「SUZUKA2&4レース」のイベント広場で見た水素のチカラ。モリゾウドーナツに可夢偉コーヒーをいただく・・・寺田昌弘連載コラム
「SUZUKA2&4レース」のGPスクエア(グランドスタンド裏のイベントエリア)でタンドラFCEVや、FCキッチンカーがリニューアルして展示されることを知り、行ってきました鈴鹿サーキット。
「SUZUKA2&4レース」とは、2輪のMFJ全日本ロードレースと4輪のスーパーフォーミュラレースが併催されたもの。最近でもSUPER GTやスーパーフォーミュラを観にいっていましたがいつもパドック側にいたので、グランドスタンド裏へは大学時代にバイク専門誌編集部のアルバイトで鈴鹿8時間耐久ロードレースの取材で来て以来、実に35年ぶり。
施設の進化に驚きましたが、各出展社の進化にも驚きました。やはりここでも「カーボンニュートラル実現に向けた取り組み」が見られたのでご紹介します。
MORIZOドーナツは人にも地球にもやさしいおいしさ
FCEVのグランエース・キッチンカーは、昨年のラリージャパンでもカフェとして活躍していましたが、今回リニューアルしてカラダにやさしいドーナツを提供するキッチンカーとして出店していました。
このドーナツを開発したのは、東京・元麻布にある、身体が喜ぶ至福のレストラン「EPICURE」のオーナーシェフの藤春幸治さん。フレンチやイタリアンなどの好きな料理カテゴリー、ヴィーガンなどの食事理念や志向がある方、グルテンフリーといった食事制限がある方でも、一つのテーブルで一緒に食事を楽しんでいただける「ケアリングフード」を提唱、実践されているシェフです。
その藤春シェフが、人だけでなく地球にもやさしく料理するためにFCEVの電源を使ってCO2を出さずにドーナツを調理していました。豊田章男会長も訪れ、人にも地球にもやさしいドーナツを試食していました。
豊田会長といえばMORIZO、MORIZOと言えばドーナツターン。2012年10月に東京のMEGAWEBイベントで勝田範彦選手とともにMORIZOがドーナツターンをして会場にいたみなさんがどっと沸いて、おそらくこの時が公に初披露だと思います。
また3月に開催されたTGRラリーチャレンジ沖縄でも、ドーナツターンのデモンストレーション走行をし、ファン作りのために観客を大いに沸かせていました。走行前にドーナツを食べていたこともニュースになっていたほどです。
これからFCEVのグランエース・キッチンカーで作るドーナツとMORIZOのドーナツターンは、きっとイベントで観られると思います。
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「ドーナツが罪悪感なく食べられたら嬉しい」のひとことからおいしくてヘルシーなMORIZO DONUTSが生まれた
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これがMORIZO DONUTS
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アンケートをとるとFCキッチンカーを初めて知った人が多かった
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FCキッチンカーのなかでドーナツが作られる
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(左から)トヨタイムズの富川悠太さん、豊田会長、シェフの藤春さん。みんな笑顔。
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気さくに撮影に応じる豊田会長 子供たちがもっとクルマやモータースポーツを好きになってもらえると嬉しい
タンドラFCEVは圧倒的な存在感で大注目
すでに公開されていましたが、やっと観られましたタンドラFCEV。北米を中心に販売されているタンドラは、全長約6mととにかく大きくて迫力があり、来場者もその近くを歩いているとその存在感に圧倒され、吸い込まれるように近づいてきます。
ただこのタンドラはFCEVにしたコンセプトモデルで、ミライのFCシステムをベースに搭載されています。水素タンクはトノカバーのかかったデッキ内にあり、可搬型外部給電器も搭載してCO2フリー電気を供給できます。
「MORIZOドーナツ」を提供している隣りで、小林可夢偉選手がプロデュースする「KAMUIコーヒー」のキッチントレーラーへの電源供給をしていました。
このタンドラFCEVは4WDではなくFRでリヤにeアクスルが搭載されています。ミライの出力ではこの大きなタンドラを走らせられるのかと疑問を持つ方もおられるかもしれませんがそこは心配ご無用。
電動化は出力の損失がほぼなく駆動モーターを動かせられることと、すぐに高トルクが得られるので、きっと発進から加速もスムーズでとにかく静かだと思います。これはぜひ乗ってみたいです。
ただ現状、デッキが水素タンクで埋まっているので、キャノピーをつけて上側に荷物を入れられるスペースがあるといいですね。
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タンドラFCEV
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ミライのFCユニットをエンジンルームに搭載
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車内はシンプル。水素使用メーターがある
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可搬型外部給電器を搭載。ここからキッチントレーラーへ給電
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リヤにeアクスルを搭載
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みなさんタンドラFCEVに興味津々
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小林可夢偉選手プロデュースのカフェ・ラウンジに置かれたキッチントレーラー
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タンドラFCEVから給電して作られる通称「KAMUI COFFEE」
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MORIZO DONUTSとKAMUI COFFEEは相性抜群
カーボンニュートラル実現へ向け、水素で作った電気が活躍
今回もMovingeがイベント会場全体で大活躍していました。まずMovingeの特徴であるトヨタの燃料電池バス「CHARGING STATION」をハブとし、ホンダの可搬型外部給電器から可搬型バッテリーに充電し、スーパーフォーミュラチームの物販ブースへ提供していました。
また一番驚いたのが、CHARGING STATIONから可搬型外部給電器を介してイベントステージにも電源供給していたことです。
曲を流したり、照明をつけたりはもちろん問題ありません。しかし、スピーカーやマイクには驚きました。例えば、マイクに大きな声で話し始めた瞬間、いわゆるアタックと呼ばれますが、瞬間的に一気に電力消費をしてしまうのです。でも今回、ステージ上でレースクイーンが遠くにいる観客まで大きな声で投げかけていましたが、まったく問題なし!
こうしてイベント会場で発電し、すぐそばのステージで使ったり、可搬型バッテリーで配布したりすれば余計な配線も必要なくなり、配線につまずくこともなければ、養生の必要もないので、これからのイベント電源としてとても有効です。
またステージの音響関係で言えば、発電したところからすぐ電気を使用するのでノイズが入ることも少なく、よりクリアな音で再現できます。これはアーティストのライブ音源電源を何回もサポートしてきて実感しています。まるで源泉かけ流し電源といった感じでしょうか、心地よい音響が実現できます。
それにしても今回のSUZUKA2&4は大賑わいで、モータースポーツの魅力がこれだけの人を惹きつけて魅了するのだととてもうれしかったです。
F1日本GPのスケジュールの関係上、例年より早い時期に開催されましたが、いつかF1とスーパーフォーミュラのレースが同じイベント内で開催されたらいいなと思っています。トップフォーミュラの走りの違いをその場で観てみたいものです。
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Moving eのマザーシップ、バス型のCHAGING STATITON。リヤから可搬型バッテリーに充電
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運転席はとてもシンプル
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このステージで使用する電気もCHAGING STATITONから供給
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グランエースFCEVからも電気を供給
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RCカーの充電も水素から生まれた電気を使用
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スーパーフォーミュラのRCカー
写真・文/寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]