GAZOO.com 座談会 その4 「平成5大クルマニュース」株式会社三栄 渡辺氏
まずはワタシの自己紹介から。株式会社三栄という、自動車関連メディアを中心とする総合コンテンツクリエイティブカンパニーで、現在はクルマのカスタマイズやチューニング、輸入車、ドライビングテクニック・・・といった内容の雑誌やウェブサイトのコンテンツやイベントの制作を行う部門の局長をさせていただいております。
この20年ほどの間に自動車を取り巻く環境は大きく変化しました。「サーキットを走る!」「峠を攻める!」といったアクティブな「自動車趣味層」は残念ながら総量的には減っています。
一方で「キャンプ」や「車中泊」といったカテゴリーにおいては、逆に非常に盛り上がっています。時代時代でクルマの使い方は変わっていくものです。そうしたニーズをいかに感じとり、ユーザーの皆様により「刺さる」&「有用」な情報をお届けするのかが勝負だと感じている今日この頃です。
ということで、GAZOO編集部より平成5大クルマニュースを書いてほしいという指令をいただきましたので、ここでは個人的なランクを述べさていただきましょう。
第1位 トヨタ86&スバルBRZの誕生(平成24年2月2日)
- スバルBRZのSTIバージョンは、メーカーチューンドの質の高さを知らしめた。
スポーツカーの開発を自動車メーカーが敬遠する風潮が強まってきた時代のなかにあって、「いいクルマをつくろうよ!」との豊田章男社長の音頭で実現したと言われているトヨタ86、そしてスバルBRZ。逸話はいろいろありますが、今でも印象に残っているのは、チーフエンジニアの多田哲哉さんが当時語っていた「86は、アイフォーンのような存在になるべきだ」との言葉です。
スポーツカーというと、どうしても「走り」の部分だけがフォーカスされてしまいますが、「86はもっとユーザーが自由に楽しめるクルマであるべきだ」という多田チーフエンジニアからのメッセージでした。
実際、走りのクオリティはもちろんのこと、「峠」「カスタマイズ」「写真」「グッズ」「ミーティング」といったカルチャーをトヨタ自動車がユーザーに提案し、積極的に自社展開しました。そして、各販社が展開した「AREA86」には多くのユーザーが集うこととなりました。また、全国各地では様々なユーザー発信型のミーティングが開催され、そのカルチャーは一気に花開いたのでした。
弊社においても、チューニングベースとなる新しいクルマがなかなか現れず、ビジネスはもちろんカルチャーとしての危うさを感じていました。さらには東日本震災後の自粛感や不景気感のなかにあって、86&BRZの登場はスポーツカーのカルチャーに再び強い明かりをともしてくれたと思っています。
- 広島の平和通りでゴールデンウイークに開催される「フラワーフェスティバル」では、有志の音頭で毎年86&BRZのパレードランが行われている。
第2位 佐藤琢磨がインディ500を制覇!(平成29年5月28日)
いろいろレースを見てきましたが、佐藤琢磨選手が勝ったインディ500の最終ラップほど興奮したシーンはなかったのではないかと思っています。そのとき脳裏に浮かんだのは平成24年(2012年)のインディ500最終ラップ。ダリオ・フランキッティをパッシングしようとターン1でインに入った琢磨選手。突如姿勢を乱し、ウォールに激突…。
そんな悪夢があったからこその、5年後の歓喜!表彰式でミルクを飲む日本人選手を見ることができた幸せ。そんな佐藤琢磨選手もいまや40歳を過ぎましたが、令和2年はチャンピオン獲得も夢ではありません。頑張ってほしいと思っています。
第3位 R33GT-Rが東京オートサロンでアンヴェイル(平成7年1月6日)
- 毎年多くの来場者と出展社でにぎわう東京オートサロン。自動車メーカーの出展は、日本のカスタマイズシーンを大きく変えた。
今や自動車業界における新年最初の一大行事として認知されることとなった「東京オートサロン」ですが、かつては「暴走族と違法改造車の集まり」などと誤解されてもいた、どちらかというとアウトローなイベントでした。
一方で、自由で創造性あふれるイメージを鋭く察知した、自動車メーカー系のカスタマイズ部門が車両の展示・出展を始め、そのあたりから潮目が変わってきたと認識しています。
そんな勢いを一気に加速させたのが、東京オートサロン会場内での「日産スカイラインR33GT-R」のワールドプレミアでしょう。続くR34GT-Rも同様にオートサロンでアンヴェイルされました。その後、自動車メーカーが積極的に東京オートサロンを活用する動きは強まり、各社が競って魅力あふれるブースやコンセプトカーを展示・展開しています。
日本のカスタマイズやチューニングが、カルチャーとしてメジャー化するきっかけとなった大きな出来事だったと考えています。
第4位 本田宗一郎逝去(平成3年8月5日)
- 発売直後からユーザーの結束度が高かったS660。ホンダの魂、ここにあり。
ホンダがアイルトン・セナ、ナイジェル・マンセル、アラン・プロストといった名だたるドライバーを擁し、F1で大活躍していたのは昭和から平成をまたぐ、日本が好景気に沸騰していたころでした。セナが全幅の信頼を寄せていた本田宗一郎。その死を悲しむセナの涙。あのときの映像は強く記憶に残っています。
昭和の出来事だと勘違いしていましたが、平成3年の出来事だったんですね。強烈なカリスマを失ったホンダは、その後F1を撤退と復活を繰り返し、現在、再びF1のトップスピードを取り戻し、輝きを見せてくれています。軽自動車販売の好調ぶりが強調されますが、NSXやシビックタイプR、S660といった骨のあるスポーツカーも作り続けてくれています。
これからも、モータースポーツとともに楽しく魅力あるクルマを作り続けていただきたいと思っています。
第5位 伊勢湾岸自動車道の開通(平成24年4月14日)
- 足しげく通った鈴鹿サーキット。東京からの自走はあまりうれしくない年になってしまいました。
さすがに最近は身体に応えるのでやめるようにはしていますが、編集者になりたてのころは、東京名古屋間のクルマ移動は当たり前。鈴鹿サーキット日帰りなんていうこともありました。長い長い静岡県に辟易しながらも、なんとか耐えながら頑張っていたものです。
そんな移動を楽にしてくれたのが伊勢湾岸自動車道の開通でした。舗装したての路面。広く走りやすい3車線道路。それまでは、東名自動車道から鈴鹿方面に行くためには名古屋の中心部をぐるっと回りながら四日市方面に南下していたルートでした。これが一気にショートカット。場合によっては1時間程度短縮できたと記憶しています。若き編集者時代の思い出です。初めて通ったときは本当に感動しました。
その後、新東名の開通によりさらに楽になったような気もしますが、なかなかノンストレスな旅路とはいきません。社用車ははやく完全自動運転にならないものかと日々願っております。
長かった平成時代。いろいろな出来事がありました。令和も平和で楽しい時代となりますように。そして、クルマの文化どう変化し、発展していくのか楽しみです。
(文・写真:三栄 インタラクティブカーメディア局 渡辺文緒)
GAZOO.com 座談会 2019
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