笑顔のために、車好きがマッシブなキッチントレーラーを四駆でけん引…寺田昌弘連載コラム

北海道・苫小牧市のキラキラ公園で開催された複合型エンターテインメントイベント「TOMAKOMAI MIRAI FEST 2023」に行ってきました。

昔からフードエリアといえば片流れの屋台やテントが並んでいましたが、ここ数年はバラエティーに富んだキッチントレーラーが並び、食事はもちろん、観ているだけでも風景を華やかにしてくれます。

車両総重量が750kg以下でけん引免許が不要なサイズから、大型トレーラーまで、いろんなキッチントレーラーがあります。ふとトラクター(牽引するクルマ)を見るとその中に四駆があり、かっこよかったので、4名のオーナーさんにお話を伺ってみました。

北海道だから雪に強い四駆がいい

キッチンカーエリアに集まったトラクターの四駆は4台。真っ赤なシボレー K5 ブレイザーにトヨタ ハイラックス、ランドクルーザー70、そしてレクサスLX570。

1.鈴木正人さん/シボレー K5ブレイザー

苫小牧市内で居酒屋「ゴーゴー食堂」を経営し、元々イベントに出店することも多かった鈴木さん。今回はタピオカやフルーツジュースを提供するお店をオープンしていました。

「キッチントレーラーを購入してイベント出店していたところ、コロナ禍もあり、3蜜を避けて食事がしたいお客様のところへ出向いていけるこのスタイルが良い、という声が多かったです」

購入したキッチントレーラーのメーカー「TKKX」は、北海道に販売代理店がなかったそうで、キッチントレーラーでビジネスをしたい方の手助けになれば、と代理店「STAND FACTORY」を運営するまでに。

「アメ車が好きなんです。これもけっこう長く乗っていますが、キッチンカーやキャンピングトレーラーを引っ張っていて似合うじゃないですか」

確かに真っ赤な91年式シボレー ブレイザーとTKKXのキッチントレーラーがとてもマッチしていて、風景さえもアメリカンにしてしまうインパクトがありますね。

北海道で移動販売をしたい方の兄貴的存在な鈴木さん。ご興味ある方は「STAND FACTORY」に相談してみてください。

2.井上純一さん/トヨタ ハイラックスGRスポーツ

「もともとは犬のおやつの移動販売をしようと思って買ったんですが、ちょうどこのイベントがあると鈴木さんに声をかけていただき、急遽出店することになりました」

と話す井上さんは、札幌市で無添加の犬のおやつを量り売りしている「マルヤマる」のオーナー。ハイラックスを選んだ理由はなんとなくだったとか。

「このハイラックスは2台目なんです。標準モデルに乗っていたんですが、GRが出たから乗り換えて。もともとランクル60に乗っていて、それから40、56と乗り継いで。しばらくほかのクルマにも乗っていましたが、やはり四駆がいいですね。」

なんとなくなんてとんでもない。実はランクルでも40、56、60とかなりディープな型式に乗ってきた真の四駆乗りでした!

今回はいろんな味が選べるかき氷やスムージーを販売。当日は晴天が続き、沢山のお客様でにぎわっていました。

3.遠山恭輔さん/トヨタ ランドクルーザー70

「僕の苗字が遠山なんで、お店はKINCHANなんです」明るい笑顔で出迎えてくださった遠山さん。

「KINCHAN FOOD TRUCK」は鶏肉のザンギのお店で、ベーシックな塩ザンギだけでなく、韓国風のヤンニョムや中華風の油淋鶏、ほかにもスパイシーなものや甘じょっぱいものなど、ザンギをワールドワイドな味で楽しめます。いつかカレーやイタリアン、フレンチなどいろんな味が出てきそうですね。

どんなところでも走っていけるタフなランクル70と、とてもコンパクトなキッチントレーラーのバランスがかわいらしいです。

「最初は70プラドに乗っていたんです。でもやはりナナマルといえばこっちかなといつか乗り換えようとおもっていたところ、いいナナマルがあったので77にしました。大満足です」

ワゴンの70プラドに比べれば、バンで前後リーフスプリングの77は乗り心地こそゴツゴツしていますが、何よりワークホースとして使うには、まさしく現代の馬車みたいでかっこいい。

4.冨谷弘明さん/レクサス LX570

ひと際目立っていたのが、LX570。

小さなキッチントレーラーではおにぎりを販売しています。そのおにぎりを握っていたのは、苫小牧を拠点に関東一円、全国に荷物を運ぶ物流会社「弘富通商」の会長。

北海道の新鮮な農産物や海産物を運んでくれる、北海道と本州をつないでくれる大切なお仕事のかたわら、「オニギリトミー」をしています。LX570に乗られているのも納得です。

「LX570ではこのキッチントレーラーだけでなく、キャンピングトレーラーも引っ張ります。私が引っ張るのが好きで、LX570なら楽に走れます。」と話してくれました。

物流会社では140台を超えるトラックを保有し、トラクターは約40台あるそう。こちらの仕事でも引っ張っている、生粋の引っ張り系男児です。冨谷さんは、物流で農業と都市をつないで地域経済に貢献しています。

「オニギリトミー」は、人と人とのつながりを大切にしているその気持ちまでおにぎりの美味しさに込められているんだと思いました。

開店から閉店まで、お客様の列が途切れなかったのがその証拠です。冨谷さんの握るおにぎりは、運気も上がりそうな一品なので勝負飯にもぜひ食べたいです。

  • オープンからずっとお客様の列が絶えない人気店

キッチントレーラーは人と人をつなぐ車輪付きの宝箱

  • カラフルなキッチントレーラーが並ぶ

この3年、コロナ禍で人と人とのつながりがオンラインになり、直接会えないもどかしさがありました。こうしてクルマでキッチントレーラーを牽いて、私たちのところまでやってきてくれるのは、クルマをコモディティー化させない、モビリティーの明るい未来のひとつだと実感しました。

オーナーやスタッフの笑顔と食べ物の温もり、爽快さとともに楽しいひとときを過ごせました。やはり人と人が会えるってこんなにもすばらしいんですね。

今回ご協力いただいたみなさんの出店情報はSNSで発信しているので、ぜひ見つけて食べに行ってみてください。

写真・文/寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。