オープンカーのベストシーズンは冬なんです・・・寺田昌弘連載コラム

関東を中心にクラシックカーで1000マイルを走る「La Festa Mille Miglia」というラリーイベントに、1998年にオフィシャルジャーナリストとして参画したことがあります。まだ第2回ということで世間に知られていないため、いくつかのクルマ専門誌の編集部に記事掲載を提案しに行きました。二玄社「NAVI」で対応してくださったのが、河西啓介さん。

河西さんからは、「イベントレポートだとNAVIっぽくないな」と言われましので、「ブレーメンの音楽隊・・・あっ、いやっ、走る管弦楽団、オーケストラみたいに例えたらいかがでしょう?クラシックカーならではの管楽器のようなマフラーが奏でるエキゾーストノートが沿道の観客を魅了していくみたいな・・・」と提案しました。河西さんは了承してくれました。今から23年前のことですが、河西さんは編集者というかクリエイティブディレクターで、以来ずっと尊敬する先輩です。

河西さんはその後、「NAVI CARS」「Moto NAVI」「Bicycle Navi」を創刊し、現在はクルマ、バイク、自転車などのジャーナリストとして活躍しながら、バンドのボーカルとしてアーティスト活動もしています。そして現在「人生を旅する人のモビリティ・ライフ WEBマガジンEIGHTH」の編集責任者をしています。そのサイトで、オープンカー好きのSNSでのグループがあり、12月4日に初めてミーティングを開催することになったと聞きました。しかも箱根での開催、ちなみにクルマはオープンカーです。これは行ってみるしかありません。

  • 今回のEIGHTHオープンカー部の第1回ミーティングを主催した、編集者でモータージャーナリストでアーティストの河西啓介さん。

ボートで楽しむようにオープンエアーを感じる

  • 小型のパワーボートにも見えるリヤからの眺め

私も昔、2ストロークエンジンで幌車のジムニー(SJ30)に乗っていました。晴れた日は幌を外してオープンでドライブ。オフロードをゆっくり走るぶんには、トライアルバイクを乗っているような感覚で楽しいのですが、高速道路はスピードがでないので、かなり過酷でした。

今回バイカーズパラダイス南箱根に集まったオープンカーはみなスポーティー。河西さんが「寺田さんはヨットでセーリグする良さを知っているから、フィアットの小舟を意味するバルケッタの気持ちよさ、わかると思いますよ」

毎年夏に33フィートのオープンタイプのボートに乗る機会があるのですが、確かにウインドシールドとサイドバイザーがあれば、40ノット(約74.1km/h)出ていてもそんなに風を気にすることもなく、音楽を聴きながら気持ちよく航行できます。でも、あるオーナーさんによると、「海上と違って真夏のアスファルトの上は灼熱なのでオープンにしません。開けたら地獄ですよ。つむじまで日焼けします」、おまけにかっこよく真夏に海岸線を走ろうもんなら、塩で髪がバサバサになるそうです。そして車内は砂がたまっていることもあるそうです。

別のオーナーは「この寒い季節がオープンカーにとってベストシーズン」。ヒーターをつければ足元が温かく、ドアウインドウを上げておけば、暖気が若干こもって温かいそうです。

  • インテリアが外から丸見えなので、レザーにもこだわりが伺える

  • 2シーターは人のスペースがコンパクトで、五感で感じながらドライビングに集中させてくれる

イタリア、ドイツ、アメリカ、フランスそして日本のオープンカー

  • 新旧ロードスター。右から初代、3代目そして4代目

今回のミーティングに集まったクルマはどれも個性的。日本車だったら真っ先に浮かぶのがマツダ・ロードスター。初代と4代目は車両重量が1トンを切るライトウェイトスポーツとして、1989年の誕生以降、世界で愛されています。またトヨタ・MR-S、ダイハツ・コペンもありました。そしてイタリアは3世代のアルファロメオ・スパイダーが集まった。一番クラシックだったのは1968年式、私と同じ歳生まれでびっくりしました。これほど赤いボディが似合うオープンもないでしょう。

ドイツはコンパクトなフォルクスワーゲンEOSに上質なメルセデスC180カブリオレと4シーターもおしゃれです。アメリカはやはり大迫力のコルベットスティングレー。さらに映画「アメリカングラフティ」でコルベットともにインパクトの強かったフォード・サンダーバードの丸目2灯を21世紀にリメイクして誕生したモデルも。フランスはフォルムがキュートなルノー・ウインド。こうして様々な国の個性あふれるオープンが集まると壮観です。どのオーナーもとても個性的。

  • 歴代アルファロメオ スパイダー

  • ドイツ、イタリア、アメリカとメーカーだけでなく、その国柄がクルマに反映されている

  • こつこつと手を入れ、エンジンルームまできれいなコルベット スティングレー

  • ちょっと可愛げさえ感じるフォード サンダーバード

これらのサイズで移動するだけなら7人乗りミニバンもありますが、あえて2シーター、4シーターでも決して後部座席の居住性があまりよくないクルマに乗るのは、やはり走りが大好きなかたが選ぶクルマです。オープンで風や空気の香り、エキゾーストノートやエンジン音、吸気音まで感じながら走るのは、オープンカーは小舟感覚と教えていただいたように、ドライビングというより、まさしくワインディングをクルージングする楽しさがどの車よりあるのだと確信しました。五感を振るわせてくれる官能的なクルマが、オープンカーなのだと。人馬一体を体感できることが魅力。思わず乗ってみたくなりました。

  • オープンを愛する参加者。解散後はアネスト岩田ターンパイクなどワインディングを楽しみながら帰路についた

  • ふだんはバイク乗りの憩い、集いの場であるバイカーズパラダイス南箱根。この日だけは50台近いオープンカーが集まった。カフェでスペシャルティコーヒーを楽しみながらオープン談義で盛り上がった

(写真・文:寺田 昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


[ガズー編集部]

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