AE86ワンメイクのドリフトイベントが熱い 寺田昌弘コラム

  • トレノでもレビンでもAE86ならどちらも参戦可能

今シーズンもD1グランプリが4月24~25日に滋賀県の奥伊吹モーターパークで開催され、以前コラムでご紹介した松山北斗選手がGRスープラで2ラウンドとも単走優勝!5月15~16日は三重県の鈴鹿ツインサーキットでフォーミュラ・ドリフト・ジャパンも開幕で、ドリフトが盛り上がってきます。

これらトップドリフトイベントにさきがけ、4月17日にトヨタAE86ワンメイクのドリフト大会が開催されたのをご存知でしょうか?

日本発祥のモータースポーツ、ドリフトを身近に

世界的にドリフトがモータースポーツとして盛り上がるにつれ、マシンの剛性を上げたり、エンジン換装、チューニングでビッグパワーを得たりと、走りの迫力が増してより観客を湧かせる走りが可能になったぶん、マシン製作にコストがかかるようになりました。
しかし元々はAE86(トヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ)、後にS13(日産・シルビア)などFR車で若者が手軽に楽しんでいたことから、発売から30年近く経つAE86で再びドリフトを手軽に楽しめる大会「AE86 Drift Champions Cup」が開催されるようになりました。

まず各地方大会に参戦し、全国大会への資格を得る必要があります。今年は北海道・東北大会(5月30日)、北陸・信越大会(6月19日)、関東大会(8月1日)、中部・東海大会(4月17日)、関西・四国大会(7月3日)、九州・中国大会(8月29日)が予定されています。ここで勝ち上がった選手が、10月9~10日に日光サーキットで開催されるAE86乗りの日本一決定戦に出場できます。ここではミスタードリフト、土屋圭市さんが審査員長を務めます。AE86乗りにとっては、そのカリスマに会えるプレミアムな大会です。

参加車両はAE86のみですが、クラスがいくつかあります。まず350psまでならエンジンチューニングが可能な「EXHIBITION CLASS」、エンジンがNAの4AGのみで200psまでならチューニング可の「4AG CLASS」、ドライバーが30歳以下の「U-30 CLASS」、そして純正シングルスロットルで純正ECUを使っている「4AG-SINGLE CLASS(4AG-S)」そして80年代のマシンが参戦可能な「80' CLASS」があります。クラスによって履けるホイールサイズ、タイヤサイズがレギュレーションで決まっていて、エンジンパワーをむやみに上げてもその効果が出しづらく、いかに扱いやすいバランスにするかが大切なようになっています。

塚本奈々美さんが参戦。日本一決定戦への権利を獲得!

  • CP幸運にも程度のいいAE86が見つかりドリフトマシンに

以前TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジでコンビを組んでいた塚本奈々美さんが4月17日に岐阜県のYZサーキットで開催された中部・東海大会に参戦すると連絡をもらって注目していました。

当日は約40台のAE86が参戦し、奈々美さんは、この大会のために入手したカローラレビンで4AGクラスに参戦。参戦マシンの多くがエンジンチューニングしているなか、奈々美さんはノーマルで挑む。幸い雨が降っていて路面はウェットなので、Pワーで負けていても、そのぶんテクニックでバランスを取りながら走る。不利な状況でもマシンのポテンシャルを引き出して勝ち上がる奈々美さんに、観客は「リアル頭文字D」さながらと驚きました。単走予選で23台中5位に入り、追走決勝で勝ち上がり4位に入りました。これで日本一決定戦に参戦する権利を獲得しました。

昨年D1ライツに80スープラで参戦していた奈々美さんが、なぜAE86でドリフトをするのだろうと思って聞いてみたら「世界的に人気となったドリフトは、よりプロフェッショナルなドライバー、ハイパワーマシンが登場し、多くのクルマファンが観るものになり、なかなか参戦することも難しく憧れの存在となってきています。それでも気軽にメンテナンスしてドリフトを楽しめるAE86ワンメイクに参戦して、一緒に走りながらドリフトモータースポーツの入口として競技人口の裾野を広げたいと思いました」とドリフト愛溢れる言葉をくれました。

12年前から女性だけのレーシングチーム「女子カート部(JKB)」を運営し、モータースポーツに女性ドライバーが参戦する啓蒙活動をしてきた奈々美さんが、気軽にドリフトモータースポーツを楽しむ仲間を増やそうと挑み始めました。AE86日本一決定戦はぜひ観に行ってみたいです。

  • 大会当日はあいにくの雨だったからこれが味方をしてくれた

  • 今見てもかっこいいスタイリング

  • パワーのないマシンでドリフトをするにはかなり技術が必要

  • 女子カート部(JKB)のメンバー

  • 今シーズンもモータースポーツを盛り上げてくれる塚本奈々美さん

写真提供/塚本奈々美 文/寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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