無料カーナビアプリ「moviLink」を実力診断! 実走して定番3アプリと比べてみた

トヨタの車載カーナビと同等のエンジンを持ちながら、ほとんどの機能を無料で使えるカーナビアプリ「moviLink(モビリンク)」。どんな特徴があるのかは前編の記事をご覧いただければと思いますが、今回は実際のドライブに使ってみてその実力を確かめていきます。せっかくなので、ライバルとなるカーナビアプリも同時に動かしつつ、それらとの違いも見ながら、moviLinkのポイントとなるところをチェックしてみましょう。

なお、比較に用いたのは、無料の地図アプリ「Google マップ」と、同じく無料の「Yahoo!カーナビ」、そして有料アプリの「カーナビタイム」の3つ(いずれも設定は初期状態のまま)。いずれも多くのユーザーに支持されている人気アプリです。案内の仕方、交通状況の表示内容などに、はたしてどんな差が出てくるでしょうか(※検証結果は2022年5月実施時のもの)。

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現実的なルートで、目的地までしっかりナビゲーション

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チェックポイント1 ルート検索

何はともあれ、走り出す前にはルート検索しなければいけません。まずは出発地点(江東区若洲)から「羽田空港第3ターミナル駐車場(P5)」に向かってみることにしました。名称をキーボード入力して候補表示し、目的地として設定します。この辺りはナビアプリによって地図・住所情報の持ち方が異なるため、違った名称で候補が表示されることもありましたが、どのアプリでも問題なく「羽田空港第3ターミナル駐車場(P5)」を設定できました。

目的地がさほど遠くなかったせいか、候補として示されたおおまかなルート自体にあまり違いはありませんでした。ただ、moviLinkを含む3アプリは一般道を通るルートを第1候補として挙げたのに対し、Yahoo!カーナビだけは時間優先の有料道路を通るルートを示しました。もちろん一般道を使うルートも候補として挙がっているのでワンタッチで変更することもできますが、さっそくアプリごとのちょっとした性格の違いが垣間見えるようです。

チェックポイント2 目的地(ナビ終了地点)

目的地周辺を細かく見てみると、moviLinkはデフォルトで駐車場の入口が選ばれ、そこまで正確にルートが引かれていました。Yahoo!カーナビは駐車場の建物中央が目的地として設定され、駐車場のゲート手前までナビする形に。Google マップはさらに奥の駐車場ゲートの先まで案内しました。ここまでナビしてくれれば迷うことはないでしょう。

一方、カーナビタイムはゴール地点こそきちんと「P5」を示したものの、案内はなぜかそこから離れた第2ターミナルあたりで途切れる形になっていました。おそらくは「P5」の正確な出入り口情報を持っていないためと思われます。この場合は、目的地を施設中心部にするのではなく、出入り口があると思われる付近の道路などに設定するのがお勧めです。

チェックポイント3 経由地を設定

経由地を設定した場合はどうなるでしょうか。六本木の東京ミッドタウン周辺から、ちょっと意地悪して東京駅の駅舎中心を経由地に設定し、湾岸方面へと至るルートを設定してみると……ここでもアプリ間の差が出てきました。

moviLink、Yahoo!カーナビ、カーナビタイムの3つは経由地となる東京駅前のロータリーをしっかり通過しているものの、Google マップはロータリーに入らず、駅をかすめる形で通過するルートを示しました。通常、駅を経由地に設定するときは人の送迎を目的としていることが多いと思われるので、クルマを一時停車できるロータリーなどを案内するのが親切です。Google マップを使うときは、ルート設定に若干クセがありそうなことを覚えておくといいかもしれません。

「先取り」してくれるナビ音声で、安心して初めての道を走れる

  • 目的地に向けて走行開始。右から2番目がmoviLink

気づき1 moviLinkはシンプルで使いやすい

それでは出発してみましょう。こうして4つのアプリのナビ画面を見比べてみると、moviLinkのシンプルさが際立ちます。要所の交差点や地名といった最小限の情報のみ画面に表示し、できる限り余計な情報は省いて、マップを広く見せているようです。スマホを縦置きしているときは、進行方向のかなり先の方まで走行ルートが見えるので、どの辺りで右左折しなければいけないかがイメージしやすくなっています。

交差点などの分岐に近づくと徐々にマップが拡大し、直前になると車載器と同じように走行レーンと進行方向を示すイラストを表示して、分岐までの具体的な距離をゲージでも表現してくれます。車載器だとイラスト内に標識も表示されますが、moviLinkでは見やすさ重視の観点からか省かれています。けれども、パッと画面を見てすぐに行き先を判断できるという意味ではmoviLinkの方が好都合とも思えます。

ナビ音声はトヨタの車載器と同じ聞き慣れた女性の声。スマートフォンの内蔵スピーカーから再生していると音質が少し低いように感じるときもあるものの、違和感はありません。なにより、一般道でもしばらく道なりに進む場面では、数km先の分岐についても前もって教えてくれるほどの「先取り」感があり、安心できます。

