バイオディーゼル燃料のマツダ3がスーパー耐久に参戦! 前田育男常務「このマツダ3でいろいろチャレンジしたい」
マツダは、2022年のスーパー耐久シリーズの最終戦となる「SUZAKA S耐」で、マツダ2に替わり引き続きバイオディーゼル燃料を使用するマツダ3を投入した。
2021年の最終戦、マツダはスーパー耐久のST-Qクラスに、わずか1か月程度の準備期間でバイオディーゼル燃料「サステオ」を使用したデミオを走らせた。
そして2022年も引き続きバイオディーゼル燃料を使用するマツダ2を走らせてきていたが、実は開幕戦の際に記者会見に臨んだマツダの丸本明社長は、注目の発言を行っていた。
「実は数週間前ですが、弊社のエンジニアからSUBARUさんのBRZ、トヨタさんのGR86を目の当たりにして、後半戦に向けて2.2Lで300馬力のディーゼルエンジンを開発したいという強い要望を受け、さらなる挑戦に同意しました。ぜひ後半ではガチで戦わせてもらえればと思います」
そのマツダ3がこの最終戦に間に合い参戦を開始することとなったのだ。マシンの開発状況や今後の目標などを、マツダの常務執行役員でMAZDA SPIRIT RACINGの代表でもある前田育男選手にお話を伺った。
マツダ3ならいろいろチャレンジできる
まずは、「ギリギリ間に合いましたね」と、今シーズン中の参戦を果たすことができた興奮と安堵を感じさせる表情で語ってくれた前田常務。
マツダ3をレーシングカーとして仕上げるには多くの課題があると以前語ってくれていたが、マツダのテストコースでいろいろなケースを想定しかなりの距離を走り込んできたという。
ベース車両は量販車のマツダ3を使用し開発を進めているわけだが、レースで大きな負荷がかかる箇所への対策は施してきたということで、「トラブルフリーで完走はできるのではないかと思います」と状況を教えてくれた。
それでも、速さとしてはまだまだの状態だという。特にエンジンのパワーの面では、2.2Lのエンジンで200馬力がストックの状態だというが、本来もっと出せるものの2割~3割程度のアップに抑えているそうだ。
バイオディーゼル燃料とエンジンのマッチングについてはマツダ2での経験が活きている。ただ、マツダ2のエンジンではトルクを上げることにも限界があったこと、またフロントヘビーなパッケージのためレーシングカーとして素性があまり良くなかったことなどの課題があった。
そこでマツダ3を投入し、エンジン、マシン共にチューニング幅が広がることで、今後いろいろなことにチャレンジしていきたいと語ってくれた。
ほぼノートラブルの完成度の高さに驚き
マツダ2のドライバーも務め、マツダ3もテストの段階からステアリングを握る井尻薫選手にも、マツダ3の現状についてお話を聞いた。
まず、マツダ2に比べてトレッドもホイールベースも長く、タイヤも太いことで安定感があり、レーシングカーとして乗りやすいという。
それ以上に、初乗りのテストの時から完成度の高さに驚かされたそうだ。
「ニューマシンならだいたい何かしら初期トラブルがあるものですが、テストの段階からノートラブルで走ることができていましたし、サスペンションとかエンジンの設定とか、自動車メーカーが作るクルマってすごいんだなと思いました。クルマの造り込みもきれいですし、完成度が高いですね」
この最終戦のプランは、タイムを求めるというよりはデータ取りのための完走を見据えてレースに挑むことになるという。
マツダ3をGR86とBRZと戦えるクルマにしたい
「まだ個人的な夢」としながらも、今後の展望や目標についても前田常務に語っていただいた。
「ST-QでもGR86とBRZの熾烈なバトルが起こっていますよね。マツダ3も目標となる相手とちゃんと競争できるようなパフォーマンのあるクルマにしていきたいですね。マツダ2では一人旅のようになってしまっていたので……。
あと勝手に言うと怒られるかもしれないけど(笑)、海外、特にニュルブルクリンクでマシンを走らせてみたいんです。そもそもどうやってたどり着けばいいのかとうい状態ですのでまだまだ先は長いですが、やっぱり行ってみたですよね!」
前田常務にお話しを聞くたびに、「一歩一歩」という言葉を何度か使われることが印象に残る。目指す目標もあり、レースが好きである以上は勝ちたいという思いも強いだろう。
しかし、決して急ぐことはせず、着実に進歩を続ける。
いつものように穏やかに語ってくれた前田常務ではあるが、今回マツダ3を投入したことにより夢の実現に向けて大きな一歩を踏み出したという想いがあるのではないか、勝手ながらそんな風に感じることができた。
丸本社長の言葉にあったガチンコ勝負にまだ遠いかもしれないが、このからどのようなチャレンジを見せてくれるのか楽しみにしてきたい!
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:折原弘之、GAZOO編集部)
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