【ラリージャパンを1000倍楽しもう!】梅本まどかのラリー基礎講座 新城ラリー参戦から学ぶ「ラリーの用語」後編
こんにちは! 梅本まどかです! 今回は前回に引き続き、3月13〜14日に開催されたJAF全日本ラリー選手権第2戦『新城ラリー2020』に参戦して、私が実際に体験した流れに沿って登場するラリーの用語やルールをご紹介します。
前回は競技前の準備や受付などから練習走行までの内容をご紹介したので、今回は競技の様子を中心にお伝えしていきます。少しずつですがラリーに関する知識を増やして、一緒にラリージャパンを楽しみましょうね!
少し前の話になりますが、NAGOYAオートトレンドで行われたラリージャパントークショーで「新城ラリーという実績があったから愛知・岐阜での開催が決まった」というお話を伺いました。
実際、私は去年の全日本ラリーに何戦か参加したのですが、なかでも新城ラリーは別格で、イベントがたくさん行われていたし、来場者数も多くて本当に驚きました!
そんなこともあり、今年も新城ラリーに参戦できることをとても楽しみにしていたのですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、残念ながら今年は無観客での開催となってしまったのです。
【ラリー基本用語】ドライバーズブリーフィング/ドライバーズミーティング
ドライバーズミーティングは、基本的なラリーの注意点、特別規則書や公式通知にもまだ反映されていないリアルタイムな情報などを参加者に伝えるミーティングです。
質疑応答の際に他の人が質問したことで自分が気付かなかったポイントの確認ができることもあったり、参加者や関係者とご挨拶や情報交換ができたりと、すごく重要な場所です。
ところが、新城ラリーの約1週間前に公開された特別規則書には、いつもだと金曜日にあるはずのドライバーズミーティングや開会式の表記が見当たりませんでした。
セレモニアルスタートも中止となり、人が集まらずに運営する方法をいろいろ考えてくださっていると感じる一方で、「ドライバーズミーティングなしってどうやってラリーが始まるんだろう?」と不安な気持ちもありました。
- 建物の中に入る人数を減らすために参加受付が1組ずつ行われたり、セレモニアルスタートがなくなったりと、さまざまな対策をして開催されていました。私たちも、サービスパークなど人が集まる場所ではマスクを着用して、予防を徹底していました!
【ラリー基本用語】Leg/Day
- 金曜日に行われる予定だったセレモニアルスタートは中止となりましたが、代わりにLeg1(土曜日)のスタート時に、1台ずつ送り出す演出が行われました。
ラリーの時間的な区切をLeg(レグ)やDay(デイ)と呼びます。
基本的にはラリー開催1日目をLeg1/Day1、2日目をLeg2/Day2と呼ぶのですが、例えば金曜日のセレモニアルスタート後のギャラリーSSをLeg1A、翌土曜日のギャラリーSSをLeg1Bと表記することもあり、必ずしも1つのLegやDayが1日とは限らないので注意が必要です。
ラリーの進行スケジュールは必ずアイテナリー(ラリー主催者が発表する日程表)で確認するのが大事ですね!
ちなみに新城ラリーは金曜日から受付や車検、レッキが行われ、土曜日がLeg1、日曜日がLeg2となっています。
【ラリー基本用語】TC/コントロールゾーン
- 黄色い時計のマークがTC予告標識で、その奥にある赤い時計のマークがTCの標識です。その奥にあるコントロール解除や、SSスタート/フィニッシュなど、ほかにもさまざまな標識があって、その意味を覚えないといけません。サーキットの旗(フラッグ)とおなじですね。
SS(スペシャルステージ)やサービスパークの前後には、各ラリー車両の通過時刻を厳密に管理するTC(タイムコントロール)やストップがおかれる『コントロールゾーン』が設けられています。
ラリー参加車はすべての指定されたコントロールゾーンを通過する必要があります。
ちなみに、全日本ラリー選手権はスプリント要素の強いスペシャルステージラリー方式(TCラリー方式)を採用していますが、ほかにも所要時間の正確さなどを競うアベレージラリーや、ダカール・ラリーなどのように長距離を走破するラリーレイド(クロスカントリーラリー)などがあります。
【ラリー基本用語】タイムカード
- 写真は2019年のARKラリー・カムイのタイムカードですが、こんな感じでオフィシャルや私たちが書き込んでいきます。
参加車両1台に対して1枚配布される通知表みたいなものです。TCを通過するごとに、その車両のスタート時刻やSSタイムがオフィシャルによって記入されていきます。これを見れば、SSタイムもペナルティも、そのクルーの成績すべて分かります。もちろん無くしたら失格です。
【ラリー基本用語】スターティングリスト
- Leg1のスターティングリストは事前に発表されます。そして、Leg2では前日の走行結果順に並び替えてスタートしていきます。
クラスごとに分けられゼッケンが割り振られたエントリーリストとは別に、クラス関係なく速い順(主催者が速さを評価した順)に並べ替えられた『スターティングリスト』が発表され、その順番でスタートします。
2日目以降は前日の順位でスタートするほか、お昼などにSSタイムや総合順位によってスタート順を変更する『リグループ』が行われることもあります。
いよいよ競技がスタートする土曜日。まずは事前に公開されたLEG1スターティングリストに記載されているスタート時刻に、サービスパークの出口にあるタイムコントロールゾーン『TC0』へと向かいます。
TCには、指示時刻の1分前から入ることができます。そこで待機し、指示時刻になったらオフィシャルの方にタイムカードを渡してその時刻を記入してもらい、いよいよラリーのスタートです!
