に置かれていても、万一の部品取り車として活躍します。特に70系は大きなモデルチェンジをせず、アフリカ、オーストラリアなど長年愛されているので、部品が世界中に用意されているような感じです。
この心強さが“ランクル”の魅力のひとつでもあります。
私も1998年のパリダカールラリーに参戦していたとき、ある部品が壊れましたが、サハラ砂漠の真ん中の町で、中古ですが部品を入手できました。“ランクル”でなければ、ここでリタイアだったかもしれないと思うと、本当に“ランクル”を相棒に選んでよかったと思っています。おかげでクラス優勝できました。
- 砂漠のオアシス近くの井戸で水を汲む人たち
- アタールからシンゲッティへ向かう山岳路。現在はすべて舗装してある
- 偶然、サハラ砂漠で結婚式へ向かう一行に出会う
ウユニ塩湖で消えてなくならなかったのは“ランクル”
2014年から、ダカールラリーの同行取材のため、毎年南米大陸を旅していましたが、ボリビアを通過するときは、観光地として人気のあるウユニ塩湖にも立ち寄りました。乾季に干上がった湖は硬い塩を溜め、雨が多くなると、水が塩湖にうっすらと溜まって鏡のようになり、日中は空を映し出し、夜は満点の星が写り込む幻想的な風景が大人気です。
この塩湖の上を観光用で走るクルマのほとんどが“ランクル”でした。そのほとんどが80系。不思議に思ってドライバーに聞いてみたところ「昔はいろんな四輪駆動車が走っていましたが、みな塩害で溶けてなくなっちゃいました。何もなく最後まで残ったのがこの“ランクル”たちです」と自慢げにランクルを紹介してくれました。
「こうして80系ばかりになったら、スペアパーツも共有できるので、80乗りで助け合えるのもいい」。日本で生産された“ランクル”が、20年以上経った今も、ウユニ塩湖の上を観光客に最高の景色を観てもらうために毎日走り続けています。
- ウユニ塩湖で働く『ランクル80』
- 遠くに見えるのが『ランクル80』コンボイ走行しながら安全なルートを行く
中東ではセレブの社交場へは“ランクル”で
UAEに何度か行く機会があり、ドバイに行くと必ずデザートサファリに出かけます。ドバイから“ランクル”で1時間ほど走ると広大な砂漠が見えてきます。デザートサファリは人気の観光ツアーのひとつで、半日コースから砂漠で1泊するコースまでいろんな楽しみ方ができます。
この観光ツアーには、一度だけ参加したことがあるのですが、一緒に乗り合わせたイギリス人や、フランス人の方々は皆、「砂漠にいると心が澄んでくる」と言います。私もサハラ砂漠をはじめ、チリ、モンゴルなど、いろんな大陸の砂漠を走ってきましたが、確かに心がスッキリするので大好きです。
これは中東がどんなに先鋭的な都市開発をしても、ここに暮らす方々の生活習慣としても表れています。日中は高級ホテルに“ランクル”で乗りつけ、ビジネスミーティングをしていますが、休みとなれば砂漠へ出向きます。
集合場所は緯度経度で伝え、GPSを使って仲間たちと砂漠の真ん中で集まり、カーペットを敷き、お茶を飲みながら日が暮れても会話を楽しみます。中東のセレブリティは、都市でも砂漠でも、ビジネスパートナーとでも幼馴染でも会いに行くときは“ランクル”に乗ってどこへでも向かいます。
- ドバイの砂漠
世界のいろんな大陸を“ランクル”で走って思ったこと
『ランクル100』で北米大陸を横断し、フランス・パリからセネガル・ダカールまで、またオーストラリアを『ランクル70』で走り、南米大陸を『ランクル200』で走破して感じたことは、“ランクル”と対話しながら楽しく走れるようになりました。
そして“ランクル”自身が、世界170ヶ国の様々な道なき道を走り、「道が“ランドクルーザー”を鍛える」ことを68年続け、様々な国の人々の仕事、生活を支えています。その1,000万台分のオーナーのリアルな声を現地現物として車両開発に活かし、進化を続けていることだと思います。
だから単にモビリティのひとつではなく、開発者やオーナーなど関わるすべての人の愛が詰まった唯一無二の存在なのだと思います。日本を代表し、世界で愛されるブランド、それが『ランドクルーザー』だと確信しています。
- 1998年に参戦したパリダカールラリー。モロッコを走る
- 2009年に片山右京さんとコンビを組んで『ランクルプラド』で参戦したダカールラリー
- 2011年に『ランクル100』で参戦したファラオラリー
- 2012年に『ランクル200』で参戦したファラオラリー
- ニュージーランドを走る『ランクルプラド』
- 剛性がありながら柳がしなるように衝撃をいなす『ラダーフレーム』
(写真:トヨタ自動車・柏倉陽介・茅原田哲郎・森下敬司・手塚善道・寺田昌弘/ テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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