LEXUS LY650 優雅で美しすぎるので感動してしまった ・・・寺田昌弘連載コラム
ある先輩が42フィートのセーリングヨットを購入するというので、操船する機会もあるかなと、私が一級小型船舶免許を取得したのが2001年の夏。
以来、たまに駿河湾でセーリングを楽しんでいるうちに、新島、八丈島と島を目指すようになり、与論島、沖縄も旅しました。さらに別の先輩が海外でセーリングヨットを毎年1週間チャーターしてくれ、イタリアはナポリからカプリ島、アマルフィ、スペインではマヨルカ島、イビザ島など地中海を巡りタヒチ、セーシェルなど大洋にぽつんと浮かぶ島々もセーリングして楽しんできました。
アフリカのサハラ砂漠やモンゴルのゴビ砂漠、南米のアタカマ砂漠といった砂漠をランドクルーザーなど4WDで走破してきましたが、海でもクルージングを楽しんでいます。
ここ数年エンジンを動力にするエキスプレスクルーザーやモーターヨットに乗る機会もあり、セーリングヨットの静寂さも魅力的ですが、スピードによる爽快感に魅了されます。そして以前より気になっていたLEXUS LY650を観に行ける機会があり、LEXUSのモーターヨットがどのようなものなのか紹介します。
ネーミングにLを持つLY650
LEXUSのヨットをニュースで初めて見たのは2017年。
LC500やRC Fの2UR-GSE (5リッターV8エンジン)を搭載したLEXUS Sport Yacht Conceptは、42フィートのオープンエクスプレスクルーザーだ。停泊していると、シロナガスクジラのようで、クルージングは剣で海を切り開くような颯爽としたイメージだ。より洗練され居住空間をもったLY650は2019年に誕生した。
LEXUSブランドでLから始まるのはクーペのLC、セダンのLS、昨年フルモデルチェンジしたSUVのLX、海外で販売されるミニバンのLMそしてこのLY。Lのネーミングは、それぞれのセグメントでフラッグシップとなるモビリティであれば、なおさらLY650に興味が湧いてくる。
サイズは65フィート(全長19.94m/全幅5.76m)。ボートショーでフローティング展示されるヨットのなかではひときわ大きく見えます。モナコやイビザ島へ行くと軽く100フィートを超えるスーパーヨットも多く見ますが、オーナー自ら操船するのであれば、このサイズがもっとも威厳あるサイズです。
パワーユニットはマリンで信頼と実績のあるVolvo Penta IPS。3機種から選択でき、今回の1350は直列6気筒 12.8リッターディーゼルターボ。ランドクルーザーがアフリカやオーストラリアなどの奥地でも部品が入手しやすいように、ラグジュアリーヨットが入港できるマリーナの多くは、Volvoの部品供給網、修理体制が比較的整っているのでいい選択だと思います
リヤのスイミングプラットフォームから乗り込み、アフトデッキ(船尾のテラスのような場所)へ上がると、広く長いメインサロンとウインドシールドとサイドシールド先の景色まで飛び込んできます。その解放感がさらに空間に広がりを持たせています。アフトデッキ左舷側にグリルとウェットバーがあり、そこからつながるようにメインサロンにコンロやシンク、レンジなどキッチンがあります。ガラスのスライドドアをすべて開ければアフトデッキからメインサロンまでフラットなリビングダイニングが生まれます。
インテリアは質感の高いダークブラウンのユーカリとコントラストが効いたホワイトを基調としています。フロアやテーブルに「L」がデザインされている洒落た感じもユニークでこのヨットがLEXUSであることを実感させてくれます。
メインヘルム(操舵席)は右前にあり、ゲストが座るソファーとも近く、静粛性の高いヨットだから会話を楽しみながらクルーズを楽しめます。
ステップを降りてロアフロアへ行くと3タイプのルームがあります。
バウ(前方)にはVIPステートルーム。ここは流麗な曲線が美しく、大きく開いた二枚貝がやさしく包み込んでくれるような空間が印象的です。天井も高く、船内であることを忘れるほどです。
さらにセンターにさらに広いマスターステートルームがあります。両サイドがガラスで開放感溢れ、シックな温もりのあるダークブラウンのユーカリの壁が、とても落ち着きある部屋にしてくれています。
さらにステップを降りてすぐゲストステートルームがあり、船に慣れたオーナーと違ってゲストはメインサロンやデッキに行きたくなるので、すぐ上がって行ける心遣いがうれしいレイアウトです。各部屋にシャワールームがあり、上質なプライベート空間がそれぞれに用意されているのがうれしいです。
海に合う曲線が美しいLY650のスタイリング
このクラスはサイドから見ると直線的なデザインが多いのですが、LY650は大胆に変幻する曲線がとても印象的なヨットです。LCやLSと同様、LEXUSのデザインフィロソフィーであるL-finesseを具現化しています。またカラーもホワイトが多いなか、カラーバリエーションが5タイプあり、観たのはグレーメタリックとカッパーが重厚感とともにさらに曲線を美しくみせ、クルマの塗装技術を惜しみなく活かし、独特の光沢感があります。
そしてとても気に入ったのがバウデッキ。ゆとりあるソファーとテーブル、なにより独立したベッドがひとりのんびりでき、海と風を音と匂い、そして肌で感じられるのが想像できます。上部のフライブリッジでも質感の高いシートとヘルムがクルージングの爽快感を高めてくれます。
すべて観て回って感じたのは、今まで私が乗ってきたヨットは、操船する人とゲストのコミュニケーションがしにくかったりするのですが、LY650は乗船したすべての人のコミュニケーションがしやすい空間づくりがすばらしい。
まるで景色のいいスイートルームで気の置けない仲間とゆったり過ごしながら、クルージングの冒険的な高揚感を一緒に味わい、ここにいる人しか体感できない稀有なひとときを満喫することができる上質なヨットです。今回はマリーナで観ただけですが、今度は乗ってクルージングを体感してみたいです。
南半球では水素で航行するボートのニュースが
太平洋でつながるニュージーランドから新たなボートの情報が入ってきました。洋上のF1とも称されるヨットレースのアメリカズカップ。その舞台で過去4度の優勝を果たし、その挑戦権を得るルイ・ヴィトンカップでも4度の優勝をしている「エミレーツチーム・ニュージーランド」がトヨタのFCモジュールを活用したフォイリングチェイスボート「チェイスゼロ」のテストをオークランドのワイテマタ港で始めています。
カタマラン(双胴船)でそれぞれに1つずつ80kWのFCモジュールを搭載し、バッテリーを介して420kWでモーターを動かすことで、なんと50ノット(約92.6km/h)でレース艇を追いかけることができます。もちろんフォイル(ジェットフォイルのように加速して艇を浮かす)して海の抵抗を減らすスタイルのボートで航行している光景は、まったく新しいモビリティに映ります。水素タンクも左右それぞれに搭載されているので、万一不具合が出ても、浮き輪替わりになって安全性も担保されるいいアイデアです。
すでに1回の水素充填で180kmを航行できるとのことです。アメリカズカップは、風を動力に航行するヨットレースですが、さらにチェイスボートまでグリーン水素を使って航行すれば、環境負荷は極めて低いスポーツになります。チェイスゼロの挑戦は、これからのマリンモビリティの新たな指針として、世界中で注目されています。私もぜひ一度、見て乗ってみたいです。
(文/写真 寺田昌弘、写真提供:LEXUS・EMIRATES TEAM NEW ZEALAND)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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