ランドクルーザー250と300をモトクロスコースで走らせる・・・寺田昌弘連載コラム


発売から大人気のランドクルーザー250と300。世界的大ヒットで日本ではなかなか乗る機会もないですが、宮城トヨタグループ(MTG)のオフロードイベントで、モトクロスコースを走れる機会をいただきました。来場者を乗せてアミューズメントパークのアトラクションのような走りをしながら、これら2台のオフロード走行インプレッションもしてみました。

TRC、VSCはオフにして素性をチェック

トヨタのクルマには滑りやすい路面でも安定して走れるようにサポートしてくれる機能があります。

TRC(Traction Control/タイヤ空転抑制機能)は駆動輪の空転を検知すると、駆動輪にブレーキをかけたりエンジン出力を抑制して空転を抑制します。VSC(Vehicle Stability Control/横滑り抑制機能)は、滑りやすい路面で横滑りが発生するとブレーキとエンジン出力をコントロールして横滑りを抑えてくれます。
さらにVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management/統合型走行安定システム)は、TRC、VSCが空転や横滑りが発生してから作動しますが、VDIMはステアリングやブレーキ、アクセルの操作量によるドライバーの走行イメージと車両の挙動情報との差を埋めてイメージに近いラインで走れるようにするシステムです。

これらはタイヤを空転させず、滑らないようにするサポート技術で、オフロードで低速走行時にはその効果で安全に走れますが、スポーツ走行時にはエンジン出力が抑えられ、加速しにくかったり、クルマの向きを変えにくくなってしまいます。

ランドクルーザーにはTRC、VSCをオフにするスイッチがあり、短く押せばTRCオフ、3秒以上長押しすればさらにVSCがオフにできます。
今回はTRC、VSCともにオフでランクルの素性を剥き出しにして走ります。

ドライバーの技量の差が出ておもしろい250

250のグレードは、ZX、VX、GXとありますが、今回乗ったのはエントリーモデルのGX(ディーゼルエンジン)。

グローバルで見れば中東を中心にガソリンエンジン仕様が多いですが、オーストラリアは圧倒的にディーゼルエンジン仕様が人気です。
1GD-FTV(2.8L直列4気筒ディーゼルターボ)は、150プラドや海外で販売されているハイラックスなどに搭載され、低速から高トルクを発生し、低速コーナーからの立ち上がりや急坂などすぐ加速したいときアクセルを踏むと、ぐっとランクルを前に押し出してくれる扱いやすいエンジンです。

サスペンションは初期が柔軟で細かい路面の凹凸を吸収するので視点がぶれずドライビングしやすい。コーナリングはアウト側がしっかり踏ん張るので、舵角に合った曲がり方をしますが、少しフロントが硬めなので、オフロードを好んで走るかたはフロントスタビライザーのロック/フリーが「STABI BAR」スイッチでできるSDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)搭載しているZXをおすすめします。

250はランクル初となる電動パワーステアリングで、路面からの衝撃で押し戻されるキックバックが抑えられとてもドライビングしやすいです。
以前、ランクル200でダカールラリーに参戦していたとき、砂丘で大きな衝撃でパワステポンプを壊してしまった経験もあり、あらためて250で砂丘を走ってみたいと思いました。

300より車両重量が約200kg軽いので、動きもより俊敏で、オフロードを自分で操縦している感覚が、ランクルならではの信頼性、耐久性、悪路走破性の高さに加え、ドライバーをワクワクさせてくれるおもしろさも搭載しているのが250です。

クルマが走ってくれる走破性、安定性の高さが魅力の300

300のグレードはZX、GR SPORT、VX、AX、GXがありますがGR SPORT(ディーゼル)に乗りました。

林道程度ではオフロード性能がわからないですが、モトクロスコースではサスペンションもフルに動かせ、タイヤで路面を掻き上げるまで走らせると素性が見えてきます。
リヤを滑らせながら300°近いコーナリングをすると250より安定して思った通りのラインで走ってくれます。自分のドライビングがうまくなったとさえ感じるのは、やはり300のサスペンションとエンジン特性の出来がすばらしく、クルマが意のままに走らせてくれます。

エンジンはF33A-FTV(3.3L V6ツインターボディーゼルエンジン)で200に搭載されていた1VD-FTV(4.5L V8ツインターボディーゼルエンジン)より軽くなり、出力も大きくなり300のボディを走らせるには充分なエンジンです。

オフロードでの走りやすさはE-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)のおかげで路面状況に応じて自動で前後のスタビライザーのロック/フリーをしてくれることで、オフロードでも特に意識することなくコーナリングを楽しめます。ギャップでフロントタイヤが浮くくらいのスピードで軽く飛んで着地してもサスペンションがフルバンプすることなく、リバウンドで伸び切ることもなくすぐ加速できるのが扱いやすい。意のままに走るとは300にこそふさわしい言葉だと思います。

GR SPORTは前後デフロックも選べるので魅力的ですが、個人的にはこの機能でVX、AXのようなアプローチアングルで有利なシンプルなバンパーだとさらにオフロードで走りやすいと思います。

250、300をモトクロスコースで走らせましたが、どちらも200からさらに俊敏に走りやすく、150プラドや70より乗り心地がよく、ランドクルーザーとしての信頼性、耐久性、悪路走破性の高さを飛躍的に進化させながら、よりドライバーの意のままに走るランクルになっていると確信しました。

写真:茅原田哲郎/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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