愛車を長く乗るために頑張るメーカーの取り組み・・・寺田昌弘連載コラム

  • 第19回国際オートアフターマーケットEXPO 2022 ホンダブース

    ホンダブース

長引くコロナ禍のなか、少しずつ経済活動も動かしていかなければと、3月に入ると東京ビッグサイトではモビリティに関わる2つの展示会が開催されました。まず今回は3年ぶりに開催された「第19回国際オートアフターマーケットEXPO 2022(以後IAAE 2022)」。オートアフターマーケットの活性化を目的とした商談型展示会、いわゆるBtoBなので消費者向けでなく事業者間での情報交流の場で、どのような情報発信があるのか初めて行ってきました。

ディーラーや修理工場に有益な情報がたくさん

IAAE2022は、いくつかの分野に分かれています。まずボディに関わる部門。板金塗装関係のメーカー、ブランドが、凹んだボディの修復や傷修理、塗装の紹介をしています。特に塗装は実演コーナーがあり、各塗料メーカーのデモンストレーションが行われ、ふだん観られないプロの仕事が観られておもしろいです。ただ板金に関わる出展が減ってきて、ラッピングやコーティングのメーカーの出展か増えているそうです。

コーティングではガラスコーティングが多いなか、ダイワプロテックではラバーコーティングもラインナップ。ガラスコーティングでは水滴が丸いまま水弾きしますが、ラバーコーティングでは流れ星のように水滴が伸びながら流れ落ち、ボディに水滴が残りにくい特徴があります。

そしてコーティングの新たな手法として、スマートフォンのガラス面と同じようにプロテクションフィルムを貼って保護することもこれから流行りそうです。日本カーラッピング協会では会場で、フィルムを貼る技術を競う「第1回 全日本ペイントプロテクションフィルム選手権2022」を開催し、来場者だけでなく出展社のスタッフも多く見学に集まりました。

次に主にトラックなどディーゼル車向けのDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)関連製品。トラックのDPFフィルターを新品交換する場合、部品代だけでも軽く20~30万円がかかります。だからオイルの燃えカスのようなアッシュなど炭化物を洗浄したり、使用品を買い取ってリビルドして販売するビジネスが広がってきています。このあたりは物流費として私たちの生活のコストにも深く関わってくるし、私も2台のDPF付ディーゼル車を所有しているので興味が湧きます。

トヨタとホンダが初出展。マツダはセミナー。そのねらいは

19回続く展示会ですが、今回初めて自動車メーカー3社が登場しました。マツダは商品本部ロードスターアンバサダーの山本修弘さんが「CLASSIC MAZDA」についてセミナーでお話しされました。NAロードスターはすでにレストアや復刻パーツ、パーツ情報サービスの提供を開始し、RX-7(FC・FD)は復刻パーツの提供を開始を発表しました。

  • 第19回国際オートアフターマーケットEXPO 2022 TOYOTA GAZOO Racingブース

    TOYOTA GAZOO Racingブース

トヨタはTOYOTA GAZOO Racingがすでに「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」というお客様の気持ちに応えたいとGRヘリテージパーツを展開していて、対象車種はトヨタ2000GT、スープラ(A70、A80)、AE86はすでに販売開始し、販売終了から38年経つランドクルーザー40を準備しています。

今回初出展したのは、修理工場をしている方々に知っていただくことではなく、パーツを作ってくれるサプライヤーと出会うことを目的にしているとのこと。当時のパーツを作っている工場が現在なくなっていたり、生産方法の進化のおかげで、逆に当時の職人的な生産方法で作れる工場とのマッチングで、ヘリテージパーツのラインナップを増やせる可能性を模索しています。

一方、ホンダは「BEAT parts」として純正部品の生産を再開し、そのパーツを組み込んだ ビートを展示。1991年5月に誕生し、 今も17,072台(2021年12月現在)が国内に残存し、こうしたオーナーに「ビートをより⻑く 楽しんでいただきたい」という想いで、展開しています。

また驚いたのは2021年4月に販売終了したアクティ・トラックもしっかり純正部品をラインナップしていることを公開していました。アクティ・トラックといえば、ホンダ初の四輪車で1963年8月に誕生した「T360」からの流れを汲む軽トラックです。

ピーク時には年間7万台以上売れ、エンジンをミッドシップに搭載し、空荷の登り坂でもリヤにトラクションがかかって山間部でも大活躍しているトラックです。国内に57万台(2021年12月現在)があり、そのうち1990年に軽自動車規格が変わり、排気量660ccになって誕生したHA3、HA4、HA5は発売から30年近く経ってもなお約13万台も存在します。

このカテゴリーはダイハツ・ハイゼット、スズキ・キャリーといった2強がありながらも、単にトラックとしての利便性だけでなく、やはりホンダに乗りたいという、ある意味、真のホンダファンのクルマでもあります。こうした大切なお客様のために、ホンダの四輪の原点は軽トラックにあるという気持ちを持ってオーナーを支える姿勢に感動しました。

マツダ、トヨタ、ホンダで共通していたのは、新しいクルマだけでなく古いクルマに乗り続けているオーナーの気持ちを大切にしているということ。自動車業界は100年に一度の大変革期と言われ、電動化やカーボンフリー燃料などさらなるCO2削減に向けた挑戦をメーカーがしていますが、モビリティへの興味が薄れ、乗る人が減ってしまっては困ります。

だから、こうしてクルマが大好きな人、必要な人のためにメーカーが挑んでくれていることは、とても大切なことなんだと、この展示会に来て感じました。現行車のパーツと違って小ロット生産だから価格が上がるのはもちろんですが、長く愛車に乗り続けられることが何よりうれしいですね。

(文:寺田昌弘 写真:本田技研工業・トヨタ自動車・寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


[GAZOO編集部]