オフロードのすすめ/今も根強い人気のクロカン四駆紹介
子供の頃、水溜まりがあると、親に止められても靴のまま入って、足でバシャバシャ水しぶきを上げ、はしゃいだりしたことはありませんか?
オフロードは、大砂丘を越えたり、フラットダートを疾走するのも楽しいですが、こんなところ走れるの?と思ってしまうほどの凹凸や泥、急坂を4WDの機能を最大限活かし走破するのもとても楽しいです。
さらに到底登れない急坂でもウインチを使って登り切るなど、勇気と冒険心たかぶる走りが楽しめます。国内でも「TRYANGLE」チャンピオンシップや、「XCT-Dual」など、シリーズ戦が全国のオフロードコースで開催されていて、オフィシャルもエントラントも根っからの四駆好きが集まる楽しいイベントがあります。
しかしそんな過酷な悪路を走破できる四駆はあるのかなと思われるかたも多いと思います。そこで今回どのような四駆が参戦しているか、埼玉・アウトドアパークブロンコで開催された「XCT-DUAL」から見てみましょう。
- 泥が似合う四駆たち
やはり大陸の王者「ランドクルーザー」は強い
トヨタ・ジープとして誕生し約70年、累計販売台数は1,000万台を超え、信頼性、耐久性、悪路走破性の高さ、そして何より生きて帰ってこられるクルマとして世界中で活躍するランドクルーザー。
その信頼性を世に知らしめたのは、やはり40系、通称「ヨンマル」。1960年に誕生し、24年に渡り販売されたロングセラーカー。84年に70系にモデルチェンジしましたが、今も現役で走る堅牢さはさすがです。親から引き継ぎ乗っているオーナーや、このスタイリングが若者にも人気があり、オーナーになる人も多いです。
前後リジッドアクスルとリーフスプリングの組み合わせは、舗装路では決して乗り心地がいいとは言えませんが、オフロードでは片側が凸状の地形でサスペンションが縮めば、シーソーのように反対側のサスペンションが伸びて凹状の地形でもトラクションがかかりやすいメリットがあります。またホーシングの位置決めもリーフスプリングが兼ねているので、部品点数が少ないシンプルな構造です。
- 未だ衰えを知らず、高い悪路走破性をみせるヨンマル
- 果敢にヒルクライムにアタックするヨンマル
「ヨンマル」から「ナナマル」に1984年にバトンタッチし、今も海外で販売されている70系。
当初は前後リーフリジッドサスペンションでしたが、現在はフロントがコイルスプリングとなり、高速走行時の乗り心地がよくなっています。ホイールが6穴から5穴に変更されています。主にオーストラリアやアフリカ、中東でよく見かける「ナナマル」ですが、私も1996年に新車で購入し、今も頼れる相棒として乗っています。
「ナナマル」のよさは、シンプルで信頼性が高く、今にないスクエアなスタイリングがとても気に入っています。20代の頃、サハラ砂漠でボランティア活動をしていたとき、首都から砂漠へ向かうと、最初は日産パトロール(日本名:サファリ)やランドローバー・ディフェンダーとともに「ナナマル」もあって、さらに奥地の村に行くと、ディフェンダーと「ナナマル」があって、さらに砂漠を越えていった村には、「ナナマル」とラクダしか交通手段がなくて。これを観たとき、「ナナマル」への絶対的信頼が生まれました。
- ウインチを使って登るナナマル
- 沼と化した泥も物ともしない走り
40系から1967年に派生したワゴンの55系、1980年に60系とモデルチェンジし、1989年に誕生したのが80系、通称「ハチマル」。
前後コイルリジッドアクスルサスペンションで、歴代ランドクルーザーでも一気に乗り心地がよくなり、インテリアも乗用車と同レベルに。
国内では高級ワゴンとして人気がありましたが、当時のランドクルーザーシリーズのフラッグシップモデルとして悪路走破性の高さは、パリダカールラリー・市販車部門での優勝など折り紙つきです。
大柄なボディをこうしてオフロードで扱うには慣れが必要ですが、サードパーティのサスペンションでリフトアップすることで、ストローク量も大きくなり、走破性がアップします。
以前、ボリビア・ウユニ塩湖で観た観光送迎用のクルマがすべて「ハチマル」で、現地ドライバーになぜ「ハチマル」ばかりなのかと質問したら「ほかのクルマはウユニの塩で溶けてなくなった」と冗談交じりに答え「ハチマルはここでは最も信頼できる相棒だ」と言っていたので、耐久性の高さはここでも証明されています。
- 威風堂々としたスタイルがかっこいいハチマル
ランクルの対抗馬、「日産・サファリ」
日本がアウトドアブームで盛り上がり、クロカン四駆がファミリーカーとしても盛り上がった1980年代から1990年代にかけ、ランクルのライバルは日産 サファリでした。
三菱 パジェロはランドクルーザープラドやいすゞ ビッグホーン、日産 テラノは、トヨタハイラックスサーフ、三菱 チャレンジャーとそれぞれライバルがあって、華やかな時代でした。
