爽やかな湘南の風に包まれ、ヤングタイマーが集うひととき「ROMANTIC CARS」・・・寺田昌弘連載コラム
街中でふと自分が若いころに好きだったクルマとすれ違うとき、郷愁に駆られ、その時代を思い出すことがあります。まして自分が乗ったことがあるクルマだったらなおさらです。自動車免許を取得した1980年代から1990年代にかけ、友達や彼女とドライブに出かけ、ときにはひとりで理由もなく走ったり、クルマと過ごす時間は人生を豊かに、自分らしくしてくれます。
そんな時代のクルマが集まる「ROMANTIC CARS」が大磯で開催されると知って、私もクルマのドレスコードに合わせ、1996年のランドクルーザー70で行ってみました。
自分らしい服を着る。クルマに乗る
舞台は大磯ロングビーチ第一駐車場。東京に生まれ育った私にとって、バイクやクルマの免許を取得してよく行ったのが横浜・山下公園そして湘南の海。会場に着くと、そのときにタイムトラベルしたかのような懐かしい光景が広がっていました。
主催は「tokyo basic car club」。ヤングタイマー車のマッチングサービスからマーケティングまで独創的なカーカルチャーを生み出し、若者から古き良き時代を知る世代まで広く支持されている会社です。
CEOの南部翔也さんに会って、自分の若いころにタイムスリップしたみたいでワクワクしますと伝えると「この時代のクルマは理屈抜きに楽しいですよね。リアルにその時代を楽しまれていたのが羨ましいです」と。
確かに景気もよく、六本木のディスコに遊びに行くと、通りにはBMW318i (E30型)がずらっと並び、六本木のカローラと言われていたのを目の当たりにしたり、子ベンツと言われていたメルセデス190E(W201型)が流行ったり、国産車ではトヨタ・ソアラや日産シーマなどインパクトのあるクルマが多かった。何よりクルマがあればもっと楽しいことが体験できる時代でした。
南部さんは「スペックみたいに数値化されたものは見れば誰でもわかりますが、そのクルマがそれぞれ持つ物語に惹かれる時代が来ていると思います」とも。確かに昔は三高(高学歴・高収入・高身長)とかハイスペ男子など、人ですら数値化して見られる傾向がありましたが、価値基準が多様化し、そういった個性と差別の履き違えではなく、その人、物が今あるまでの物語、behind the scenesに惹かれるようになってきたと感じます。
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「tokyo basic car club」のCEO南部翔也さん
ヤングタイマーに浸れるひととき
集まったクルマを見て回っているなかで特に懐かしかったのが、セドリックバン(Y30型)。家業が建築金物業で、自動車免許を取ってからしばらく、いすゞ・ELFの2トントラックにしか乗らせてもらえなかったのですが、しばらくして自家用車的にあったセドリックバンも乗れるようになり、ここから仲間とドライブに出かけたり、クルマと仲間との思い出が一気に増えました。
ボディサイドにワゴン用の木目調フィルムを貼り、偏平タイヤを履かせていて、あるときはじめて会う人を迎えに行ったら「サーファーですか?」と聞かれて、クルマはオーナーを映す鏡みたいなんだと思いました。
ここに集まったヤングタイマー車とオーナーを見ていると、趣味嗜好や職業まで想像できてしまうほど、ライフスタイルが浮かんできます。
ドライブインシアターにこだわりの逸品も
1990年代、クルマに乗ったまま映画が観られるドライブインシアターが全国20カ所近くでき、現在は期間限定で開催されることはありますが、最後の常設会場だったのがここ大磯ロングビーチ駐車場でした。今回1日限りですが、コンパクトなドライブインシアターを企画。「過ごす空間としてのクルマ」を体験できる粋なコンテンツです。上映は15分程度のショートフィルムで、車内で話しながら、食べながら、周りを気にせず自分だけの空間で映画が観られる特等席は格別です。
またヤングタイマー車のころは、車載工具も充実していましたが、それを今も作り続けているTOMOE(株式会社巴製作所)が、ハンマーひとつで自分だけのチャーム作りをさせてくれプレゼントしてくれました。ふと後ろに展示してあるものを見ると、ふだんはレンチとして使い、キャンプの時はレンチ3本を脚にした五徳になる収納便利なアイデアグッズを販売していて、サイズが合えば買いたかった心くすぐるモノでした。
そしてランドクルーザーの1980年~1990年代では40系、56型、60系、70系、80系、100系が販売されていた時代。誕生から75年が経ち、世界中で数々の物語があるクルマで、オーナーのランクルへの思い入れも深いクルマ。その思想や世界観をライフスタイルプロダクトとして展開する公式コレクション「LAND CRUISER OFFICIAL ITEMS」の展示、販売もしていました。会場にも様々な型式のランクルが集まり、ランクル談義に花咲かせていました。
「クルマは移動手段ではなく、ロマンの象徴である」をテーマに初開催された「ROMANTIC CARS」。ファッションなど流行は20年周期と言われますが、21世紀に入り社会や環境、文化を大切にしながら自分らしく行動するエシカルな考え方が定着し、ヤングタイマー車を自分のライフスタイルに取り入れるのがゆっくりとムーブメントになっていると感じます。
ひょっとしたら古き良きを楽しんでいるのではなく、「Back to the future」今、この時代に戻ってきたのではと思えるぐらい自然な光景に包まれながら楽しいひとときを過ごせました。
写真/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。