- TCの手前では作業だけでなく他のチームと情報交換もします。でも、今回は新型コロナウイルスの影響もあって、そういったクルー同士のコミュニケーションも少し控えめだったように感じました。
TCではオフィシャルの方がタイムカードに次のTCの到着指示時刻とSSスタート指示時刻も記入してくれます。
ラリーがスタートしたばかりのTC1はそこまでシビアではありませんが、ラリーが進行するにつれ、TC前まで早めに行き、タイヤの交換や空気圧調整、サスペンションの減衰力調整など、次に走るSSのための車両セッティングを整えます。
また、他のクルーとコミュニケーションをとって、ライバルたちのSSタイムやタイヤ摩耗具合など、さまざまな情報を集めたりもします。
こうした情報と自分たちの状況などをすべて総合して、サービスパークのチームと連絡をとりながら、ラリーを走りきるための戦略を立てていくわけです。
このように準備をしていると、すぐにTCインの時間がせまってきます。
オフィシャルの方にタイムカードを渡して、その時刻を記入してもらって無事にTCインとなるのです。
このTCからSSスタートの区間もタイムコントロールゾーンです。距離は約30mで、SSのスタート時刻はTC到着の3分後くらいが多いですね。
TC予告看板〜TC〜SSスタート〜TC解除看板という一連の流れがコントロールゾーンで、この区間はもう車両から降りたり車両を整備することはできません。
また、SSの最後にある、フィニッシュ予告〜フィニッシュ〜ストップ〜TC解除看板までも同様にコントロールゾーンになります。
- 信号灯には時間や秒数が数字で表示されるほか、バー表示や色の点滅などでスタートタイミングが示されます。
さて、TC1のオフィシャルとも一連のやりとりを済ませて、いよいよSS1スタート直前、オフィシャルから急遽スタートキャンセルの指示が!?
なんとSS内で車両火災が発生したためSS1はキャンセルに。
気を取り直して向かったTC2でしたが、今度は転倒してしまった車両が道を塞ぐ形でコース上に転がったままということで、SS2もキャンセルになってしまいました。
そして、SS3はトラブルなくスタートしたものの、無事にフィニッシュしてタイムを見てびっくり。
他と比較してかなり遅い(泣)。
自分的にはそんなに抑えたつもりもなく、板倉選手も頑張って走っていたと思うのですが、今思うと、苦手な雨のウェット路面、SS3のハイスピードコース、SSキャンセル続きなどでいつものパフォーマンスが発揮できていなかったのかもしれません。
また、マシンも昨年から大きく進化して、まったく違うフィーリングになっていたことも、それに拍車をかけていたと思います。
- 無観客なだけでなく天候も悪くて、サービスパークの雰囲気はいつもより寂しい感じでした。
その後、サービスパークに戻って昼のサービスを行う際も、いつもならたくさん出迎えてくれる人がいて、それにホッとすることがあるのですが、今回は少し寂しい感じ。チームスタッフもあまり笑顔はなく、淡々とルーティンワークをこなしていた気がします。
そして、その悪い流れを断ち切ることができず、Leg1を終えてクラス最下位。昨年はこんなことはまったく無かったので、自分もかなりショックでした。改めて、ラリーはメンタルなスポーツなんだ、と実感させられました。
- サービスパークでの1枚。写真を撮られていることにも気付かないくらい集中してイメトレ中!?
翌Leg2は、順位はひとまず忘れて、いろいろなセッティングを試しながら今のマシンに慣れる、という目標を立ててスタートしました。しかし、なんとLeg2最初のSS7でコースオフ。
そのままコースに復帰できずリタイアになってしまいました。少しメンタルは前向きになりかけていたところだったので、とても残念ですが、クルーのメンタルとパフォーマンスの関係をとても良く理解できた一戦だったと思います。
- ドライバーの板倉麻美選手と一緒にパシャリ。今回の反省を踏まえて次のレースも頑張ります!
私が数年前にラリーに参戦して1番驚いたのが、ラリーに参戦している方たちのコミュニケーション力の高さと、その地域ごとの雰囲気や暖かさを感じられるところでした。
観に来てくださる方が手や旗を振ってくれたり、時にはハイタッチしたり「頑張ってね」と声をかけてくれる事に本当に驚きました!
また、ラリーがスタートする前に子供たちによる太鼓の演奏があったり、農家の方が田んぼの奥から手を振ってくれたりと、その地域の雰囲気がとても伝わってくるんです。
今回の無観客開催を経験して、普段のラリーではみなさんからたくさん声をかけていただいて「よし!行くぞ!」と気持ちが高まっていたんだなぁ、と改めて感じました。
そういう点では、無観客となった新城ラリーでもTwitterなどに応援コメントをくださった方がいて、とても嬉しく感じましたし、励みになりました。本当に、ありがとうございました。
WRCも含めてモータースポーツ全体がスケジュール延期や中止など大変な状況ですが、今は自分にできることをして過ごしつつ、ラリージャパンを楽しみに待ちたいと思います。
(文:梅本まどか 写真:梅本まどか、ウェルパインモータースポーツ)
梅本まどか
<プロフィ―ル>
1992年生まれ、愛知出身。元SKE48メンバー。在籍当時からモータースポーツやオートバイに関心を持っており、卒業後は地元名古屋を拠点としながら他分野で活躍するタレントとして活躍中。2019年にはWRC招致応援団としてラリーの魅力を幅広い方に向けて発信。
[ガズー編集部]
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