ホンダサウンドを聞いて心たかぶる!ホンダのラインナップにスポーツカーが欲しい・・・寺田昌弘連載コラム
86/BRZ RaceやYaris Cup、ロードスター カップなどナンバー付車両のワンメイクレースが盛り上がっています。
先日ツインリンクもてぎにて、シビックやフィットのワンメイクレースを開催したので、なんとなく観ていたら、だんだんワクワクしてきて何でだろうと思ったら、エキゾーストノートが響いていたからだと気づきました。やはりサーキットでは走りに合った音が、心を揺さぶります。これらは国内競技車両のN1(量産ツーリングカー)規定に準じたマシン。
私も昔、パリ・ダカールラリーに参戦するために競技ライセンスのFIA国際Cを取得するために、スターレット(EP82)N1仕様で富士スピードウェイでのN1レースに参戦したことがあり、久しぶりにそのときの雰囲気を思い出しました。
ナンバー付車両レースが増えたなか、自分の昔の姿を回想しながら、シビック、フィットのレースでそれぞれ優勝した選手にN1仕様レースの楽しさについて聞いてみました。
スポーツシビック(EG6)が颯爽と走る
90年代、バブル崩壊とともにレース界が低迷したときでもシビックレースは盛り上がり、各サーキットでレースが開催され、その時代のモータースポーツを支えていました。F1日本グランプリの前座レースとして、各地区で勝ち抜いてきた選手が集まって競うレースがあり、ワンメイクレースとして大いに盛り上がりました。
現在、ツインリンクもてぎと鈴鹿サーキットでそれぞれワンメイクレースが開催され、当時のマシンが今も現役で走っています。
今回優勝したのは関 直之選手。学生時代からクルマ好きで自動車販売店やガソリンスタンドでアルバイトをし、現在は仙台で新車・中古車販売を手掛ける㈱MODEの代表。「40歳で本格的にレースを始めた遅咲きですが」と関選手。
ただ出たレースで優勝し、これはおもしろいと思い、2016年もてぎチャンピオンカップに参戦したら、ポールトゥウインで優勝。「勝つとやはりうれしいですけど、さらに周りの仲間が速いんだからもと参戦したほうがいいと盛り上がってくるんです。そうなるとこちらものってきて」そして2018年、2020年はシリーズチャンピオンを獲得しました。7年ぶりとなるコースレコードも記録して。
こうなるともっと自分がどこまでいけるか試してみたくなってくる。「もてぎのこのレースが鈴鹿にもクラブマンレースにFFチャレンジというのがありまして。遠征して参戦しています」シビックのワンメイクレースに挑み続ける関選手。
その楽しさを伺うと「やはりサスペンションのセッティングぐらいでほぼイコールコンディションのマシンで競うのがおもしろいです。あとは腕次第というところが。そして音ですね。アクセル踏んだときの音が気持ちいいです」とのこと。1.6リッターVTECエンジンは小気味よく回り、4輪ダブルウィッシュボーンで足回りもいい、往年の名機であるこのシビックも、これだけ年季が入っていれば、中古車も安く買えて、比較的リーズナブルにレースを楽しめるかなと思って関選手に聞いてみましたが「いや、昨今のスポーツカーの盛り上がりで、値段が上がっているんですよ」とのこと。ワンメイクレースで一世風靡した車種なので、レース車両の中古車が出てくるのに期待するしかなさそうです。
スーパー耐久でも活躍するフィットもおもしろそう
「フィット1.5チャレンジカップ」として鈴鹿やもてぎなどで開催され、スーパー耐久でも活躍する3代目フィットRS(GK5)。i-VTECと6速MTで俊敏な加速感を楽しめるコンパクトFFスポーツの代表作です。
優勝した窪田 俊浩選手は、ホンダ車をメインにチューニングパーツ開発をする㈱ジェイズ・コーポレーションでレース活動をするJ’S Racingを担当。レーシングドライバーとしてだけでなく、TCR車両やVITAのカスタマーレーシングのサポート事業などを手掛けています。
「フィットのレースは鈴鹿でもあるのですが、鈴鹿はカスタマーサポートをしているので、自分はもてぎに参戦しています」という窪田選手は、2020年はスーパー耐久シリーズでST-5のシリーズチャンピオンを獲得するほど、フィットを知り尽くしている選手のひとり。もともとバイクやジムカーナにも参戦していましたが、サーキットで走ってみたいと、このもてぎチャンピオンカップに参戦し始めました。
「当時はCR-Xでしたが参加台数が100台と大井に盛り上がっていまして。そこでチャンピオン争いをしていて、サーキットでも自分が通用するなと思いまして」
その後FJ1600や海外レースにも参戦していきました。その後仕事も忙しくなり、しばらくレース活動は休止していましたが、アルファロメオのワンメイクレースに参戦したらすぐ勝てて、シビックTYPE Rのレースに参戦した後にフィット1.5チャレンジカップに参戦するようになりました。
「あるディーラーでマシンを作ったから乗ってみないかと声をかけていただいて。2014年から16年にかけチャンピオン争いをしていました」
フィットのおもしろさを伺うと「フィットに限らずN1仕様のマシンはレースをしている実感が湧いてきますね。エキゾーストノートはもちろんですが、内装も剥がして剥き出しになった車内がレーシーで。またこのマシンはやはりホンダの遊び心が伝わってきますね、エンジン特性や運動性が。乗っていて楽しいマシンです」
やはりホンダのスポーツカーがあって欲しい
ホンダのマシンで走るお二人に話を伺うと、やはりホンダにはレースの歴史があり、F1を「HONDA POWER」で席捲し、日本の工業製品の優秀性を世界で証明してくれた。2040年にはすべてHEV、FCVにするという目標を発表し、ホンダファンだけでなく、モータースポーツファンはみな驚いたと思います。
確かに地球温暖化問題などにカーボンリデュースは必要ですが、再生可能エネルギーで作った電力を充電するならまだしも、日本をはじめまだまだクリーンなエネルギー政策が現実的に定まっていない国々が多いなか、乱暴な言い方ですが家電のような乗り物を作っても、明るいモビリティ社会は見えてこないと思います。であればHEVを増やしながらCO2の排出量を抑え、ホンダの伝統であるエンジンでスポーツカーを今のうちに1車種でいいので作ってもらえたらと思います。
たとえば割り切って1.5リッターVTEC、できたら1.6リッターターボを載せたスポーツカー、昔のS660とS2000の間でS1600とか。昔、ホンダのCMコピーのなかにこのようなフレーズがありました「いつだって、僕らを突き動かすのは、好奇心だ。好きなことをやるだけで、食ってはいけない。でも、好きなことをやらなかったら、人生はつまらない。面白いから、やる。」ホンダ乗りのふたりの選手とお話しして、やはりホンダファンのためにも1車種でいいから手ごろなスポーツカーが欲しいですよね。
*2021年9月30日時点で、ホンダHPにはNSX、S660が掲載されています。NSXは車両価格が手ごろでない、S660は販売終了が発表されているため記事内表現としました。
(写真・文/寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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