[S耐のスーパーな人]Vol.8 村上博幸選手 「いい妻と仲間に恵まれ、人生で今が一番楽しい」
さて、スーパー耐久も富士24時間を終え、次戦のオートポリスからは後半戦がスタートしますが、その第3戦富士で取材させていただいた「S耐のスーパーな人」。まずはST-5クラス #88 村上モータースのオーナー兼ドライバーである村上博幸選手にお話を伺いました。
地元愛媛県でダイハツ、スズキのサブディーラー、そして民間車検場であるカーショップ「村上モータース」の代表である村上さんが、なぜロードスターをこよなく愛し、スーパー耐久に参戦を続けるのか、その理由をお届けしていきましょう。
ロードスターの魅力は、気軽で、身近な存在
──「ロードスター扱うようになったきっかけは何ですか?」
「大学卒業後にトヨタのディーラーで営業職として勤務していましたが、家業の村上モータースに戻る時に、何かもう一つ柱として取り入れたいと考えたんです。そんな時、大学の野球部時代に、対外試合で転戦するのに必要で、実家からNAロードスターを借りて乗っていたことを思い出しました」
「実はその当時あまりクルマに興味がなかったんですけど、NAロードスターを運転することがすごく楽しかったんですよね。それでロードスターを手掛けてみようかと思いました」
──「ロードスターの魅力はどんなところですか?」
「自分でも何でロードスターなのか考えてみたことがあるんですよ。例えば、S2000は革靴だとすると、ロードスターはサンダルの感覚で、気楽に乗れたり、常に身近にある存在なんですよね。こういうところがロードスターがみなさんと長く付き合っていけるところだと思いますし、その気軽さが僕にも合っていたんだと思います」
──「レースを始めるきっかけは何だったのですか?」
「実は30歳までサーキットに行ったことが無かったんですよ。初めてサーキットに行ったのは瀬戸内海サーキットというところで、ドリフトをやっているクルマが壁にぶつかっているのを見て、『これは悪い人たちが来るところだ』って本気で思いました(笑)。その時は、もうサーキットなんて来ないと思っていました」
「でも、ロードスターのいろいろなノウハウを身に着けるためにレースに出てみようということになり、その翌年に岡山のチャレンジカップというNAロードスターのワンメイクレースに出たのですが、最下位なうえにリタイアという結果でした……。その時に、もちろん悔しかったのもあると思いますが、勉強のため3年間は続けてみようと決心しました」
「そして、4年目でシリーズチャンピオンを獲得できたことを機に、次のステップアップとしてロードスターでも参戦できるS耐に挑戦しました。当時のST-4クラスにはS2000やインプレッサなど速いクルマがいて、周りからロードスターは辞めたほうがいいよと言われました。でも、好きなクルマ、ロードスターで参戦したかったんですよ。最初のうちは予算もなかったので、岡山と富士へのスポット参戦から始めました」
レース参戦の目的は、自分たちを高めるため
──「レースに参戦し続ける目的やこだわりはどのようなものですか?」
「僕としてはレース屋さんになりたいのではなく、あくまでレースに出られる技術を持ったクルマ屋さんになって、どんな仕事に対しても高い技術をお客様に提供していきたいと思っています。それで、従業員にも幸せになって欲しいんですよね」
「そのため、基本的にエンジンもミッションも車両のメンテナンスからECUまで全部自社で手掛けています。民間車検場もやっているし新車の販売もやっていますので、ムーブのオイル交換をしている隣で、ロードスターのエンジンを組んだりもしています(笑)。レース参戦は勝つことも大事ですけど、自分たちを高めていくことが一番の目的です」
──「どんなチームを目指したいですか?」
「ロードスターつながりで、他県や瀬戸大橋を渡ってまでいろいろな人に集まっていただけるようになってきています。また、パーツを買っていただくことでS耐の参戦を応援していただいているファンの方もいらっしゃるので、長く続けていくことと、もっとたくさんの方に応援していただけるチームになりたいですね」
「また、ロードスターを代表するチームとして皆さんに期待してもらえていると思うので、ロードスターファンの方と一緒に戦っていきたいですし、ロードスターの良さを広めて、もっともっとロードスターが盛り上がってくれるとうれしいです」
──「S耐に参戦してよかったことは何ですか?」
「新型のNDロードスターにスイッチした2017年にST-5クラスでチャンピオンを獲得することができました。当時、壊れた部品やトラブルなどのデータをマツダさんに出させてもらった時にいろいろ協力をしていただき、そこからマツダさんにいろいろとサポートしていただけるようになりました」
「次の目標として富士24時間レースで勝ちたいと思っていたタイミングで、マツダさんも参加型モータースポーツに力を入れたいということで意気投合しました。そこから、役員の方をドライバーとして迎えて2台体制で参戦したり、今年からは120号車にマツダのテストドライバーの方も参戦していただくような関係が築けています」
「また、地元でクルマ屋をやっているだけでは出会えないような方々とコミュニケーションを取れたりいろんな情報を得ることができますし、地元では近所の方や軽トラックに乗っている農家の方など、あまりS耐のことを知らない方からも『なんか、頑張ってるね』と声をかけていただけています」
モータースポーツが人生を豊かにしてくれた
──「村上さんの、ドライバーとして、オーナーとしての今後の目標を教えてください」
「ドライバーとしては、大好きなロードスターで走っているので、もっと運転もうまくなりたいですし、まだまだ速さを追求していきたいです。目が見えなくなるまでは頑張ります!」
「チームオーナーとしては、自分がただただロードスターでレースがしたいという思いで始めましたが、そのやりたいというわがままによく分かんないけど付き合うよって言ってくれた従業員や仲間には本当に感謝していますし、みんなで楽しく笑っていられるチームを続けていきたいです」
「最初は右も左もルールもわからなくてペナルティでたくさん怒られたりしましたけど、今ではレースに参加できるだけで楽しいです。もちろん、シリーズタイトルをとったこともうれしいんですけど、しんどいことも一緒に乗り越えてきたいい仲間に囲まれて、今が人生で一番楽しいです。本当にモータースポーツには人生を豊かにしてもらいましたね」
「それも僕がサーキットに入り浸っている間にお店を切り盛りしてくれる妻のおかげなので、そこはもうほんと感謝しかありません」
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チャンピオンを獲得するような実力派チームでありながらも、あくまでレースはお客様、ファン、そして従業員みんなの幸せのためという村上選手。ピットにも心なしかゆったりとした雰囲気を感じるのは、こうした村上選手の優しさがチームのベースにあるからなのかもしれません。
さて、そんな村上選手からご紹介いただいたのは、#103 HM RACERSでドライバー兼、チームの先生として活躍中の佐々木孝太選手です。S耐を知り尽くしたベテランドライバーから見るディーラーチームやS耐についてお届けしましょう。
(GAZOO編集部 文・写真:山崎真 編集:岡本淳)
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