【スーパー耐久第3戦SUGO】フィットの後継車はヤリス! その開発状況と見並代表がチームBRIDEに詰め込む想いとは?
スーパー耐久シリーズにまた一台楽しみなマシンが新たに登場した。そのマシンは5号車のTHE BRIDE YARISだ。
これまでフィットで参戦してきたチームBRIDEだが、次のマシンの候補として白羽の矢を立てたのがヤリスだ。その準備のために2021年シーズンのヤリスカップでスーパー耐久が開催されるラウンドのレースに、オーナーでもある見並秀文選手が自ら参戦しデータを収集してきたというから、その本気度も伝わってくる。
そんなヤリスについて印象や現在の開発状況を取材に伺ったわけだが、あわせてチームBRIDEのチームの成り立ちやスーパー耐久の他ワンメイクレースなどにも積極的に参戦する意図、そして見並選手、見並代表としての想いをお届けしていこう。
チームBRIDEの成り立ちからスーパー耐久に参戦するまで
「1993年に終了したグループAというカテゴリーのAE101のカローラをブリッド(スポーツシートメーカーのBRIDE)さんが購入した際のドライバーとして、オーディションを勝ち抜いて走ることになったのがブリッドさんとの最初です」とその馴れ初めを話してくれた見並代表。
そこから2年間ブリッドカラーのカローラをドライブすることになるが、その後はミラージュやシビック、アルテッツァなどのワンメイクレースもすべてブリッドカラーのマシンで参戦し、多くのチャンピオンを獲得してきている。
スーパー耐久へは2004年くらいからスポット参戦していたというが、2016年からはフル参戦を始め、そのタイミングからフィットにマシンをスイッチしている。そのきっかけも教えていただいた。
「無限(ホンダのカスタムブランドで、ワンメイクのレースの運営なども行っている)さんから鈴鹿サーキットでフィットのワンメイクレースを開催したいという相談を受けまして、2014年からスタートしました。僕としてもドライバーとして参戦しましたし、何台かのマシンのデリバリーもしました。
2014年(初代チャンピオンは見並選手!)、2015年とチャンピオンが誕生していくわけですが、チャンピオンを獲得してそのまま終わりというのは寂しいので、その先のステップアップとして僕がスカラシップ的にクルマを用意して、チームBRIDEとして耐久レースをしようということで、スーパー耐久への参戦を開始しました」
ST-5クラスでは3年目にチャンピオンを獲得、フィットも6年を経過したので次の車種も考えていたという見並代表。ST-5クラスでやってきたためせっかくならST-5クラスで使えるクルマでやろうということで、ヤリスにしたという。
ただスーパー耐久ではヤリスの前例もデータもなかったので、いきなり参戦するのではなく、昨年はヤリスのワンメイク車両を購入し、スーパー耐久が開催されるサーキットでの8戦に見並代表自らドライバーとして参戦。ロガーも積んでデータ取りをして準備を整えてきたという。
しかしコロナウイルス感染症の影響もあって、予定していたクルマの入庫が5か月も遅れてしまったこともあり、この第3戦SUGOからようやく参戦することができたという。
まだデビューしたばかりのヤリスだが、どのようなマシンに仕上がっているのだろうか。
「実際には、まだまだ遅いですね。トップスピードが15km/hくらい、明らかに遅いんです。
ただ、フィットに比べてヤリスの方がフロアの剛性、足回りなどはいいですし、ホイールベースも15mm長く、車高も低いなど、今のところ乗った感じではなかなかいい動きをしています。
ミッションやエンジンも去年のヤリスカップで耐久性の確認も済んでいます。
あとは、エンジンの馬力をどう上げていくのかが課題ですね。ECUについてはトヨタさんからお声がけいただいてご協力いただいてもいますが、今後いろいろ煮詰めていったり、特認の申請をしていくことで性能差を埋めていくことができれば、おもしろいクルマになっていくんじゃないかなと思っています」
「ターボとか特認で認めてくれないですかね(笑)」と茶目っ気たっぷりの笑顔も見せてくれたのも印象的だ。
金曜日の練習走行ではウェットの状態だったが、ST-5クラスでトップタイムだったフィットの2秒落ちくらい、ドライではトップの5秒落ちくらいのタイムだという。
またマシンを製作できているのは、ブリッドが所属するNAPAC(日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会)の協力のおかげだという。
「チームBRIDEとして参戦していますが、NAPACさんのフルメンバーで応援いただいて、NAPACさんの力で出来上がっているようなマシンでもあります。
ヤリスで参戦することが決まったら早速オクヤマさんがロールバーを作ってくれて、キャロッセさんがサスペンションを、フジツボさんがマフラーを、DRLさんがラジエターをと、設定のないパーツを製作いただいていますので、本当に感謝していますね。
今回4輪をディスクブレーキにするにあたり、シャシーが共通のヤリスクロスの足回りを流用しています。それに合わせて、ボルトオンで取り付けられるドライブシャフトなどを、数ある純正品の中から探し出して特認を取れるようにしたことが一番大変でしたね。
このブレーキでもエンドレスさんにもご協力いただいています」
チームBRIDEが多くのレースに参戦するワケ
ブリッドカラーのレーシングカーはさまざまなレースカテゴリーで見ることができる。これはブリッドが賛同し見並代表の思いが結実した理想の形のようだ。
「スーパー耐久はレベルの高いレースなので、僕としてはある程度経験を積んだドライバーと一緒にやりたいんですね。そのためにヤリスやフィットのワンメイクレースとか、VITA(フルカウル型オープンカーでヴィッツRSの1.5Lエンジンを搭載したレーシングカー)などの経験を詰めるカテゴリーに参戦する体制も整えていています。
そういうところからチームに加入していただいて、その後のステップアップとしてスーパー耐久を目指してもらえればと思います。
また、自分の得意なサーキット限定で参戦して自分の力を存分に発揮して楽しんでもらえるようなことができたらいいなと思います。
いきなりフル参戦しても初めて走るサーキットなどは大変なことも多いでしょうし、それで楽しめないのはすごくもったいないですよね。得意なサーキットを走っている時のドライバーはいい顔をしていて見ている僕もうれしくなります」
まだまだドライビング技術も健在な見並選手。目標としている選手は浅野武夫選手だといい、浅野レーシングのようにみんなが集まって来るようなチームを作るのが憧れだという。
現在58歳の見並選手。ご自身でもドライバーとして走りながら、若手ドライバー、ジェントルマンドライバーを育成し、みんなで楽しめる体制を着々と整えている。
これからますます見並代表の薫陶をうけ、チームBRIDEから育っていくドライバーが増えていくだろう。そしてこうしたチームがもっと増え、モータースポーツの裾野が広がっていくことを楽しみにしたい。
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