[S耐のスーパーな人]Vol.5 篠原輝雄さん ベテランメカニックのモットーは「クルマをきれいに作る」こと
さて、Vol.4のRS中春の荻野悟さんからご紹介いただいたのは、フリーのベテランメカニックである篠原輝雄さんです。
レース界が一目置くRS中春の荻野さんが「こんな60代になりたい」と目標にする篠原さんに、メカニックとしてのこだわりや若手メカニックに対する提言を伺いました。
今年は、「B-MAX Racing」さんの工場長や組田さん(B-MAX Racing Teamの代表取締役会長)も知り合いとのことで、手伝ってくれないかと声をかけられ、30号車JMS RACING AMG GT4 with B-MAXのメカニックとして帯同している篠原さん。
「B-MAX Racing」さんはスーパー耐久だけでなく、スーパーフォーミュラやFIA F4などのフォーミュラレースやSUPER GTなども参戦されているので、工場の方でもお手伝いされているそうです。
ラリードライバーから本格的なレースメカニックに
GAZOO編集部
「これまでどのような経験をされてきましたか?」
篠原さん
「もともと自動車の一般整備士をやりながらラリーを始めました。当時、テインを立ち上げた藤野さんと市野さん(現、代表取締役専務と代表取締役社長)とも、同じ神奈川県同士ということもあって争っていましたね」
「そこから全日本ラリーでのチャンピオン経験もある金子繁夫さんが立ち上げたアッスルに誘っていただき、ラリー車の製作やメンテナンスを手掛けるようになりました。」
「引き続きラリーにも参戦していて、23歳の時には初めて海外のラリーにも参戦させていただきました。アセアンラリーやニュージーランドでのWRCなどでも走れたことで、下のクラスではあっても世界のラリーを体感できたことはいい経験となりました」
「その後、鈴木哲夫さん率いるシフトがグループAに参戦する際に声をかけていただき、サーキットでのレーシングカーの製作やメンテナンスがメインとなりました」
メカニックとしてのモットーは「クルマをきれいに作る」こと
GAZOO編集部
「フリーのメカニックとして、どんなことを意識しながら働いていますか?」
篠原さん
「僕くらいの年齢になると現場に出て作業している人は多くはないですが、同世代は工場長以上の方も多く、広いようで狭い業界でもあるので、何かと声をかけていただけています。僕としても今は個人事業主なので、声をかけてもらえるように日頃努力していますよ」
「仕事をするにあたり、そのチームの「色」を大切にしています。これまでの経験などによる助言はさせてもらいますが、チームの方針に合わせてベストを尽くすことが大事だと思っています。声をかけていただく時点で、僕がどのような仕事ができるのか分かってもらっていますので、その期待に沿うようにしっかりやるだけですね」
「そして、自分のモットーは「クルマをきれいに作る」ことです。一からクルマを作ることをやってきた時から心掛けています。見る人が見れば違いは分かるものなので、「これ誰が作ったの?」って言ってもらえるのが楽しいんですよね。」
GAZOO編集部
「長年メカニックとして携わっているスーパー耐久とは、どんなレースだと思いますか?」
篠原さん
「いろいろなクルマが走っているので、自分の予算に合わせて参戦できますよね」
「S耐は、プロドライバーもいますが、セミプロからジェントルマンドライバーまで幅広い人が走っているので、年齢に関係なく切磋琢磨して速さを競ったり楽しむことができるんじゃないかと思います」
「また、5時間とか24時間とかレース時間が長いところがいいですね。昔は24時間レースも好きだったけど、さすがに最近は勘弁してくれって思ったりしますけど(笑)」
みんな勝ちたいのは一緒。それなら人よりも努力しなくちゃ
GAZOO編集部
「若手のメカニックに伝えていきたいことはありますか?」
篠原さん
「先輩よりきれいなパーツを作りたいとか、あの先輩を超えたいとか、この人に勝ちたいとか、そういう思いが少ないなと感じます。また言われないと分からないという人も多いし、言われる前に行動するということができていない。昔であれば、そんな働き方していたら残っていけない業界でした」
「僕たちが若いころには、色々なことをやってきたしかなり怖い失敗なんかもけっこう経験してきました。いまはそういう失敗するようなことはやらせない傾向にありますが、それに従うだけだと成長も遅くなる気がします」
「目指しているところはみんな一緒、勝ちたいわけでしょ。それなら普通の努力じゃダメなんですよ。人より苦労して、勉強して、見て、次にするべき行動が瞬時に判断できないといけない。今、メカニックからエンジニアになってトップで活躍しているような人は、相当な努力もしていますし、他の人とは違うなって感じます。そういう人が今は少ないかもしれないですね」
GAZOO編集部
「今後のやってみたいことはありますか?」
篠原さん
「スーパー耐久、SUPER GT、スーパーフォーミュラと3カテゴリーやっているので今はもうおなか一杯ですよ(笑)。体が資本なので、怪我だけはしないようにして、一生懸命やることでチームに貢献したいですね」
「エンドレスの86は一から作るところから参加してきましたし、そういうクルマがチャンピオンを獲ってくれるとうれしいですよね。」
「あんまり動けないけど」と何度も謙遜されていましたが、やるべきことを理解しているがゆえに必要なことを優先してこなせ、結果的には誰よりも多くの作業をこなしていらっしゃるのかもしれません。
やはり、この業界で長く活躍する方の一言一言は、説得力を感じました。
そんな篠原さんから紹介いただいたのは、「若手の中で一生懸命やっている」との評価をいただいたメカニックの荒木颯太郎さんです。社会人3年目の竹内涼真さん風のイケメンが、この厳し~い業界をどう考えているのでしょうか? お楽しみに~
(GAZOO編集部 文:山崎真 編集:岡本淳 写真:山崎真/岡本淳)
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