クルマ、トラックを買って乗るだけで年間約9兆円の税金を納める私たち。楽しく快適にクルマと暮らすには・・・寺田昌弘連載コラム
国、地方の租税総収入の実に7.7%になるクルマ税収
参議院議員選挙も終わり、与党が非改選を含め、過半数を下回ったことで、前回参議院にて散会による見送りとなったガソリン税暫定税率廃止法案が、再度野党により国会に提出され、年内に暫定部分の税が廃止になる可能性がでてきました。
もともと受益者負担の原則から、道路整備など交通インフラに使用する財源として暫定的に付加されていましたが、道路整備に使用する額より多くなったため、一般財源化して用途を限定しないようになりました。国税、地方税とありますが、揮発油税など国税として集めてから地方に分配していますが、道路整備で不足する自治体もあり、であれば軽油引取税と同様に最初から一定の割合で地方税の目的税として直接納められれば、効率よいのではと思います。
前回は一部野党より揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例の廃止に関する法律案と軽油引取税の税率の特例の廃止に関する法律案がセットで出ていましたが、今回は揮発油(いわゆるガソリン)のみのようで、軽油引取税は該当しないので、軽油と水素で走るクルマしか持っていない私には何も変わらない法案です。物流業界もディーゼル車が主なので、ほぼメリットがない状態です。
海外を走っていてガソリンや軽油を入れると、日本は欧州より安く、アメリカより高いですが、欧州は一般的に高負担高福祉で社会保障サービスを支えるために燃料だけでなく、商品を購入したりサービスを受けたりするときの税が高いです。国によって食料品は非課税もあります。
出典:一般社団法人 日本自動車工業会「自動車関係諸税」
https://www.jama.or.jp/operation/tax/outline/index.html
日本はクルマ(車体+燃料)に9種類の税金がかけられていることが個人的に不思議でなりません。クルマを購入して仮に一切走行しなかったらテレビや洗濯機と同様、消費税のみでよいのではと思います。取得時の環境性能割、保有時の自動車重量税、自動車税、軽自動車税の意味がよく理解できていません。走行時にかかる揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税、石油ガス税は、道路整備や環境負荷への対策に必要な税だと思いますのでBEV、FCEVなども項目を作り、目的税としてかかるのはもちろんだと思います。
ガソリン税暫定税率廃止法案を採択するために、減る財源はどうするんだという議論が先に出ますが、仮に一般家庭で収入が減ったらまず抑えられる支出がないかを考えるのが普通だと思うのですが、その議論が私には見えてきません。
余談ですが愛煙家が納めるたばこ税は年間約2兆円あり、愛煙家が減少傾向にあっても税率が上がっているため、年間2兆円あたりをキープしている状況です。不思議なのは、たばこ税のなかの一つ、たばこ特別税は旧国鉄債務返済などに使われており納税者と税の使用者のつながりがなかったりします。
税金の使い道のひとつである、事業者への補助金について考えてみると、たとえば経済産業省の「GXサプライチェーン構築支援事業」。この支援事業では、大手企業の場合、補助対象となる経費の1/3以内を補助金で受けることができ、トヨタは燃料電池スタック、モジュール開発で約112.5億円、東レは水電解装置部材開発で約186.6億円、積水化学工業はフィルム型ペロブスカイト太陽電池開発で約1572.5億円の補助金が採択されています。
また、大企業とは事情は異なりますが、私はスタートップ支援や地方創生などの事業の関係での中小企業向けの補助金を調べることがあります。すでに終了した「事業再構築補助金」や、今年度より始まった約1,500億円規模の「中小企業新事業進出補助金」など、これらはごく一部であり、他にも様々な補助金制度があります。
これらの補助金は、先進技術の開発、事業の構築・拡大など、事業者にとって必要なサポートだと思いますが、先に納めた税金から再度補助金という形で受けとる仕組みなので、人も金も時間もかかります。二度手間にならない、よりスピーディーな仕組み(納税の控除など)も必要ではないかと思います。
日本は単独で見れば国民負担率(租税負担と社会保障負担の国民所得に占める割合)は年々上昇していますが、欧州の国々より低く、アメリカより高い、ガソリンと同じような順位です。法人税はドイツとほぼ近く、イタリア、フランス、韓国、アメリカ、インド、中国より高いのが現状です。海外と比較してみると税、社会保障は決して高くないのですが、大切なのは納めた税金がどのように未来への投資や安全な暮らし、安心できる社会づくりとして活用されているのかだと思います。
今回はガソリン暫定税率の話からだいぶ脱線しましたが、クルマが私たち個人だけでなく、国にとって経済、雇用などとても大切なものであることは周知の事実であり、アメリカへの輸出関税で不利になっても、内需や他国への輸出など国と企業が力を合わせ、戦略を練っていただけるのを期待するばかりです。
そのためにも今回のガソリン税暫定税率廃止法案は、今、ガソリンエンジンを搭載しているクルマを所有、使用している方々にとって価格が安くなるメリットがありますが、暫定といっていたものがやっと本当の意味で暫定になることの意義のほうが高いと思います。これを機会にクルマにかかるさまざまな税で不可思議なものが、皆が納得し、無駄のない仕組みになっていくことを期待しています。
文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。







