【ミュージアム探訪】プジョーミュージアム(後編)

プジョーの歴史を語る上で欠かせない往年のコンペティションカーの数々。1937年のルマンカー、ダルマット(左)と、アフリカ各地のラリーで戦績を残した1978年の504クーペ(右)。
歴代プロダクト展示から、女性用ペチコートとミシン。
第2次大戦後に製造が開始された「プジノックス」の銀歯。
ライオンが商標として制定される前、ロゴマークには「象」も使われていた!
レストランにてご当地グルメのモンベリアールのソーセージをいただく。なお、テーブル上のペッパー&ソルト・ミルがプジョー製でないので理由を聞くと、「記念に失敬……つまり持ち帰ってしまう人が数々いたため」らしい。
ミュージアムショップのスタッフ。

プジョー博物館「ミュゼ・ド・ラヴァンチュール・プジョー」を語るうえで、クルマとともに欠かすことができないのは、204年にわたる歴史のなかでプジョーが手がけてきた、自動車以外の多様な品々である。それらの展示点数は、なんと500点に及ぶ。
「プジョーの塩・コショウひきや自転車だろう。ウチにもあるよ」というあなた、たしかにそれらも含まれているが、「そんなの知ってるよ」と決めつけるのは早い。

前編で記したように、プジョーの起源は製鋼所であったが、19世紀社会の近代化とともに、鋼(はがね)を用いたありとあらゆるアイテムを、プジョーブランドのもとに市場に供給しはじめる。
ノコギリなど工具やバネの生産を足がかりとして、1855年には、女性用ペチコートのフレーム製造まで開始している。従来クジラの骨が使われていたのに対して、お得意の鋼材を使ったものだった。
1867年にはミシンにも進出。さらに第2次大戦後になると「プジノックス」の商標で、なんと医療用銀歯まで手がけ、それは1960年代まで生産が続けられた。
館内にはそれらの実物にあわせて、戦後フランス人の生活が豊かになるのにともない次々と投入された、掃除機、自動食器洗い機といった電化製品まで展示されている。
今日存在する自動車メーカーにおいて、ここまでさまざまな製品を手がけてきたのは、プジョーをおいてほかにないだろう。

上級トリビア愛好者なら、さらにさまざまなトピックを発見できる。
例えば、プジョーの有名なライオンのマークは地元フランシュ-コムテ地域圏の旗にヒントを得たものだが、1850年に商標として制定される前には、なんと象のマークもあった。実際、家庭用品のコーナーでは“象印”のプジョー製コーヒーミルを見ることができる。なお、このミルを製造していた1832年創立のポン・ド・ロワード工場は、今日までPSAプジョー・シトロエンの工場として存続している。
また、長年プジョーがスポンサーを務め、マークにもライオンが用いられているフランス1部リーグのサッカーチーム「FCソショー」のアイテムも展示されていた。

見学のあとは食事だ。レストランはミュージアムの中央、一段高いところにあって、展示車を眺めながら食事を楽しめる。他の主要メーカーの博物館よりこじんまりした造りゆえのチャームポイントだ。そこではフランスの加工肉製品でも指折りに有名な、モンベリアールのソーセージ料理を味わいたい。

ミュージアムショップも充実しており、歴代のプジョー車やモータースポーツ部門に関連したグッズが豊富だ。お約束のペッパー&ソルト用ミルも多彩なバリエーションが用意されているうえ、ライオンのぬいぐるみも取りそろえられているので、一緒に来たパートナーも飽きさせる心配はない。

ついでに言うと、プジョーミュージアムは結婚披露宴にも館内を貸し出している。プジョー・エンスージアストのカップルなら、ふたりのゴールとしてこれ以上ふさわしいステージはないだろう。

(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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[ガズ―編集部]