【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第3話#24

第3話「Twitter男を調査せよ!」

5th​ ヨタハチに残されたもの。
#24

保険会社から戻ってくると、次の調査の下調べを始めた。没頭していたけど、ふとスマートフォンを見ると、留守電にメッセージが残っているのに気がついた。
​相手は、ヨタハチを預けている旧車ショップのオーナー、水野だ。時刻は、もうすぐ21時。着信があったのは15分前だ。
フロアから出て、廊下でメッセージを確認する。
<あ、ミキちゃん? 俺、水野だけど、遅くにごめんね。ちょっと話したいことがあるから、また明日にでも、電話するわ>
なんだか慌てている様子だった。
いったい、なにがあったのだろう。
預けているヨタハチになにかあったのかもしれない。ちょっと調子が悪いだけかと思っていたが、もしかして深刻な問題があって、修理に莫大なお金がかかるとか、そういうことだろうか。
電話を折り返すとすぐに水野が応答した。
<あ、忙しいところ悪いね>
<いいえ、こちらこそ、着信に気づかずにごめんなさい>
<いま、時間は大丈夫かい?>
<はい、どうしました? もしかして、ヨタハチになにか問題があったのでは……>
少し間が開いた。
<ガタがきてるけど、なんとかなると思う。それより、実はさ、ヨタハチの中からミキちゃん宛ての手紙が見つかったんだ>
<え?>
<ミキちゃんのお父さんからの手紙だ>
耳を疑った。思わず「ウソでしょ」という言葉が、口をついて出ていた。
<いや、ウソみたいな話だけど、本当なんだ。もちろん、開けてはいない>
動揺を隠せなかった。なにが書いてあるのだろう。見たいけど、なんとなく、見るのが怖い。
<今週末にでもさ、取りに来るなら待っているけど、もし急ぐなら、明日にでも、速達で送ろうかと思ってさ>
怖い気持ちもあるけど、何が書かれているのか、ものすごく気になる。やっぱり、すぐに見たい。
<水野さん、今夜、この後、お伺いしてもいいですか?>
<え、今からかい?>
驚きの声が返ってきた。そりゃあそうだろう、もう21時を過ぎている。きっと、迷惑だ。
<はい、ダメですか?>
<いや、ダメじゃないけど。何時くらいに来るの?>
<今から急げば、1時間以内には到着できると思います。水野さん、もう帰ってしまいますか?>
間があった。悩んでいるのだろう。
<いや、ミキちゃんが来るなら、うん、じゃあ、待っているよ>
<ごめんなさい。急いで行きますから>
今夜は手紙を見ないまま眠れる気がしない。わたしは慌てて帰り支度を始めた。

(続く)

登場人物

上山未来・ミキ(27)
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。

周藤健一(41)
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。

桜川和也(29)
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?

成田真由子(27)
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。

河口仁(58)
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。

河口純(30)
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。

小説:八木圭一

1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。

イラスト:古屋兎丸

1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001

イラスト車両資料提供:mizusawaさん

編集:ノオト

[ガズー編集部]