今年のダカールラリーのオートカテゴリーは、どのクラスも新たなブランドが初優勝。アルティメットクラスもストッククラスも見ごたえ満載でした・・・寺田昌弘連載コラム

  • ダカールラリー2026_Map

今年で48回目となるダカールラリー2026。

オート部門は、トヨタフォード、ダチアの3メーカーがアルティメットクラスで総合優勝を競います。ストッククラスはレギュレーションが改訂され、ホモロゲーションを取得した市販車をベースに軽量化やサスペンション改造、補強した競技専用車両で競うクラスになりました。今までのランドクルーザー一強からディフェンダーがワークス参戦することとなり、よりおもしろいクラスになりました。

オンロードでは市販車ベースのGT3、GT4のマシンが登場したことで、いわゆる箱車のレースがグローバルに盛り上がってきました。オフロードでもこのストッククラスのレギュレーション改訂により、市場で人気のSUVをベースとしたダカールマシンが出てくる可能性が拡がりました。

スーパーGTに例えれば、アルティメットクラスがGT500、ストッククラスがGT300といった感じです。GT3、GT4車両と同様にストッククラスには300,000ユーロのプライスキャップが採用され、ワークスが有利になりすぎないようになっています。

私が参戦していた90年代のパリ・ダカールラリーの時代は、ワークスは競技、プライベーターは冒険といった感じで、トップの三菱パジェロが15時くらいにゴールして、私たちプライベーターは22時くらいにビバークに到着。毎晩サハラ砂漠のなかで助け合いながら砂丘を越えていました。

ダカールラリーが南米大陸に舞台を移し、2011年、2012年にTEAM LANDCRUISER TOYOTA AUTO BODY(TLC)のドライバーとしてランドクルーザー200で参戦したときには、トップカテゴリーのフォルクスワーゲン・トゥアレグ、MINI、トヨタ・ハイラックスが14時くらいまでに到着し、私は夕方でトラブルがあれば日没後にビバークに帰ってきていました。
当時のプロダクションクラスは、外観の変更ができないため、スタックを避けるために車速を落とさずバンパーを砂にぶつけながら走っていました。

さらに2017年からSSV(小型バギー)のクラスが確立されたことで、オフロードを走るために生まれたSSVの悪路走破性の高さから、さらにコースの難易度が上がり、プロダクションクラスはランドクルーザーしか完走できなくなってきました。

FIAでクロスカントリー部門の委員だったユタ・クラインシュミットさん(2001年三菱パジェロでダカールラリー総合優勝)は、かねてよりこのプロダクションンクラスに様々なメーカーの車両が出られるようにホモロゲーションの有効期限を延期したりしていました。

しかし、アルティメットクラスやSSVクラスの性能が年々上がってきて、市販車では完走できなくなってしまうことが見えてきたことや、レギュレーションを変えれば参戦するメーカーもあることから、悪路走破性を高めた市販車ベースの競技車によるストッククラスが新設されたのだと思います。

外観の変更が可能になり、バンパー形状を変えてアプローチ&デパーチャーアングルを大きくでき、ワイドトレッド化でサスペンションストロークとドライブシャフトの角度を緩やかにでき、内装、ボディの軽量化が可能となったことで悪路走破性は上がっています。

今年のダカールはバイク、オートともに接戦ですごかった!

今年のダカールラリーは1月3日~17日の15日間、SS(競技区間)4,840kmを含む7,994kmを走破しました。

バイク部門は最終ステージで大逆転があり、トップのルシアーノ・ベナビデス選手(KTM)と2位のリッキー・ブラベック選手(ホンダ)との差はたった2秒の僅差。

オートはトヨタのハイラックスが上位を独占するステージもあれば、フォードのラプターが上位独占するステージもありましたが、13ステージ中トップが2ステージでしたが安定した走りと戦略でナサール・アルアティア選手がダチアに初優勝をもたらしました。

勝ったのはダチアですが、終始上位で安定して走るフォードが着実にマシンとチーム体制を強くしてきました。M-Sportがマシン、チーム運営を担い、WRCではTGRとヒョンデに後塵を拝している感がありますが、ダカールにフォードとして力を入れていることが結果に表れてきています。

もともとダカールラリーは欧州を中心に盛り上がっていて、北米はBAJA1000がオフロードレースの頂点でしたが、前述のバイクのアメリカ人のリッキー・ブラペック選手が南米時代のダカールから参戦し、さらに北米が主要マーケットのSSVクラスが盛り上がってきていることから、北米メディアでも注目されるようになってきました。

フォードとしてはメイン車種のF-150、ブロンコの上位モデルである「RAPTOR」をPRすることがマーケティングで活きてくると判断したのだと思います。

また今回総合優勝したダチアはルーマニアのメーカーでルノー傘下であり、リーズナブルでありながらデザイン性のよさがヨーロッパを中心に人気ですが、グローバルにブランディングするためにダカールに挑み、ワークス参戦2年目で総合優勝を勝ちとりました。

フォードもダチアもこれからさらにギアを上げモータースポーツをマーケティングに活かしてくると思います。

  • ダチア・サンドライダー/A.S.O./J.Delfosse/DPPI

    ダチア・サンドライダー/A.S.O./J.Delfosse/DPPI

  • フォードラプター/A.S.O./A.Vincent/DPPI

    フォードラプター/A.S.O./A.Vincent/DPPI

  • TGRハイラックス/A.S.O._A.Vincent/DPPI

    TGRハイラックス/A.S.O._A.Vincent/DPPI

ストッククラスはディフェンダーの圧勝

初参戦となるディフェンダーは3台体制でドライバーが一流揃い。

バイクで6回、オートで8回総合優勝しているフランスのステファン・ペテランセル選手。SSVのカテゴリーで輝かしい成績を収め、昨年はアルティメットクラスに参戦し、2日間アシスタンスなしのステージで優勝するなど若手注目のドライバー、リトアニアのロカス・バチュースカ選手。そして北米モトクロス、X Gamesなどバイクで活躍し、オートではBAJA1000、EXTREME E参戦、ダカールラリーにはSSVで参戦していたアメリカの女性ドライバー、サラ・プライス選手。

今回はプロローグからステージすべてをディフェンダーが優勝し、ワンツーフィニッシュでゴールしました。13連覇に挑んでいたTLCはロナルド・バソ/ジュリアン・メナール組が8時間34分遅れの3位に入り、ディフェンダー3台の完全制覇に分け入りました。社員ドライバーの三浦昂選手は、マシントラブルでデイリタイアもありましたが、トップから87時間42分遅れの5位で完走しました。

1979年1月14日にゴールした第1回大会。バイクもオートもクラス分けがない大会でしたが、オートで最初にゴールしたのはレンジローバーでした。第3回大会のオート部門でも優勝しましたが、以来ランドローバーが優勝することはありませんでした。

そこから45年が経ち、ストッククラスでディフェンダーがデビューウィンを飾り、中東、欧州はもちろん北米でもブランディングの効果は絶大だと思います。3年計画とのことなので、次回はランドクルーザーがどう巻き返してくるかも楽しみですし、さらに新たなブランドが参戦して盛り上がってくれることを、市販車でダカールラリーに参戦していた私は強く願っています。

  • ディフェンダー/A.S.O./J.Delfosse/DPPI

    ディフェンダー/A.S.O./J.Delfosse/DPPI

  • ランドクルーザー300/TLC

    ランドクルーザー300/TLC

文:寺田昌弘 イラスト:A.S.O.

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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