アメリカの関税の影響でアメリカ製造のジャパンブランドの自動車が日本でも買えるようになる?…寺田昌弘連載コラム

アメリカへの自動車関税は2.5%でしたが2025年4月3日よりさらに25%が加わり、現在27.5%となっています。これが15%になる合意をしていると報道されていますが、いつから15%になるかは未定です。

7月23日にホワイトハウスから発表されたファクトシートの自動車、工業製品の項目には、「長年アメリカの自動車やトラックに対して課されていた制限が解除され、アメリカの自動車メーカーは日本の消費者市場にアクセスできるようになります。アメリカの自動車基準が日本で初めて承認されます。さまざまな工業製品や消費財に対する幅広い開放が行われ、アメリカの生産者にとって公平な競争の場が整います。」(7月23日発表のファクトシート原文)とありますが、アメリカから日本へ自動車を輸出しても関税は0%ですし、左ハンドル車でも輸出可能でこの意味がよく分かりません。
ただわかっていることは、日本は対米貿易黒字が大きいから、アメリカから何かを輸入してバランスをとる必要があるということです。

トヨタの豊田章男会長は石破首相へ「トランプ大統領へ『トヨタにやらせる』と言っていただいて大丈夫です」とアメリカで生産したトヨタ車を日本へ輸入するだけでなく、アメリカメーカーの自動車をトヨタの販売店で取り扱ってもいいと伝えています。日本の自動車産業に関わる企業そして雇用を守るため、すごい提案です。国も安全基準はそのままで認証手続きを簡素化するようになり、アメリカ生産の自動車が輸入されることが現実的になってきました。

Jeepラングラーは日本でよく見かけますし、マッスルカーからスポーツカーになった最近のコルベット・スティングレーも魅力的です。しかしフルサイズのピックアップやSUV、キャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーターといった高級車を所有できる人も限られると思います。

そこでジャパンブランドでアメリカ製造の自動車を日本に輸入することも検討されているということで、どんな自動車があるのか、私だったらこれがいいなと思う自動車を挙げていきます。

TOYOTA

北米で販売されている車種で魅力的なのはミドルサイズ・ピックアップのタコマだったり、SUVの4ランナーですが、残念ながらタコマはメキシコ生産、4ランナーは日本生産なので該当せず。セダンはカムリがありますが、より注目するのはシエナ、ハイランダー、グランドハイランダーになります。

国内ではミニバンと言えばアルファードですが、人と違うミニバンに乗りたいかたにシエナはハマるのではと思います。
2.5リッターハイブリッド搭載のFF(AWDも選択可)で全長5,184mm、全幅1,994mm、全高1,770mmと全長、全幅はアルファードより大きくなりますが、全高は低く、昔のエスティマをワンサイズ大きくしたスタイリングです。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リヤがマルチリンク式です。プラットフォームはアルファードやクラウンと同じGA-Kがベースです。6グレードあり、7人乗りでセカンドシートがオットマンのキャプテンシートで635mmのロングスライドが可能な仕様もあります。車内が広々で日本にないスタイリングで注目度も高いと思います。現地価格は約580万~829万円(以降1ドル=147円計算)。

次にハイランダー。全長4,950mm、全幅1,930mm、全高1,730mmと日本でも扱いやすそうなサイズがよく、ボディサイドのリヤがグラマラスなスタイリングが印象的です。
エンジンは2.4リッターターボで5グレード、2.5リッターハイブリッドで5グレード、7名乗り、8名乗り、FF、AWDそしてマルチテレインセレクトなど選択可能です。現地価格は約593万~801万円。
さらにグランドハイランダーがあり全長5,120mm、全幅1,990mm、全高1,780mmとハイランダーより大きなサイズ。2.4リッターターボで4グレード、2.5リッターハイブリッド、2.4リッターターボハイブリッド(クラウンに搭載しているデュアルブーストハイブリッドシステム)の2種のハイブリッドで6グレードあります。現地価格は約601万~864万円。CVT、ECTでパドルシフトがあるグレードもあります。

  • トヨタ シエナ

  • トヨタ ハイランダーハイブリッド

  • トヨタ グランドハイランダーハイブリッド

NISSAN

SUVのパスファインダーが魅力的。昔、日本でテラノが販売されていたときに、海外名としてありましたが、アメリカに合わせて大型化しています。全長5,020mm、全幅1,980mm、全高1,800mmとランドクルーザー250に近いサイズです。エンジンは3.5リッターV6ガソリンエンジンで9ATとの組み合わせで力強い走りが期待できます。

  • 日産 パスファインダー

アメリカブランドはやはりフォード・ブロンコ

キャデラックやシボレーのGMは、ゼネラルモータースジャパンがあるので、やはり日本法人がないフォードから選びたい。なかでも圧倒的に好きな現行モデルはブロンコ。
なによりスタイリングが、昔のアーリーブロンコをオマージュした感じで気に入っています。ランドクルーザー70、250やラングラー、メルセデスGクラスのようにスクエアなスタイリングに丸目ランプは、リアルオフローダーの系譜の証明。丸目のように見えるディフェンダーもそう。

ブロンコは2ドアモデルと4ドアモデルがあり、日本に輸入であれば4ドアが現実的だと思います。全長4,810mm、全幅1,930mm、全高1,826mm(ハードトップ)とサイズ的にも日本の道路事情にも合います。エンジンはエコブーストの2.3リッター直列4気筒、2.7リッターV6、3リッターV6のラインナップがあり、トランスミッションは10ATと7速マニュアルがあります。7速マニュアルが標準で10ATがオプションであるのもユニークです。

グレードが多くあるのですが、日本での販売整備を考え2グレードに絞るとしたら、まず最上級グレードのラプター。大径37インチのタイヤを回すのに十分な3リッターV6エンジン搭載。サスペンションは特にオフロードで性能を発揮する仕様でフロントのスタビライザーはディスコネクト機能つき。さらにFOXショックソーバーでアメリカンオフローダーの王道仕様になっています。価格は現地価格 約1,180万円からで、ディフェンダーOCTAが2,105万円~、メルセデスGクラスは1,844万円~ですから、富裕層でほかの人が乗っていないSUVとして新たな選択肢になると思います。
もうひとつはビッグベンド。4ドアで2.4リッターエンジン搭載。現地価格 約595万円からとベーシックのブロンコを手に入れて自分だけの一台に仕上げるのもいいかと。

販売、整備は町いちばんのクルマ屋さんを目指して、多くの都道府県にあるGR Garageに絞り、こうすればサービスエンジニアの教育も少数で集中でき、アフターフォローもしやすいと思います。欲しい人なら県内であればどこでも行くと思いますし、ブロンコに詳しいメカニックがいてくれると安心です。
2026年はブロンコが誕生し60周年。アメリカでは60周年記念モデルも発表され盛り上がっていますし、ぜひ実現していただきたいです。

  • フォード ブロンコ ビッグベンド

  • フォード ブロンコ ラプター

あと北米で人気のSSV(四輪小型バギー)の輸入が法規制優遇され、簡易的にできるようになると、現在日本で販売しているカワサキだけでなくヤマハ、ホンダも日本で四輪小型バギーで農業、林業からレジャーまで新たな仕事、遊びを生み出してくれると期待もしています。

写真:トヨタ自動車、日産自動車、Ford Motor Company/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。