【スーパー耐久第2戦富士】レジェンドドライバー浅野選手も太鼓判! ST-4に登場した新型GR86の実力とは?
開幕戦の鈴鹿ではST-4クラスがスキップされ、ST-4クラスにとっては実質の開幕戦が日本一過酷なレースでもある富士スピードウェイでの24時間レースとなる。
必然的に、ST-4クラスに投入されることになる新型車GR86のデビュー戦もこの24時間レースとなるのだ。はたしてGR86の実力はいかがなものなのだろうか。早速GR86にスイッチした浅野レーシングに話を伺った。
GR86の初めての走行は予選2日前!?
5月10日に行われた公式テストの際にデリバリーが遅れて、まだ走らせることができていないとは伺っていたが、レースウィークに突入してからようやくエンジンがかかり、そして走るかも確認できないままに富士スピードウェイに持ち込んできたという。
「水曜日に走らせてみて、オイル漏れやエンジンがかからないなどのトラブルもありましたが、今は改善されて予選の段階までは問題なく走行できています」
「ずっとレース車両を一から作ってきているから分かるんですけど、旧型の86とGR86は似たような形をしていても、使っているパーツも補強の入れ方も違うし、車両自体はよくなっていることは確かです」
「車両自体が新しくなって、ボディ剛性も上がっているし、旧型の86よりもエンジン特性が扱いやすいので、ドライバーにかかる負担も減るのではないかと思います。排気量が上がったことで、パワーがアップしたというよりは、中間のトルクが向上しているので、アクセルを少しラフに踏み込んでも問題なく走れる印象です。特に登り区間の第3セクターなんかはすごく楽になるでしょうね」
「また、ボディの剛性が上がったことでセッティングの幅も広がっています。旧型86では自分たちの思うような走りができない場面もありましたが、GR86は『これをこうすればこうなるな』というのが分かりやすいという感覚があります」
まずは完走が目標。そして次のレースにつなげる
「新型車なので純正パーツを入手するまでに時間がかかりますよね。うちは、旧型86のパーツのストックがあるので、それを活用しながら何とか間に合わせている感じです」
「あとは、走り込みができていないので、電気制御がどのような影響を及ぼすのか不安があります。GR86のコンピュータはいろいろなものが集約されていて、ABSとかトラクションコントロールとかのレースに欲しい制御とその他の制御がどのように関連しているのか、これから一つずつ確認していかないといけないですね」
昨年の24時間を制した浅野レーシングではあるが、今年の目標はまずは完走だという。
「24時間レースの目標はまずは完走です。レースペース自体は去年よりもよくなっていますので、ノントラブルでいければいい結果につながるかもしれないですね。まずは自分たちの仕事をきっちりこなして、最後まで走らせることが大切ですし、それが次のレースにもつながっていくと思います」
浅野選手がレースを続けることへの想い
ドライバーたるもの年齢を言い訳にすることはないが、古希を目前として今なお耐久レースのトップカテゴリーにドライバーとして参戦し、自らマシンの作成、メンテンナンスも手掛ける浅野選手。
その原動力はどこにあるのだろうか。
「自分たちがレースを始めたころは趣味でレースを始めた人が多くて、当然自分で車をイジったりメンテナンスしていましたが、最近の車は電子制御が多くて、個人や一般の修理工場などでは手が出せない分野がありますよね」
「また、若い人が魅力を感じる車やレースが少なくなってしまったり、レースをやりたい人が減っているために、サーキットもレースを開催することが難しいのが現状です。でもレースを盛り上げるためにも底辺を広げていかないといけないと思っています」
「メーカーさんのワンメイクレースなどが徐々に盛り上がってきてレースを楽しむ環境が少し戻ってきてはいますし、底辺を広げるためにはナンバー付きの車のレースはいいんじゃないかと思います」
「生涯現役」を宣言! そのモチベーションは?
- いまだに続くレースへの情熱、そのモチベーションはどんなところにあるのか伺ってみた。
「特にこのスーパー耐久に参戦していて、若い、20代前半のドライバーのいいところを引き出して自分がそれを参考にする、逆に自分が持っている経験を若いドライバーに伝えていく、そういう先につなげていこうというやりとりが大好きなんです」
「モータースポーツの底辺を広げるため、そして大好きなレースをどうしても残していきたいので、若いドライバーを応援して、僕の持っているものは受け継いで一緒にやっていきたいと思います」
「とにかくモータースポーツを絶やしたくない、そういう思いが一番です。そして自分たちが始めた頃のレースに憧れた感覚を、今の若い人が少しでも感じてくれたらいいなと思います。
スーパー耐久の魅力は「人を育てる」こと
メカニックも毎戦毎戦成長していることを感じられるし、以前は言わないとできなかったことが、自分から率先してできるようになってきています。特に耐久レースだとレースがスタートした後にもいろいろやることがあって、いかにロスなくやることができるのか本人が考えないとうまくいかないんです。
スーパー耐久のような耐久レースでしか経験できないことがたくさんありますし、人間形成にはすごく役立つと思います。
そして、失礼ながら質問させていただいたご自身のドライバーとしての引き際について、「一緒に走るドライバーに迷惑が掛からない走りができていればいいんじゃないかなと思います。自分がいなければよかったなと思うようになるまでは続けていきますよ!」と淡々と語ってくれた。
スーパー耐久のレジェンドドライバーは、大好きなレースへのアクセルを緩める気はまだまだなさそうだ。
(文:GAZOO編集部山崎 写真:堤晋一、折原弘之、山崎)
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