「平時は楽しく、有事には頼もしく」ミライオーナーとS耐のイベント広場で給電・・・寺田昌弘連載コラム
初代ミライを買ってからLUNA SEAのライブやジャパンモビリティーショーのライブ会場、TOMAKOMAI MIRAI FESTなどエンターテインメントでミライから楽器電源供給をしています。
その情報をSNSにアップしていたらミライオーナーの仲間でもやってみたいという人がいたので、昨年のラリージャパンでミライオーナーとともに愛車のミライでSSやイベント広場での給電を実施してもらいました。
そして今度はスーパー耐久シリーズでも実施。しかも第3戦 富士24時間レースのイベント会場!観客が多いモータースポーツイベントで、レースの雰囲気を味わいながら、各ブースへ給電しました。
イベント広場はカーボンニュートラルを遊んで学べる場
S耐ではST-Qクラスに水素エンジンのGRカローラやカーボンニュートラル燃料を使用したマツダ、スバル、GRのマシンが参戦し、モータースポーツでのカーボンニュートラルを目指して挑んでいますが、イベント広場ではカーボンニュートラルを遊んで学べるコンテンツが多くあります。「カーボンニュートラル科学館」と題し、レース同様こちらも継続は力なりで毎回様々なメーカーが出展し続けています。
岩谷産業は「水素エネルギー社会、始まります!」と題し、水素エンジンマシンへの液化水素充填の流れを動画やパネルで紹介し、コースを走るGRカローラがどうやって水素充填しているかなど知ることができます。
TGRのテーマは「水素社会実現へ つくる・はこぶ・つかう」。足漕ぎ発電機を漕いで水素を作り、それをミニチュアのショベルカー(といっても大人でも乗れる※100kg以下推奨)に充填してショベルカーを操縦できる、水素の一連を体感しながら楽しく学べます。
MAZDAは「排気ガスからCO2をキャッチ」。排気ガスからCO2を回収する装置をつけたエンジンRCカーを走らせ、CO2を回収していることが数値でわかるコンテンツを実施。これが実寸大で走る日が来るとエンジンサウンド好きにはうれしいですね。
大林組は「地熱水素 製造の仕組みは?」。地熱発電は昔は湧き上がる熱湯の蒸気でタービンを回して発電していましたが、沸点の低い液体に熱だけ伝導させてタービンを回す、効率がよく温泉の源泉に負荷がかかりにくい装置も北欧を中心に一般化しています。日本でも再生可能エネルギーのひとつとして可能性は大きいと思います。実際、大分県で進めている事例を紹介しています。
ヤマハ発動機は「ゆっくりでも未来へ!水素で走るスローモビリティ」。以前オーストラリアのハミルトン島で体験しましたが、マリーナからスーパーマーケットへ買い物に行ったり、島内を電動カートで移動できるのがとても便利でした。ゆっくり走るモビリティは、移動中も景色を楽しめるメリットがあります。
ヤマハではグリーンスローモビリティの試作車として水素エンジンや燃料電池で走るモビリティを紹介。電動カートではすでに観光地で実証実験が始まっていたり、これからさらにバス運行が減便されている町などでの利用が見込まれています。
これらブースを回遊しながら楽しめるようスタンプラリー形式になっているのですが、S耐ファンは慣れたかたが多く、受付でスタンプカードをもらって親子で楽しんでいる方々が多かったです。やはり継続は力だということを目の当たりにしました。
ミライオーナーたちと出店ブースへ給電
イベントでの給電といえば、大概ブース裏、よくてブース横あたりにミライを停めますが、今回はイベント広場の各ブースが向かい合っている通りの中央に停めることになりびっくりです。
今回はTOYOTA MIRAI CLUB内に「FCEV給電部」を作り、仲間と4台で給電サポートをしました。今回トヨタがどれくらい発電して、どれくらいCO2排出削減ができているかモニターで確認できるシステムを組み込んでくれました。
参加したミライオーナー仲間で、どのミライが一番CO2を削減できるか、ついつい競争心が芽生えます。
私はTGR、川崎重工、大林組、山梨のFCyFINE PLUSへ給電。クラブ代表の大谷さんはLEXUS、TGRグッズショップ、MAZDAグッズショップへ給電。田辺さんは岩谷産業、カーボンニュートラル科学館受付、イベント広場本部へ給電。森本さんはヤマハ発動機、MAZDAへ給電。LEXUSはシミュレーターを体感でき、これが電力を使うので大谷さんのミライが一番水素を使ってCO2を削減していました。
しかしランチ時間になるとイベント広場本部は給湯ポットでお湯を沸かしたりするので急に電力を使うようになって追い上げたりと、サイドバイサイドの展開になりました。結果的にはCO2削減量より、どの機器が電力を多く使うのかがわかっておもしろかったです。
また今回、給電する4台のミライのほかに、私も以前ドライブさせていただいたALL JAPAN EV-GP SERIESに参戦している飯田章選手のミライも展示。飯田選手がドライブするだけでなく、大学自動車部の部員やモデルでKYOJO CUPにも参戦していた金井宥希選手など、FCEVでレース参戦の機会を作っています。
このレーシングミライがあったおかげでレース好きの方々も足を止めてミライを観に来てくれます。一見、私たちのミライはメーカーによる展示のように思われていましたが、まわりのブースへ電気を送っていると説明すると、少し興味を持ってもらえ、さらにこれらミライが個人所有で、オーナー自らミライの解説をしているんですと伝えるとみなびっくり。
ミライというよりミライに乗っているオーナーに興味が湧き、実際日常的に乗られてどうか具体的な質問を多く受けました。FCEVやBEVは給電可能量が多いので、停電時など困ったときに電気を活用できるメリットがあります。
ミライオーナーのみなさんは、なかなか給電する機会がないと思うのですが、こうして平時に楽しく給電していれば、万一のときにミライオーナーが暮らす町で慌てず小さな発電所として活躍し、頼もしい存在になると思うので、これからも機会を見つけて、ミライやクラウンFCEVなどのオーナーとともに水素利活用の仲間づくりをしていこうと思っています。オーナーで関心がある方はぜひFCEV給電部に参加してください。
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イベント広場の目抜き通りにミライを「給電車」として設置
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後ろから見るとミライの展示に見える
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「水素で発電した電力を供給中」と表示
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ミライのボンネットを開け、FCユニットと給電機を接続して給電する
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4台のミライの発電量、水素残量、CO2削減量を可視化。この時4台の発電電力は14,860W
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ミライのオーナーが給電のことやFCEVについて解説。実に説得力がある
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4台のミライは給電車として少しでも水素温存するために、このトーヨーシステムCNRミライでホテルと会場を往復
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飯田章さんとトーヨーシステムCNRミライ
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ミライの歴代開発責任者である田中義和さん(真ん中)と清水竜太郎さん(右)も、ミライならではの活用法のひとつをオーナーがしていることを喜ぶ
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ミライにも乗られる関谷正徳さん(右から3人目)飯田章さんと今回のFCEV給電部クルーで記念撮影
文:寺田昌弘 写真:FCEV給電部
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。







