トヨタ・ヤマハ発動機・レクサスの開発者たちがオフロードで仲間づくり・・・寺田昌弘連載コラム
14歳の頃、テレビでパリダカールラリーを観て、いつか出場すると心に決めた。
15歳で今まで貯めたお年玉をすべて使って、ヤマハYZ80を購入、毎週末に埋立地を走り始め、オフロードが大好きになった私。
20歳でオーストラリア大陸を縦断するラリーにバイクで参戦、28歳でパリダカールラリーに参戦。と、ここまではプライベーターとして達成しました。
この時はまさかTeam Land Cruiser Toyota Auto Bodyのドライバーとしてランドクルーザー200に乗って、ダカールラリーに参戦するとは夢にも思っていなかったです。
そしてアフリカ大陸、南米大陸、北米大陸、アジア、中東など50ヶ国以上をクルマで旅しているうちにジャパンブランドのすごさを知るようになります。
特に20代の頃、サハラ砂漠で医療支援活動をしていたときに、砂漠をいくつも越えて着いた村では、日本人の私たちを見るなり「SONY」、「TOYOTA」と呼んでいました。
彼らはソニーのラジオやトヨタのランドクルーザーに絶大なる信頼を置いていて、「ジャパンブランド=扱いやすくて壊れにくい」という生活を支える道具として浸透していました。
そのジャパンブランドのおかげで初めて会ったにも関わらず、親切に触れ合ってもらえ、私自身もジャパンブランドを誇りに思うようになりました。
日本から遠く離れたところの話なので、日本で知られていないことはまだまだ多くあります。
ダカールラリーでは、モト部門は昨年、一昨年とホンダが連覇、オート部門は今年トヨタが優勝。またすごいのは、クワッド(四輪バギー)は、ダカールラリーが南米で開催された2009年~今年まで、すべてヤマハが連勝し続けています。
“世界一過酷なラリー”と称されるダカールラリーで、ジャパンブランドのマシンは、世界中の選手に信頼され、好成績を残しています。
カテゴリーの異なるモビリティに乗ると新たなひらめきが生まれる
2017年にトヨタ技術会の若手社員が、ものづくりの輪を広げるために他メーカーとのコラボレーションを考案し、ヤマハ発動機技術会と共同でイベントを開催しました。
内容は、オフロードを舞台に、トヨタはランドクルーザーを、ヤマハは北米を中心にさらに世界的に人気が高まっているROV(Recreational Off-Highway Vehicle)に乗って、お互いの技術を体感するというイベントです。
私も参加させていただいたのですが、同じオフロードを走るクルマでも用途によって素性がまったく異なります。
車重の軽さと長いサスペンションストロークで、悪路走破性を高めているROVに対し、全体のバランスを取りながらハードな走りにも耐える強靭なパーツで構成されるランドクルーザー。明確な差があることを体験しました。
5年ぶりのオフロード集合は、ジャパンブランドのトヨタ・ヤマハ・レクサス
そして5年ぶりにトヨタ・ヤマハに加え、レクサスのエンジニアたちが自ら開発したモビリティとともにオフロードに集まり、互いに試乗する会があり、私も参加させていただきました。
トヨタはもちろんランドクルーザー300、ヤマハはYXZ1000R、Wolverine RMAX4 1000など、レクサスはLX600。
まずはヤマハのROVを走らせます。助手席にヤマハのエンジニアが乗り、広場でドライビングチェックをし、慣熟走行をしてからオフロードコースへ。
ヤマハのROVはピュアスポーツモデルのYXZ1000R、レクレーションモデルのWolverine、ユーティリティモデルのVikingと大きく3モデルあり、それぞれいくつかのグレードがあります。
今回乗ったYXZ1000Rは、直列3気筒998ccエンジンにシーケンシャル5速+後退でパドルシフト。比較的フラットなオフロードコースを走りましたが、オフロードバイクを乗っているような楽しさがあります。
ボディサイズに対し、軽量でサスペンションストロークが長く、スポーツ走行を想定して設計されています。バイクと同様に乗りこなす楽しさがあり、初めて乗った私は、ステアリングを切っているときにパドルシフトに触れてしまったので、慣れが必要です。
一方Wolverineは999ccエンジンにCVTでモードはL、H、N、Rとステアリングとアクセル、ブレーキに集中できるタイプです。
細くアップダウンのある林間コースを走ったのですが、雨でぬかるんだ路面をものともせず登ったり降りたりできます。
私は以前、アジアクロスカントリーラリーで、タイやラオス、カンボジアのぐちゃぐちゃにぬかるんだコースをFJクルーザーで、何度もスタックしながら走ったことがあります。しかし、このROVなら簡単に走破できると思います。
これら悪路走破性の高さは、軽量でサスペンションの路面追従性の良さによるものと感じました。
トヨタやレクサスのエンジニアはさらに、「アクセルのセッティングがとてもうまいから、意のままにマシンを操れる感覚がすばらしい」と評価していました。
たしかに、アクセルを踏んだらすっと前にでる感じで、“ドライバーの感性をうまく捉えたセッティングなので走らせやすいのだ”と教えていただきました。
次はランドクルーザー300に、ヤマハのエンジニアが乗りました。
雨でさらに路面が滑りやすくなるなか、電子制御がドライビングをしっかりアシストし、さらに悪路走破性を高めていることを体感していました。エンジニアのなかには愛車がランドクルーザーという方が2名いて、格段に技術が刷新されていることに驚いていました。
長年、世界中の悪路を走って鍛え上げられ、そのたびに技術が積み重ねられ、ランドクルーザーが唯一無二のブランドになっていると感じ、新しいランクルもいいけど、愛車のランクルにも益々愛着が湧いたようです。
そしてLX600。これはオフロードを乗り心地よく走れるのはもちろんですが、何よりボディは泥だらけになっているのに、静粛性が高く、質感の高い居住性とのギャップが不思議な感覚です。
まるで外は猛吹雪、中は暖炉で暖かく、薪がはぜる音しか聞こえないような静かなログハウスでのんびり過ごしているような感じです。
現在、水素社会をキーに異業種の仲間づくりを行ったり、スポーツカーをキーに同業で協力しあってクルマをつくったりと、互いの思いを紡ぎ、よりよい社会、モビリティサービスを作る流れが様々な業種で起きています。
こうしてオフロードを舞台に、世界に挑戦するモビリティサービスのカテゴリーを越えて試乗しながら、仲間づくりが進んでいること。また、お互いのすばらしい技術、アイデアを体感し、もっといいオフロードのモビリティづくりが進んでいくことが今から楽しみです。
この日に体感したことが数年後のモビリティサービスに活かされていたらいいですね。
写真:小隅 博範/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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