自動車にまつわる税金・保険は適正なのだろうか・・・寺田昌弘連載コラム
昨年、これからの水素社会に向け、より現実的に体感しようとFCEV(燃料電池自動車)のトヨタ・ミライを購入したことで、計3台のクルマを所有することになりました。
他の2台は、1996年に購入し、初めてパリ・ダカールラリーに参戦したときに乗ったランドクルーザー70。そして、2016年にトヨタ初となった尿素SCRシステムを採用し、窒素酸化物(NOx)も大幅に低減したディーゼルエンジンを久しぶりに搭載したランドクルーザープラドです。
どれもそれぞれの良さがあり、用途も異なりますが、共通して気になるのが「税」と「保険」。これからのモビリティ社会を考えたときの現状の問題点について考えてみました。
消費税以外に発生する取得税、継続的な暫定税率
2022年度の日本の租税収入は約110兆円です。
【参照:JAFホームページより https://jaf.or.jp/about-us/csr/jaf-demand】
その主な内訳は、
1位「消費税」・・・約24.5兆円(22.1%)
2位「法人税」・・・約21.3兆円(19.2%)
3位「所得税」・・・約20.3兆円(18.3%)
4位「固定資産税」・・・約9.5兆円(8.6%)
となっています。
その次に来るのがなんと、「自動車関係諸税」の約8.8兆円(7.9%)なのです。
実に全体の約1割弱を私たちクルマオーナーが日常生活で消費税や所得税などを払ったうえで、さらに支払っていることをご存知でしたか?
クルマオーナーは、大別して「取得時」「所有時」「走行時」とそれぞれ税負担しています。
●取得時にかかる税金
取得時の消費税(10%)以外に、“環境性能割“と名前を変えた、旧自動車取得税があります。、燃費の良い車は税負担が軽く、燃費の悪い車は税負担が重くなるようになっています。
クルマは、購入時に消費税とは別の税として、環境性能によって取得価額の0~3%(軽自動車は0~2%)がかかります。500万円のガソリンエンジンの普通乗用車を購入した場合、3%だと消費税50万円と15万円を支払う必要があります。
税を取る側は、環境負荷の話を常套手段として使いますが、火力発電の電気を使用する電化製品も消費税のみですから、クルマも同じように消費税のみにしても良いと思います。
●所有時にかかる税金
日本は、自動車重量税も支払う必要があります。アメリカと比較すると、実に29倍もの税金を日本のオーナーは支払っています。1970年代に自動車重量税が加わり、道路の整備・維持のため、受益者負担の考えから道路特定財源制度が始まりました。
その財源を中心に、全国で道路が整備されたことはとても良かったことです。しかし、ある程度役目を終え、本来減らすべき税負担が、2009年に一般財源化されたことが疑問です。あくまで受益者負担という考えでの税ですから、交通インフラにかかる予算が少ないのであれば、減らすことは当たり前のことだと思います。
暫定税率は、道路特定財源が一般財源化された2009年で一度廃止されました。しかし、国の財源が厳しいから、と当分の間、当時の税率水準を維持するとして、結局、暫定税率が復活しました。まずは、暫定と言っているのですから、廃止して欲しいです。
暫定税率が復活したことは、まるで子供が、お金が無くなりそうだからお金ちょうだいと親にせがむのと同じだなと感じます。私が親であれば、自分でアルバイトをして収入を得るか、節約するか、やり繰りを上手くするなど、もっと工夫しなさいと言います。
一方で、100年に一度の大変革期と言われるモビリティ社会のため、MaaS(Mobility as a Service)や水素ステーション、急速充電インフラ、ひいてはモビリティに関わる電力を作るための再生可能エネルギー製造施設などは急務です。このように、受益者負担の目的税とするのであれば、理解できますし納得できます。
税金の課税は公平にして欲しい
●クルマを利用するときにかかる税金
走行時(利用時)にかかる税は、ガソリンや軽油など主に燃料です。その税は、ガソリンでは1リットルあたり揮発油税48.6円(本則税24.3円/暫定24.3円)、地方揮発油税5.2円(本則税4.4円/暫定0.8円)、石油石炭税2.8円(本則税2.04円/暫定0.76円)となります。
昨年の燃料代高騰時に暫定税(暫定税率分の25.86円)がなくなり、石油元売会社へ税金を投入するより、シンプルで国民にもわかりやすかったと思っています。一度やめたら、復活させるのは大変ですからね。
そのうえ、CO2削減のために走った分だけ税をかけるといったロードプライシングが話題となっています。BEVやFCEVなど化石燃料を動力に使用しないモビリティに課税するために、ロードプライシングなんて安直なことを考えているとは思いませんが、移動体のCO2排出に課税するのであれば船舶、航空などすべて公平にしなければならないと思います。
というのも、漁船が使用する軽油の軽油引取税は免除されているのです。でも、その獲れた魚を全国に運ぶトラックや、農業でトラックを使用する方々は免除されていません。
私たちの自賠責保険の掛け金はどこへ
昨年、クルマ所有者の義務である自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の引き上げを検討するというニュースがありました。自賠責は交通事故の被害者救済や安全なクルマ開発への支援に充てられますが、私たちから集めた保険料の運用益が出ず、国交省は2040年代には枯渇すると説明しています。
12月27日に検討会が開かれ、年に約100億円とする案が示され、クルマ1台あたり約125円の値上げです。しかも、私たちが積み立てている保険料のうち約6000億円(5952億円)を財務省が借りたまま少ししか返済できていないそうです。
まず返済してもらうことが大前提ですが、完済したら自賠責は廃止して、任意保険と呼ばれる自動車保険を義務化すれば良いのではないでしょうか。2021年時点で88.4%が民間の自動車保険・共済に加入しています。
今時、死亡事故で最大3,000万円しか出ない自賠責は被害者救済するにはあまり意味をなさず、民間の自動車保険を「無制限」にすればカバーできます。。
モビリティ社会は進歩し、より安全に、より環境負荷を抑える努力をモビリティに関わる企業が真剣に挑み続けていますし、私たちオーナーの選択動機にも関わってくると思います。
税も保険もあくまで私見です。ただ、これからもクルマと楽しく付き合っていきたいからこそ、現状の矛盾を正していただくことが大事だと思います。
(文:寺田昌弘 編集:GAZOO編集部)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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