わたしの自動車史(後編) ― 御堀直嗣 ―
私にとって初めての新車は、オペル・オメガです。その前に、まず、憧れのコルベットを手放した顛末(てんまつ)をお話ししなければなりません。
1990年代初頭、自動車評論家の先輩である舘内さん、雑誌編集者の村松さんと、アメリカ・フェニックスでの電気自動車レースに参戦しました。その資金の一部となったのです。当時、舘内さんは所有していたジャガーを売り、村松さんはホンダNSXを売り、そして私はコルベットを売って、渡米したのです。これが、1994年に日本EVクラブを設立する発端となります。
それで、オペル・オメガですが、これは年式遅れになる寸前の特別価格で入手しました。知り合いから「なぜメルセデス・ベンツやBMWにしなかったのだ」と聞かれましたが、内心、<あなたはオペルに乗ったことがありますか?オペルのよさを知っていますか?>と、問い直している自分がいました。
単に日本で名の知られたブランドに頼らなくても、世の中にはまだほかにいいクルマはあるんですよ、と、本当は言いたかったのです。しかし相手が年上の方でしたので、「安かったので……」と、答えをはぐらかしました。
実際、当時カーグラフィックの副編集長だった方には、「オメガの直進安定性はメルセデス・ベンツEクラス以上」と、お墨付きを頂きました。鈴鹿サーキットや、仙台にあるサーキットへ一人で運転していっても疲れ知らずで、そのまま仕事に打ち込むことができました。この時代が、私のバブルです。
オメガへの想いを残しつつ、乗り換えたのは2代目スバル・レガシィの4ドアセダンです。あのスタイルが大好きでした。そして、14年間も乗り続けたのです。ただ、燃費の悪さには閉口しました。それでも、ガソリンをまき散らしていたのでは、自動車の媒体関係者として、またEVクラブの副代表としても、自分を許すことはできません。10km/リッターを割らない運転を心掛けました。
そして、いまのトヨタ・プリウスです。実は、1996年に発売されたダイハツ・ミゼットIIを電気自動車に改造した、コンバートEVも一時持っていました。EVが欲しくてたまらなくなったからです。ところが当時は鉛バッテリーしか手に入れられず、一充電での走行距離は50kmほど。使い道がなく、筑波大学の学生さんに乗ってもらっていました。筑波学園都市は、クルマや自転車がなければ生活できない、アメリカ型の都市です。そこで、50kmしか走らないコンバートEVが、大活躍したのです。
次に私が欲しいのは、やはりEVです。先日、テスラ・モデルSを借りて東京~那須を往復しました。往復400km強の距離を、無充電で走れてしまうのです。エンジン車に乗る意味を失わせるEVです。
電気自動車は、快適で、楽しいですよ~。
早くEVオーナーになりたい。それが願いです。
【編集協力・素材提供】
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[ガズ―編集部]
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