国内ではサファリは販売していませんが、海外ではパトロールの車名で、特に中東では今も大人気です。NISMO仕様はスーパーチャージャー搭載のホットモデルまであり、現在「SUPER GTシリーズ」のファースト・レスキュー・オペレーション(FRO)車両として、最高出力428psの「パトロールNISMO」が活躍しています。
1987年のモデルチェンジで、前後コイルリジッドアクスルサスペンションとなり、操縦安定性、乗り心地がよくなり人気をはくしました。写真のY60型は1997年まで販売され、すでに23年以上経ちますが、悪路走破性の高さはいまも健在です。
- タイヤを空転させながら排土して登るサファリ
- 1輪浮いても接地している3輪にトラクションをかけて登る
大陸をどこまでも走り回る「ランドローバー」
ランクルより3年ほど早く1948年にランドローバーの四駆は誕生し、その直系がディフェンダー。
ワゴンとしてはレンジローバー、ディスカバリーなどが派生しました。現在はジャガーとともにインド・タタモーターズ傘下で、今年新しいディフェンダーがリリース予定。ラダーフレーム+アルミボディからモノコック構造へ生まれ変わり、新たな可能性を示しています。
写真のディフェンダーは、当時一世を風靡した過酷なアドベンチャー「キャメルトロフィー」の参戦車として世界中に知れ渡り、「ディフェンダー=地球上のどんな未開の地でも走破できる」といったことを連想して憧れる方も多いです。
強靭なラダーフレームに材質として軽いアルミボディを採用。凹ませるとアルミは直すのが困難なので、こうしてオフロードを果敢に攻めるオーナーはすごいです。
- うまくタイヤをグリップさせながら走るディフェンダー
1941年から続く四駆の代名詞「Jeep」
四駆を知らない方でも四駆を見たら、「あっ、Jeepだ」というほど知られているブランド。
丸型ヘッドランプ、7つのスロットが入ったグリル、台形ホイールアーチがアイコンとなるデザインを踏襲しています。
ワゴニアやグランドチェロキーなどワゴンタイプも派生しましたが、ミリタリーからCJ、YJ(このときだけ角型ヘッドランプ)、TJとラングラーは、Jeepの本流として進化し、JKそして2018年にJLにモデルチェンジしました。写真はJKラングラーで、ルーフを外し、幌に替えていますが、何も装着せずオープンエアを楽しめるのもラングラーの魅力です。
- パワーに物言わせながら駆け上がるラングラー
小さい、軽い、楽しい「ジムニー」
1970年に本格四駆の軽自動車として登場し、最初は359cc空冷2サイクル直列2気筒エンジンで、まるでオフロードバイクを乗っているような楽しさがありました。
軽自動車の規格変更に合わせ、車格も大きくなり、現在は658cc水冷4サイクル直列3気筒DOHCターボを搭載しています。サスペンションはリーフリジッドサスペンションに始まり、コイルスプリングに変更されましたが、リジッドアクスルのままです。
ジムニーのよさは、その車重の軽さです。現行車でも約1トンで、砂や泥ではスタックしにくいです。ランクルなどと比較するとタイヤは小径で安価なので維持費も抑えられ、気軽にオフロードを楽しめます。
ただトレッドに対して全高が高く、重心が高いので横転に気をつけたり、排気量が小さくトルクが少ないので、回転数を落とさないように走るとか、技術が必要です。
- 高回転で果敢に挑むジムニー
- 細かな改良を繰り返しながら20年作り続けられたJB23ジムニー
こうしてランドクルーザー、サファリ、ディフェンダー、ラングラー、ジムニーなど、日本でもまだまだ本格オフロードを楽しめる四駆が、中古車でも購入できます。
もしオフロードに興味を持たれたら、コロナ禍が落ち着いたら、ぜひオフロードイベントを観戦してみてください。
2台で力を合わせてゴールを目指す「XCT-Dual」
今回紹介した四駆が参戦していたXCT-Dualは、2台でチームを組み、お互いのクルマを助け合いながら難関地形を走破してゴールを目指すタイムトライアル形式のオフロード競技です。
左右にテープの貼られたコースは、モーグルや泥、バケツのような凹部など多彩な地形で、登れないときは電動ウインチを使って引き上げたりと、日常では見られないアドベンチャラスな走りが見られます。
参加者はみな泥まみれになって、まるで少年のように楽しんでいます。
2020年の第2戦は8月2日(日)に茨城県の七転び八起き 平山コースで開催予定です。詳しくは以下facebookにてご確認ください。
- ここは日本ではなくまるでボルネオのような光景
- 大きなタイヤを乗り越え下るナナマル
- コースはテープで区切られる
- 登れなければウインチで引き上げる
- 若手からベテランまで一緒になって盛り上がる
- オフィシャルのなかにはメルセデスG500Lに乗る人も。かつてはこれで参戦していたというからすごい
(写真:Crawl Red・新飼亮也・kristofferson macay domingo/文:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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