【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第4話#3

第4話「スパイ事件を調査せよ!」

1st​ インスペクションに訪れた危機。
#3 スパイを探せ​

わたしは周藤とともに、東京湾岸に面した城南島海浜公園の駐車場にいた。
​今朝起きた、会社に対する嫌がらせ。そして、周藤から打ち明けられた話に戸惑いを隠せない。会社内にスパイがいるかもしれないというのだ。
「ちょっと、信じられませんが……」
わたしたちの仕事は、探偵業だ。いままで、対象者を疑って調査を行ってきた。けれど、会社内の人を疑うのはやはり、苦しさを伴う。
仲間を疑うなんて、わたしにできるのだろうか。
「信じられないことは、よく起こるんだ」
周藤の言葉には重みがある。
うちの会社に限らず、顧客情報の流出事件は頻発している。お金のために情報を売るというのは、直接的に相手を傷つけることより、ハードルの低いことなのかもしれない。
「俺はどうやら、そいつに狙われているらしいからな。俺がこそこそ動くのはまずいが、お前なら、もしも相手が気づいてもいいだろう」
周藤の言葉に、またしても耳を疑った。
「わたしに内部調査しろということですか?」
周藤が目を細めて頷いた。
「社長の了解ももらってる。それに、スパイと言っても、恐らく、相手は素人だ」
犯人像が見えているような口ぶりだった。
「それは、なぜですか?」
「手口ががさつなんだよ。本当のプロなら痕跡を残さない」
周藤はハンドルに両腕をついて寄りかかった。
「盗聴器はそのままにしてある。まあ、様子見だな」
「気づいていないことにして、泳がせるってことですね」
周藤は何かを企むような目をしている。
「わたしはどうやって動けばいいですか?」
「好きに動いてみろ」
まさか、そんなことを言われるとは思いもよらなかった。
「それで大丈夫なんですか?」
「ああ、フェイクだからな。お前が捜査していると見せかけて、プレッシャーがかかればそれはそれでいい」
なんか、それ、デジャブ感がある。
「わかりました……。協力者を使うのもありですか?」
周藤が黙り込んだ。なにかを考えている様子だ。
「当たり前だが、信頼の置ける人間にしろ。せいぜい、1人か2人だ」
「承知しました。やれるだけのことをやってみます」
わたしがきっと、犯人を見つけ出してみせる。

(続く)

登場人物

上山未来・ミキ(27)
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。

周藤健一(41)
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。

桜川和也(29)
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?

成田真由子(27)
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。

河口仁(58)
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。

河口純(30)
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。

小説:八木圭一

1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。

イラスト:古屋兎丸

1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001

イラスト車両資料提供:MEGA WEB

編集:ノオト

[ガズー編集部]