エコカーカップにFCEVクラスが新設、取材に行ったらミライで走ることに!・・・寺田昌弘連載コラム


速さだけではなく、設定されたラップタイムにいかに正確に低燃費で走るレースとして盛り上がっている「Eco Car Cup(エコカーカップ)」。

富士スピードウェイで毎年2回開催され、私も初期の頃に参戦したことがあるのですが、2010年から始まったこのレースに、今回からFCEVクラスが新設されたことを知り、取材がてら観戦しにいこうと思いました。

すると、トヨタ・ミライやクラウンのチーフエンジニアの清水さんをはじめ、FCEVに関わるエンジニアやクラウン担当の国内営業部、水素ステーションのネットワーク構築をサポートするJHyM(日本水素ステーションネットワーク合同会社)、さらに富川さんはじめトヨタイムズが参戦すると聞き、レース前日のミーティングに参加したら、「走ったほうがよりリアルな体験レポートになりますよね」と急遽1スティントだけ走らせていただけることに。

カメラだけでなく、ヘルメットなど装備もミライに積んでいたので、Eco Car CupのFCEVクラスに潜入取材みたいになりました。

ガソリン、ディーゼル、HEV、PHEVそしてFCEVで競う

参加資格は自動車運転免許証を所持していること。装備はヘルメット、グローブ、運動靴、長袖長ズボン(またはレーシングスーツ)で参加できます。

レースは60分耐久と180分耐久の2レースあり、60分耐久は規定タイムが1周4分45秒とゆっくり走りながらとにかく冷静に正確なラップタイムと燃費走行に徹します。180分耐久は規定タイムが1周3分15秒で、計算上は平均約84 km/hとツーリング感覚で走れます。

乗員は2名で助手席の選手は、タイムマネージメントをします。180分のレース内で50周以上走り、5回のピットが義務づけられています。さらに3分15秒以内で走ってしまうとペナルティが加算されます。

私たちは180分耐久に5台のミライと1台のクラウンFCEVで参戦。参加台数は79台でHEV 32台、ガソリン30台、ディーゼル5台、PHEV 2台、ハイブリッド競技車両4台と思っていたよりガソリンエンジン車が多いのが意外でした。

私はJHyMのミライに1スティントだけドライブさせていただくことになり、予選から撮影に行き、戻ってきたら77番手と聞きました。さすがに世界屈指のストレートの長さを誇る富士スピードウェイでも77台目だと最終コーナーが見えるほどです。

そこから1コーナーが見える撮影ポイントまで移動してスタートを待ちます。スタートとともに79台のマシンがストレートを走ってくる光景は圧巻です。

  • 180分のレースがスタート

カメラを置いてミライに乗ってコースイン

ひとしきり撮影を終え、ピットに戻りドライバーチェンジを待ちます。ぶっつけ本番でコースインしましたが、TGRコーナー入口、AUDIサイン、GOODYEARサイン、WAKOSサイン、LEONサインなど、決まった場所を何分何秒で走ればいいか、通過想定タイムを助手席の選手が教えてくれるので、それを参考にしながら走ります。

1周目は3分16秒でうまく通過でき、コンスタントに通過タイムを3分16秒くらいに合わせながらラップを重ねます。3分15秒ぴったりを狙おうとして、万一それよりも速く通過してしまうとペナルティとなってしまうため、タイムはそこまでギリギリを狙わず、Eco Car Cupの名の通り、エコランに徹します。

これでも国沢光宏さんや岡崎五朗さん、山本シンヤさんといったモータージャーリストなど10名で、ミライに乗って一回の水素充填で1,040.5kmを走り、世界記録(当時)を達成したメンバーのひとりとしてここは譲れません。

ストレートからTGRコーナーは、できるだけブレーキを使わず、アクセルを弱めて徐々にスピードを落としたいところですが、後続車が接近してくるとコーナリングでのライン取りが難しくなるため、絶えずバックミラーを見ながら調整します。

TGRコーナーを抜けると10%下り勾配なので、負荷も少なくうまくアクセルを踏みながら加速していきます。ダンロップコーナーまでは下りが続くので気楽に走れるのですが、その先の第13コーナー、GR Supraコーナーは登っているのでなるべく速度を落とさず、アクセルを一定にしながらスムーズに走るライン取りが重要です。

さらにこのあたりから、コントロールラインに3分15秒で通過するためにペースを上げるクルマや逆にペースを落とすクルマも出始めるので、かなり手前から先行車の動きを見ておく必要があります。

最終のパナソニックオートモーティブコーナーを抜けホームストレートに入っても気が抜けず、長い直線に惑わされ、コントロールラインが思ったより遠くに感じるので、3分15秒に合わせて最後に加速して燃費を落としてしまわないように注意が必要です。逆に想定より早めにストレートに入ったクルマが減速したりするので注意が必要です。

参加選手の多くは、ふだんからレースに出ているわけではないので、周りのクルマとの距離感は大事で、私は先行車を抜くときには、先行車の後側方車両検知に反応し、ミラーにオレンジのインジケーターが点灯したのを確認してから抜いていました。周回を重ねるごとにコツをつかみ、ちょうどいい感じに走れるようになったところでドライバー交代。無事に次のドライバーにミライを託し一安心です。

180分のレースも参加しているとあっという間に感じるほどおもしろかったです。

FCEVクラスは今回初なので、ガソリン、HEVなどと燃費計算のバランスがわからないため、独立クラスとなりましたが、参考総合順位は77位/79台中からスタートし、68位でゴール。FCEVクラスでは狙っていた燃費で1位を獲れました。

ちなみに私たちJHyM号は203.6kmを走り、水素消費量は70.0km/kgでした。とりあえずエコランでは面目を保ちました。ピットも和気藹々と楽しい雰囲気のEco Car Cup。

次回は2025年2月11日(祝) に開催予定ですので、仲間と富士スピードウェイをフィールドに楽しんでみてはいかがでしょう。
トヨタイムズでも富川アナの参戦レポートがご覧いただけますので、ぜひ観てください。

トヨタイムズニュース『F1チームとの電撃提携から最も気軽なレースまで モータースポーツ徹底取材』

  • 開発するだけでなく自ら走る。これがもっといいクルマづくりに活きてくる

写真・文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。