[S耐のスーパーな人]Vol.11 金敬模さん 人との繋がりを大切にし、マルチなリーダーを目指すメカニック
さて、スーパー耐久に参加している方の中で、他の方から「すごい人」だと一目置かれる方をご紹介していく企画「S耐のスーパーな人」。
Vol.11はKTMS(神戸トヨペットモータースポーツ)のチームを運営する金敬模(キム・キョンモ)さんです。
マシンの製作からチームの運営、そしてチームの監督業まで幅広く担う金さんが、「大好きな仕事」というレースで大切にしていることや今後の目標や夢についても伺いました。
第3戦でのマシンの火災トラブルから、神戸トヨペットのメカニックの協力も得てマシンを修復、第4戦では見事な復活優勝を果たしています!
※以下、スーパー耐久第3戦富士で取材させていただいた内容です。
──現在までの経歴を教えてください
「僕は韓国国籍なのですが、高校生の時に日本に遊びに来たことがあって、すごいクルマが走っているのを見て、絶対日本に行くと思っていました。行くことしか考えてなかったんですけどね」
「兵役を終えて、英語を学ぶために1年間オーストラリアに留学したあと、日本に来て自動車の専門学校に通いました。モータースポーツの授業の一環としてサーキットの研修があり、そこでお手伝いをさせていただいたaprの代表の金曽さんに気に入っていただいたことが縁で、卒業後aprに入社することになりました」
「aprで5年、フリーランスを経て、86&BRZレースの車両をメンテナンスすることをきっかけに自分のガレージを立ち上げました。最初は間借りで86の1台からのスタートでしたが、そこから7年間86&BRZレースやSUPER GTなどで外注のメカニックやマシンメンテンナンなどのお仕事をいただいています。今はまだ一人でやっているガレージですが、86&BRZレースでは、最大8台のメンテナンスを担当していたこともあります」
KTMSが目指すのは若手の育成
──KTMS(神戸トヨペットモータースポーツ)はどのようなチームですか?
「昨年、片岡龍也さんからの紹介で神戸トヨペット(KTMS)の初参戦となるST-4クラスで86のメンテンス及び運営を依頼されたことがきっかけで、このスーパー耐久のGRヤリスのマシン製作からチームの運営まで任せていただいています」
「このチームが一番大切にしているのは若手の育成です。ドライバーは20代の若いドライバーを乗せて、彼らが成長できるようにコミュニケーションをとっています。また、今年は3人の社員メカニックと、昨年も来てくれていた一人の方にはエンジニアとしての仕事を担当してもらっています。サーキットという特殊な環境でのトラブルシューティングを行い、ドライバーの命を預かることで、大きく成長できると思います」
「神戸トヨペットのスタッフも、僕がお願いしている外注のメカニックも含め、すごくいい雰囲気でレースに臨めているので、僕が理想としているチームになってきています。そうした中で、今年は開幕戦から2連勝もできていますし、特に第2戦では実力で勝つことができたレースだと思っています」
一番大切なのは人と人のつながり
──仕事をするうえで、大切にしていることは何ですか?
「一番大事にしているのは人との繋がりです。広いようで狭いモータースポーツの業界ですので、横のつながりはすごく大切ですね。そのために挨拶は積極的にしますし、時間があれば知っている方のところにいって話をするようにしています。あとは、何か聞かれた時に自分が知っていることは気持ちよく教えてあげますし、みんなが同じような高いレベルで一緒に戦っていけたらいいと思っています」
「レース現場では、ピリピリした雰囲気で臨むよりも楽しくチーム一丸となって戦うことで、間違いなくいい結果を手に入れることができると思っています。スポーツで戦う以上は勝ちにいくことは当たり前なので、あえて『勝つぞ!』みないなことは言わないようにしています」
高いモチベーションはポジティブ思考とこの仕事が好きだから
──今後どのようなことにチャレンジしていきたいですか?
「一つのことを突き詰める職人の方も尊敬しますが、僕はチームをまとめるリーダーになりたいと思っています。そのためには広くいろいろなことを知っている必要があるので、マシンのメンテナンスはもちろん、溶接も、板金も、配線も、エンジニアとしてロガーの分析もできるようになりたいです。そうすることで、指示を出すことも、人を育てることも、実際に作業することもできるという、リーダーとしてマルチな人になれると思います」
「僕は常に数年先の目標を立てていて、これまでその目標を大体達成してきています。レースでの次の目標ももうすぐ実現できると思います」
「そして、4年後には自分のガレージを建てたいと思っています。社員も雇って、レースのメンテナンスだけでなく、試作、開発なども手掛けられるようなガレージにしていきたいと思っています。そのために、数年前からCADも独学で学んでいて、まだ半分遊びではありますが3Dプリンターでいろいろ作ってたりもしています」
「そうした自分の目標や夢を実現するためには、なるべくいろんな方に目標や夢を言うようにしていますよ」
──そのモチベーションはどこから来るのですか?
僕はものすごいポジティブなんで! 沖縄の方言の「なんくるないさ」という言葉が大好きで、起きたことに対してどうしよう、どうしよう、となっても仕方ないので、しっかり反省して落ち着いて次への対策を考えるということをずっとやってきています」
「あとは、やっぱりこの仕事が好きだからだと思います。他の夢中になれる趣味もなくて、休みの日に何やってるかと聞かれても、家族サービス以外は仕事してますからね」
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マルチな人を目指したいという話の中で、「浅く広く」という表現をご自身は使われていましたが、決して一つ一つのことを浅くではなく、全て自分の理想を実現するために必要なことには徹底して取り組んでいるという印象を受けました。
そして、人と人との繋がりを大切にし、楽しむことがモチベーションアップの最良の方法であるというお考えは、グリッド上で変なポーズをとってみんなを笑わせたりしている姿からも感じることができました。
(GAZOO編集部 文・写真:山崎真 編集:岡本淳)
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