寺田昌弘が新型ランクルの日本に導入して欲しいグレードとその理由・・・寺田昌弘連載コラム
誕生から70周年のランドクルーザー。そのフラッグシップと言えるステーションワゴンが14年ぶりフルモデルチェンジ。中東を皮切りに日本でも販売開始しましたが、メーカーの予測をはるかに上回る反響で、新型ランドクルーザーを待ち望んでいた方の多さにびっくりしました。街中、オフロードで見かけられる日がくるのが待ち遠しいです。
開発責任者の思い描いた新型ランクルとは
国内正式発売開始した週末、宮城トヨタグループで、開発責任者の横尾貴己主査による開発していたときの思いを、わたくし寺田が根ほり葉ほり聞くトークショーがありました。
ステージには、新型ランドクルーザーと61年前に北米大陸と南米大陸を縦断したピンクのランドクルーザー(FJ28VA)が共演しています。新旧ともに信頼性が高いクルマです。
そこで横尾主査は、新型ランドクルーザーの使命を、「脈々と続くランドクルーザーへの世界中の方々の信頼に応えながら、悪路を乗り越えるだけでなく、環境規制など時代の要求も乗り越えなければならないクルマ、そして運転して疲れないクルマ」と言われました。信頼性だけでなく、疲れないかつ環境性能を考慮することを追加したのです。
読者の方は既にご存知な方も多いかもしれませんが、新型ランドクルーザーは、信頼性、耐久性、悪路走破性の高さは先代モデルの同等以上を確保しながら、より高効率エンジンと軽量化が達成されています。
エンジンは3.5リッターV6ツインターボのガソリンエンジンと、今回新設計の3.3リッターV6ツインターボのディーゼルエンジン。CO2削減という目的もあるかもしれませんが、ディーゼルエンジンを国内販売してくれたことは何よりうれしいことです。低回転からのビッグトルクのディーゼルエンジは魅力ありますよね。待ち望んでいた方々も多いはずです。
東京ではガソリンエンジンの販売比率のほうが高いとのことですが、宮城ではディーゼルエンジン搭載車の販売比率のほうが高いそうです。
試乗したところ、1,600rpmから700N・mのビッグトルクは悪路はもちろん、一般道でも信号が青になって0km/hからの加速が大排気量スポーツカーのような加速感が最高なんです。
横尾さんの言う「どんな道でも走りやすく、疲れにくい走り」ですね。
運転席に座ると、シートはもちろんマルチテレインセレクトなど走行・駆動系スイッチが左手で直感的に操作できるレイアウトになっています。これも疲れにくいドライビングに貢献するでしょう。
そして何より重要なのはラダーフレーム。日本の匠の溶接技術により成し得た強さと軽さを高次元で極めたラダーフレームは、まさしく新型ランドクルーザーの屋台骨。ボデーと合わせて200kgの軽量化、低重心化、特にリヤサスペンションの構造改善により、素性の刷新をし、意のままに走り、疲れにくいドライビングを実現しているそうです。
燃費向上、そしてCO2削減のために、エンジンはターボ過給を利用したダウンサイジング、さらに車重を200kg軽くしているそうです。
購入者は、クルマの細部までこだわっている
今回のトークショーには、新型ランドクルーザーをすでに購入した方や商談中の方が多く参加してくれました。
購入者の声で興味深かったことが3点あります。
1点目は、今回の新色でZXとGR SPORTのみメーカーオプションで選択できるプレシャスホワイトパールが、より滑らかな輝きで、よりボデーの造形をグラマラスに見えると大好評だったこと。
2点目は、自分はあまり気にしていなかったのですが、サイドアンダーミラー(補助ミラー)の設定がなく、標準装備の9インチディスプレーオーディオのままでも大丈夫ということに、購入者だけでなく販売店スタッフもとても喜んでいました。
先代モデルではメーカーオプションナビを装備し、補助ミラーなしを選択しなければ補助ミラーが装着となるため、なくしたいためにメーカーオプションナビを選択する人も多かったそうです。ボディデザインを補助ミラーで崩したくない。新型ランドクルーザーは、その思いを見事に解決してくれています。
3点目は、サードシートの設定がガソリン車のみでディーゼル車にも設定してほしいという声です。80系、100系ではガソリンはワゴン登録で8人乗り、ディーゼルはバン登録で5人乗りでした。その名残りに感じますが、今回はディーゼルもワゴン登録なので、サードシートありの7人乗り仕様も選択できたらよいなと思います。
私が国内にあったらいいなと思うグレードは
自身のライフスタイルと自身の好きなクルマのスタイルを考えると、フロントバンパーが切り上がり、アプローチアングルのいいGX、AXグレードでディーゼル搭載車をベースに、前後デフロックがオプション選択できるモデルが欲しいです。
また、信頼性、耐久性、悪路走破性、そして疲れないクルマのため、警察の機動隊や消防指揮車そして高速道路管理など公共性の高い「働くクルマ」としてランドクルーザーは必須だと思うんです。
一方で、ランドクルーザーは高級車で、そのオーナーからすれば作業車として同じ車名のクルマが使われているのを気にするかたも、100系のときに多かったと聞きます。
しかし「人の命を支えるクルマ」として70年の歴史を持つランドクルーザーは、これからもその使命を全うするグレードもあったらいいなと思います。
幼少の頃に公園の砂場でランクルのトミカで遊んでクルマが好きになって、大人になったら実車でサハラ砂漠を走破した私。
現代の子供たちにもランドクルーザーは、砂にまみれ、それでも強く世界の道なき道を走る、世界の人々に絶大なる信頼を得ている、日本を代表するクルマであることを知って欲しいと思います。
そのためにもはたらくランクルが日本でも見られることを願っています。
写真:MTG・山口 忠義 文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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