日本車もアニメも世界で愛される日本の文化。日本でもっとクルマを楽しむために必要なこととは・・・寺田昌弘 連載コラム

最近、ソニーや任天堂など日本のエンターテインメント企業の主要9社の時価総額が、自動車メーカー主要9社を超えました。90年代にセネガルのダカールのホテルでフランス語のドラえもんをテレビで観たり、アルゼンチンでスペイン語のドラゴンボールを観たりと日本のアニメは世界的に愛され、アニメを通じて日本を知る方々はとても多いです。

昨今の訪日観光客のインタビューを観ていても、アニメに描かれた場所を観光したり、主人公が食べていたものを食べたいなど、アニメが日本の文化として世界中に伝わっていてうれしかったりします。またNINTENDO SWITCHやSONY PlayStationといったゲーム機器の世界的ヒットで自宅に日本製品がある家も世界に広がっています。

私がジャパンブランドのすごさを知ったのは、96年にNPO支援活動でサハラ砂漠に行ったときのことです。いくつもの砂丘を越え、着いたある村で歓迎され、初めて日本人が来たということでうれしそうにSONYのラジオカセットを見せてくれました。「壊れなくて長持ちして助かる」と。

そしてもうひとつ、ランドクルーザー70でした。「町ではいろんなクルマが走っているでしょうが、砂漠の暮らしで遠くへ行くための手段は、ラクダとランドクルーザーのみ。生活、命を支えてくれている」と言い、私が作っているわけではありませんが、日本人というだけでとても感謝されました。私がランドクルーザーに乗り続けている理由のひとつに、この砂漠の民の言葉があります。

こうして海外でジャパンブランドのクルマが生活を支え、文化を紡ぐもののひとつになっていますが、日本ではまだまだのような気がします。その理由のひとつは、クルマを所有し、使用するには海外と比較してコストがかかるからだと思います。受益者負担の道路特定財源が2009年に一般財源化されてから16年が経ち、クルマオーナーは声を上げるべきだと思っています。

自動車税制改革フォーラムの活動にユーザーとして参画

日本自動車会議所や日本自動車工業会、JAFなど自動車関連21団体で構成される「自動車税制改革フォーラム」では、JAFが窓口となり自動車の税制に関するアンケートを実施し、毎年結果を公表しています。ぜひクルマオーナーのみなさんにも感じていることを率直に回答していただきたいです。

ここのところ話題となっている「ガソリン暫定税率」ですが、ガソリンだけでなく軽油は特例税率となり掛かっています。各税については以下となります。

  • ガソリン・軽油税

特定財源の時代であれば道路建設など受益者負担として理解できるものでしたが、2009年に一般財源化されてから、税としての論理的な説明がないまま継続されています。

私が所有するランドクルーザー70、ランドクルーザープラド、トヨエースは軽油、ミライは水素、バイクはガソリンとさまざまですが、漁船や農機、港湾、空港などで使われる場合は、様々な条件はありますが、軽油引取税が免税となるケースもあります。これであれば物流も同様に軽油引取税が免税できるケースを検討し、物流コストを下げるべきだと思っています。

燃料に関わる税制は今後、ロードプライシング(走行距離課税)、環境税(炭素に連動)、
EV充電課金に税など挙がっていますが、ガソリン車、ディーゼル車、BEV、HEV、PHEV、FCEVなど多岐にわたる動力源を考えれば、ロードプライシングや環境税は今と変わらず給油時に一定の税を払えば、燃費によって自動的にできるしBEV、PHEVは自宅での充電もあるので、車検時に払えばいいのではと思います。(走った分だけと考えたときにタイヤ購入時とも思いましたが、危険が伴いそうなので)FCEVは水素利活用を推し進めるのであれば、社会全体で水素使用量が増え、販売価格が下がってからでよいのではと思います。ただあくまで受益者負担として、道路インフラ建設や排気ガスによる環境負荷の軽減に関する税であることが前提です。

クルマ自体の税、保険、もう一度考えるべきとき

令和7年度税制改正大綱のなかにクルマに関して、①取得時における税負担軽減、②保有時における公平・中立・簡素な税負担が示されています。

①は、自動車取得税に代わりできた環境性能割、消費税がありますが、これを冷蔵庫や洗濯機などと同様、消費税のみとすべきと考えます。②は、自動車税は現状甘んじても、自動車重量税は現状の一般財源では理由がないため廃止にするのは筋だと考えます。特定財源になるのであれば一本化が望ましいと思います。

また自賠責保険の積立金問題。特別会計から一般会計に1兆1200億円が貸し出され、まだ約6000億円が返済されていません。おまけに2023年4月には、保険料の引き下げはあったものの、新たな賦課金が設けられました。

自動車メーカー等の努力により交通死亡事故は1995年に約1万名でしたが、2024年は2663名と低減しています。法規制により安全性能を高めるためにクルマには様々な機器が増え、ボディ設計にもコストが増え、車両価格が上がっているのは、安全性能を高めたことも起因していると思います。社会保険料のように強制的に払わなければならない自賠責は民間の自動車保険でカバーできるため、自賠責も役目を終えているので、自動車保険を義務化し、自賠責は廃止してもらいたいと思います。

日本でクルマが文化となるためには、メーカー、販売、整備、運輸、サービスなど約550万人が働く自動車産業に加え、私たちのようなクルマ好き、クルマが必要なオーナーもできることがあるのではと思います。

ここに述べたのは私の個人的な意見ですが、クルマオーナーのみなさん、税に対して思うことがありましたらぜひJAFが進めている「自動車の税金に関するアンケート」で思いを伝えていただけたらと思います。サハラ砂漠の民に言われた言葉を思い出しながら。

写真:茅原田哲郎/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。