トヨタ・セラ (1990年~) 名車?迷車?特集 -ちょっと懐かしい迷車たち1話

第1話 トヨタ・セラ (1990年~)

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日本の自動車工業の高い技術力は、ときとしてモーターショーに出展されたコンセプトカーやデザインスタディーを、ほぼそのままの形で製品化してしまう。そうした「市販ショーカー」とでもいうべきモデルの1台が、1990年にデビューしたトヨタ・セラである。

生産:1990 ~1994年

セラの最大の特徴は「グラッシーキャビン」と称したガラス製の巨大なキャノピーと、それを切り取るように跳ね上がるガルウイングドア。「全天候型オープン」というキャッチフレーズのとおり、金魚鉢のようなドーム越しに車内から見上げると、見慣れた風景でさえ普段とは違って映るような、楽しく夢のあるクルマだった。

ベースとなったのは、当時トヨタのボトムラインを支えていた4代目スターレット。ガラス製ルーフによる重量増に対応して、エンジンはスターレット用1.3リッターに代えてカローラなどに使われていた1.5リッター直4DOHC16バルブを搭載。また、温室効果対策としてエアコンも上級車用を積んでいた。

当時、巨大なガラス製キャノピーを商品化した生産技術の高さに驚かされたが、それをさらに増幅したのが価格である。160万円からというセラの車両価格は、ベースとなったスターレットの最上級グレードと30万円も違わなかったのだ。ガラスを多用したボディーはもちろん、内装までほとんどすべてを専用設計して、この低価格。こんなにコストのかかった遊びグルマを出血価格で出せたのは、世界中でトヨタだけ、それもバブルに浮かれていたあの時代だけに許されたことだろう。環境問題や経済状況の厳しい現代では、まず作れないキュートなドリームカー、それがセラである。