MIRAIに乗り始め、過去と現在のクルマのことを考えた・・・寺田昌弘連載コラム
15歳で80ccのモトクロッサーに乗り、バイクの免許を取得してからツーリングやオフロードライディングを楽しんでいました。大学生になってクルマの免許を取得してからは、まずはトラックに乗れと父親に言われ、自宅にあったいすゞエルフの2t、2tロング、3.5t(ユニック付)にモトクロッサーを載せて走りに行っていました。デートもトラックなので、乗らないのにモトクロッサーを載せてピックアップっぽい雰囲気にしていました。
当時は、ウッド調デカールを貼った日産セドリックバン(RD28直列6気筒ディーゼル)の最廉価モデルが自宅にあり、やっと乗用車っぽい(バンなので商用車です)クルマに乗っていいと許可が出て、友達を迎えに行ったら「サーファーですか?」と聞かれることも。クルマはそのオーナーそのものを表現するのだとそのとき感じました。
その後エルフの関係上、四駆でもいすゞだったらいいということでビッグホーン(4JG2直列4気筒インタークーラー付ターボディーゼル)が自宅にやってきました。この頃、「Let’s Go 4WD」誌の創刊時からのライターをしていて、オフロードコースの走行や、タイヤインプレッションから洗車企画まで大活躍してくれました。
自分で初めて買ったのは、ランドクルーザー70(ナナマル)。パリダカールラリーに参戦するためにコンビを組んだ仲間と二人で買って、後に買い取らせてもらい、25年経った今も乗っています。
1999年から初代プリウスとともに世界中を環境体感する旅プロジェクトに参加して、もっとHEVを知りたいし、普段から乗っていないと説得力もないかなと思いクルーガーハイブリッド、ハリアーハイブリッドと乗り継ぎました。
その後DPR(排ガス浄化装置)と尿素SCRシステムが搭載されたクリーンディーゼルのランドクルーザープラド(プラド)が発売され、元々ディーゼルエンジンで育ったこともあり、都内でも乗れるため、乗り始めました。
そして2021年、新型ミライで1回の水素充填で何km走れるか挑戦し、世界記録を樹立してから、プリウスのときと同じように、普段からFCEVに乗ろうと思いました。
冒険心をくすぐるミライとのつきあい
納車されてからすぐ、愛知県のさなげアドバンチャーフィールドで取材のお仕事があり、ナナマルでもプラドでもよかったのですが、せっかくなのでミライで行くことにしました。
最初にするのは、どこに水素ステーションがあるのか、営業時間、休業日の確認です。するとちょうど目的地近くに水素ステーションがあり、そこまで自宅から370km。ミライの水素残量と走行可能距離を確認すると充分届きます。
現在は、どこにでも24時間営業のガソリンスタンドがあるのでそれに慣れてしまうと、日中しか営業していない水素ステーションが不便に感じる方もいると思いますが、私が幼少期の頃のガソリンスタンドは、日中しか営業していなかったので同じ感覚です。
また、サハラ砂漠でNPO医療支援活動をしていたときに、次の村までどれくらいの距離で、ガソリンスタンド(ところによりドラム缶に入った燃料が置いてあるだけ)はあるか、そこまで燃料は持つかなどを考えながら走っていました。水素ステーションまでの距離を確認するのは、それと感覚が似ています。
プリウスで世界初となるパリ・ダカール間を走破したときも、フランスやスペインは一定区間ごとにガソリンスタンドはあるし、事前に案内も出ているので心配はなかったのですが、モロッコへ渡り、モーリタニア、セネガルとアフリカ大陸を南下したときは、事前に情報収集し、必要であれば携行缶に燃料を入れてサポートカーに積んでいました。
こうしてクルマの旅は、その向かう先、未来をイメージしてから走り出すのでおもしろいです。ダカールラリーを走っていたとき、ロードブックを見てイメージして地平線の向こうにあるゴール目指してワクワクしながら走っていました。
だからミライで未来をイメージしながら走ることは、何も考えずに問題なく走れる環境ではむしろ新鮮で、まるで海外を走っているような楽しさがあります。
またHEVに初めて乗ったときに知った、新たなドライビングの楽しさ。それはアクセルを戻すときに感じる何か満たされる気持ち。バイクでもクルマでもアクセルを踏めば気持ちが昂るのは当然ですが、HEVでアクセルを戻したときに燃料消費計のグラフが最長になるのがちょっと得した気分で、そのグラフが何本も並ぶと何か満たされた気分になります。同時にHEVのドライビングがうまい、とひとり優越感に浸れます。
このミライはFCEVですが、同じようにアクセルと電力消費計を見ながら慎重にコントロールするのがおもしろいです。
新型ミライでは、水素1kgに対し200kmを走れば、世界記録を樹立できると教えてもらい、その時はなんとか200km超えで走れたので、初代ミライでも行けるかなと思い、愛知からの帰りに、三島、湯河原と遠回りしながら走ってみました。
しかし、どんなに頑張っても130kmくらいしか行かず、腕がなまったか、と思ったらそうではなく、新型の性能が飛躍的に良くなっていることに、帰宅後、カタログデータを見て気づきました。
それにしても走行中の静粛性の高さは何よりの性能です。普段ナナマルに乗っているのでいつもは聴けなかったYouTube Musicを存分に楽しめるようになりました。クルマは「走りだけでなく、移動するときの空間そのものも楽しめるのだ」と久しぶりに思い出しました。
写真,文/寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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