今から、トヨタ86でGR86に挑む理由(スーパー耐久HMR Racing)
スーパー耐久で走っているレーシングカーは、ST-Qの開発車両を除けば、市販されている車、もしくは市販車をベースにしている車だ。予算面を考慮せず、勝つことだけを考えると、できるだけパワーのある、新しい市販車を利用したほうが有利だろう。
スーパー耐久ST-4クラスのレギュレーションは1501cc~2400ccの2輪駆動車となっている。新しい、かつ排気量も大きい2400ccのGR86/BRZをベースにレーシングカーを制作したほうが優勝への近道であると思う。実際GR86でエントリーするチームは増えている。
しかし、あえてこれからトヨタ86(ZN6)でスーパー耐久に挑むチームが2022年のスーパー耐久第3戦SUGOに現れた。HMR Racingというチームだが、どんなチームなのだろうか。ネットで調べるとHMR 株式会社というスポーツカー専門の中古車屋さんみたいだ。社長であり、ドライバーの石川賢志選手にお話を伺った。
―なぜスーパー耐久に参戦しようと思ったのですか?
石川選手:2030年までにSUPER GTに自社チームで参戦することが目標のチームです。でも、いきなりSUPER GTは無理なので、まずは経験を積んでいきたいです。というのも、私はレースが大好きで、レースを自らやりたいのです。だからレースに参加するんですよ。もちろん、会社のブランディングに役立つとは思っています。
―レース経歴教えていただけますか
石川選手:私は、2020年まではレースに関わったことはありませんでした。私個人として、2020年の冬に86/BRZ富士チャンピオンカップに参戦し、2021年はフォーミュラカーのJAF F4選手権に2戦参戦しました。
ちなみに、チームメンバーは、私の会社のメンバーです。しかし、全員レース未経験者です。だから株式会社トランジットエンジニアリングジャパンの渡邉博人さんとハンマーレーシングの伊澤英之選手にサポートをしてもらっています。渡邉さんはチーム監督及びチーフエンジニアとして、伊澤選手はドライビング面で協力してもらっています。
―レーシングカーとして初代86(ZN6)を選択した理由は?
石川選手:会社(HMR株式会社)としてレースに参戦します。ですから、会社で扱っている中古車を利用することになりますよね。そうなると、ホンダの中古車をメインで扱っているので、S2000とかシビックタイプR、インテグラタイプRになります。でも古いし部品も無いんですよ。
一方、初代86は、弊社で多く取り扱っていますし、部品も豊富です。だから初代86にしました。実際GR86はまだ中古車としては、レアですね。だから中古車で流通し始める2年後ぐらいにGR86に変更しようと考えています。
―レーシングカーをつくるのは大変だったのでは?
石川選手:2018年にオートファクトリーさんがスーパー耐久で使用していた車を買いました。その当時は、速度をあげるようなカスタマイズが許容されていたみたいです。だから2022年のレギュレーションに適合するようにデチューンをしました。
例えば、フロントウィンドウはポリカーボネートという軽い樹脂だったのを純正の重いガラスに戻したり、トランクはカーボンだったのですが純正のパネルに戻したりしました。結果30kgぐらい重くなりました。クルマを速くする対策は、まだ手つかずなんです。
―チームメンバーを会社のメンバーにする理由は?
石川選手:私の会社(HMR株式会社)は中古車の販売だけでなく、お客様に安心してスポーツカーに乗っていただけるために、メンテナンス作業をしっかり行っている会社です。そのため、メカニックの育成ということがとても大事であると考えており、レースの現場で経験を積んでほしいのです。
Cドライバーの大川は、メカニックとドライバーを目指して専門学校で勉強して、今年4月に入社した社員です。まだスーパーFJに参戦しているレベルですが、スーパー耐久のドライバーとしてもやっていけるように頑張ってもらいたいのです。
―初めてのスーパー耐久どうですか?(予選前にインタビューしています)
石川選手:フリー走行で、車を少し破損しました。しかも、GR86はとても速いですよ。プロもいますしね。まずは皆さんのお邪魔にならないように頑張ります。
長い目で見守りたいチームです
老舗のチームの中にも、メカニックの一部を自社の社員としているチームはあるが、基本チーム全員が会社メンバーというのは珍しいのではないだろうか。スーパー耐久、SUPER GTに参戦している埼玉トヨペット Green Braveは、会社のメカニック育成のために、チーム全員(ドライバー除く)を会社のメンバーで戦っている。チーム規模は違うが、HMR Racingのお手本となるチームかもしれない。
実際に、予選、決勝と216号車 HMRスポーツカー専門店 86の走りを見ていると、決して速いとは言えないが(失礼ですいません)、今後ST-4で戦えるレベルの速さになるかもしれないと感じた。GR86勢はトムススピリット、浅野レーシング、シェイドレーシングという名門チームであり、挑むにはこれ以上ないチーム達だ。
今回、排気量が同じライバル車両60号車インテグラに予選で負けてしまったので、次回は挽回したかっただろう。(決勝では60号車はリタイヤ)しかし、HMR Racingはオートポリスに参戦しない、一方60号車インテグラは、次戦のオートポリスが最後だという話だ。もう、同排気量の直接対決はもう見ることはできないかもしれない。今後は社員チームでGR86勢に挑み、早々に表彰台を勝ち取ってほしい。
(GAZOO編集部 岡本)
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