移動する喜びをできるだけ多くのかたへ、モビリティの挑戦・・・寺田昌弘連載コラム
「Tarzan」(マガジンハウス)が初めて障がい者アスリートの特集を組んだのが1993年。98年の長野パラリンピックから障がい者スポーツやアスリートのすごさが特に注目されるようになり、99年5月12日号から「GO!GO! 我ら、ハンディキャップ・ターザン」の連載が始まりました。
陸上、水泳、バスケットボールなど100名を越える選手が登場し、私はライターとしてTarzanで別コーナーを執筆していましたが、読者としてよくハンディキャップ・ターザンを読んでいました。
高校時代、夏休みに目の不自由な子供たちに水泳を教えるボランティアをしていたこともあり、当時から多様性が日常で、そのなかで世界に挑むパラアスリートってすごいなと思っていました。
そんななか担当編集者が、いつか1冊に纏めたいと言っていて、アテネオリンピックを翌年に控えた2003年にマガジンハウス創業メンバーのひとりの大先輩から、「テラ、お前が思う通りの企画書を書いてみて」と言われ、社会に何が伝わったらいいかを考え抜いて企画書を作って各自動車メーカーへ。
福祉車両と障がい者アスリートのテーマでプレゼンした6社全社のご賛同をいただき、2004年1月「Tarzan特別編集 ハンディキャップ・ターザン&ユニバーサル・カー」としてムックを刊行することができました。
このときに障がい者アスリートの方々に取材しましたが、みなさん、試合会場への移動にクルマが欠かせないこと、できるだけ自分で運転していきたいと言っていました。さらにできたらチームの仲間たちと一緒に乗っていきたいと。
彼らは、仲間と一緒にスポーツすることが大好きで、仲間がいるから楽しく挑めると言っていました。この仲間とはチームメイトはもちろん、コーチ、家族、友達など応援してくれる方々もすべてです。さらに彼らの移動をサポートする福祉車両のエンジニアたちも含まれると思います。
福祉車両にどんな思いが込められているのか、第51回 国際福祉機器展へ観に行ってきました。
今年はトヨタ、日産、マツダ、スズキが出展
自動車メーカーは各社、福祉車両のアプローチが異なっていて趣き深い。
マツダは運転システムに手動運転装置を搭載。Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)は、手で直感的に加減速を行うアクセルリングとレバーブレーキを採用し、手動運転と通常のペダル運転の切り替えができ、足の不自由なかたが自分で運転したり、家族や友人と運転を交代しながらドライブが楽しめます。CX-30 SeDVは市販予定で、同様仕様のMX-30 SeDVも出展していました。
スズキは福祉車両「ウィズシリーズ」の新型スペーシアやエブリイの車いす移動車、ワゴンR 昇降シート車や、ハンドル形電動車いすセニアカー ET4Dを展示していました。リーズナブルで扱いやすい軽自動車サイズでの可能性をシンプルに紹介していました。
日産は福祉車両を「ライフケアビークル」(LV:Life Care Vehicles)と呼び、パーソナルユースから施設での利用まで、幅広いラインアップを展開しています。人気のミニバン、セレナがベースの車いす仕様車や送迎用として活躍するキャラバンの車いす仕様車を展示。車いすのまま快適に移動することを提案していました。
トヨタのウェルキャブはマルチパスウェイ
いっぽうトヨタの展示車両は<すべての「行きたい」を叶えていきたい>をテーマに
様々なサポートをする福祉車両を展示。
車いすでの乗車は、セカンドシートとサードシート位置にそれぞれ車いすで乗車できるノアや、バックドアを開けると同時にショートスロープが降りて、省スペース、短時間で乗降が可能になるシエンタがありました。
開発中の製品では、ドライビングの楽しみをサポートすべく、長年開発が続けられているキネティックシートに注目が集まっていました。一般的にはボディに固定されたホールド性のいいシートにさらにシートベルトでカラダを固定しますが、キネティックシートは、姿勢を保とうとする仕組みを活かし、背もたれ部と座面が動きながら外からの力を往なし、ドライバーの負担を軽減してくれます。
また昨年のジャパンモビリティショーでも出展されていた、アクセル、ブレーキなどの操作をステアリングに集約したNEO Steer。
以前、手だけで運転できるようにする装置をつけた市販車を運転したことがあります。ステアリングホイールの下部にリング状の装置を取り付け、両手の指で握るスタイルなのですが、何度も操作していると握力が落ちてきて、長距離は結構辛いかなと思っていました。
NEO Steerはバイク感覚でアクセル、ブレーキ操作ができるので、これなら長距離ドライブも楽だと思います。
ひと際、目を引いたのが車いす型モビリティ。以前よりコンセプトモデルとして段差や斜度のある道を走れるように開発が続いていて、今回はさらにオフロードも走れる、ランクルのような車いす型モビリティ「PROTO」が展示されていました。
紹介動画を観ていると、これは車いすが必要な人だけでなく、健常者も乗って一緒にトレッキングなどを楽しめるモビリティになりそうです。こういったCoolなユニバーサルデザインのモビリティが広まっていけば、オリンピックとかパラリンピックとか分けずに、同じルールで一緒に競い合うこともできますね。
そんなエンジニアの夢、私たちの希望を感じた国際福祉機器展でした。
写真:小松稔久/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。