この「先取り」するような案内は、分岐が連続するときも同様です。ほかのアプリよりもワンテンポ早いタイミングで教えてくれることが多く、例えば2つ先の分岐を右左折するにあたり、あらかじめどのレーンにいた方がいいのか、という判断がつきやすくなっています。

ナビに頼りたくなるときというのは、大抵は初めて訪れるような慣れない場所を走るなど、先々のアクションを予測しにくいシチュエーションです。その意味でmoviLinkは、シンプルで見やすい画面であることとあわせ、知らない道でも走りやすくしてくれるカーナビアプリと言えそうです。

気づき2 Yahoo!カーナビは実用性重視

ほかのアプリもそれぞれに個性が光っています。Yahoo!カーナビは道路や記号などの配色、フォントがくっきりしており、分岐イラストで標識内容を大きめに表示するなど、情報量と見やすさのバランスがうまく取れているように感じます。高速道路走行時にはインターチェンジやジャンクション、SA/PA、料金所などの地点情報のみを表示することに専念し、マップをあえて表示しないという潔い画面モードに切り替わるのもおもしろいところ。とにかく実用性を重視していることがうかがえます。

気づき3 カーナビタイムはリッチなインターフェース

カーナビタイムのインターフェースは、こだわりが感じられるデザインで、リッチなカーナビというイメージ。マップ表示や案内の仕方も一般的な車載器に近づけているようで、こちらも車載器に慣れた人に違和感はなさそうです。高速道路では地点情報と同時にマップも見られる2画面表示に。ナビ音声では単に分岐を案内するだけでなく、風光明媚な地点を通過するときにすかさず教えてくれたりもするので、観光地のドライブは楽しさがアップしそうです。ただ、リッチなインターフェースになっている分、スマホアプリの標準的な作りからは外れているところもあり、使いたい機能を見つけるのに最初は時間がかかりがちなのがネックでしょうか。

気づき4 Google マップは助手席の人にサポートしてもらいながら使いたい

Google マップは、やはり汎用地図アプリであることから、案内の仕方は決してドライブに最適化されているとは言えません。日常の地図ツールとして利用することが多いのでなじみやすさはあるものの、全体的に文字情報で案内することが多く、ドライブ中に使うものとしてはやや難を感じる部分もあります。音声でナビしてくれるタイミングも交差点など最小限で、どちらかというと助手席の人にサポートしてもらいながら使うツールという印象です。

トヨタ独自のプローブ情報で最新の正確な交通状況を把握

チェックポイント4 渋滞表示

そんなふうにアプリごとに一長一短はありますが、moviLinkならではのメリットがよりはっきり感じられたのが、渋滞表示でした。moviLinkは「VICS」(道路交通情報通信システム)に加えて、トヨタ独自の「Tプローブ交通情報」にも対応しており、これら2つの情報をもとに交通状況を把握するようになっています。Yahoo!カーナビとカーナビタイムもアプリ独自のプローブを利用していますが、Tプローブは車載ナビを搭載したトヨタ車からリアルタイムにデータを収集しているので、母数の点で有利と言えます。

例えばほかのアプリではこの先渋滞が続いているかのように表示されていた道路でも、moviLinkの方では流れている、ということがありました。それを裏付けるかのように、該当地点に差し掛かる直前、下り坂になっていて遠くまで見通せるポイントから眺めると、実際の交通状況としてはmoviLinkが表示していたとおりだったのです。これぞまさしく、リアルタイムにトヨタ車から情報収集して分析している「Tプローブ交通情報」の強みでしょう。

チェックポイント5 ディスプレイオーディに表示

  • moviLinkはApple CarPlayやAndroid Autoに対応。車載器の画面にナビ画面を映し出せる。安全に配慮してスマホ側のmoviLinkアプリは操作できなくなる

改善してほしい部分はいくつかあれど、実用度は十二分

ここまでmoviLinkのいいところをたくさん紹介してきました。しかし、機能面で言うとまだ弱く感じるところもあります。例えば、一般道と高速道路とで画面表示に差がなく、ICやJCT、SA/PAなどにいつ頃着くのかが分かりにくいのも課題と言えます。

ただそれでも、実用度の高いこれほどのナビ機能をずっと無料で使えるのはうれしい限り。歴史としてはまだ浅いカーナビアプリではありますが、今後ユーザーの要望などに応じてどんどん機能アップしていくことも期待できます。ぜひ皆さんも試してみて、自分に合うカーナビアプリかどうかを確かめてみてください。

moviLinkダウンロード

moviLink(Android版)
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.toyotaconnected.tlbsapp

moviLink(iOS版)
https://apps.apple.com/jp/app/id1544411161

[GAZOO編集部]