アナウンサー無し、完全自動のスポーツ実況
一般財団法人トヨタ・モビリティ基金が、「もっといいモビリティ社会」の実現に向け、誰でもモータースポーツ観戦を楽しめるための実証実験を、2022年スーパー耐久最終戦鈴鹿サーキットで行った。今回は、10月に岡山でのスーパー耐久で行った実証実験に対して、より多くのユースケースやユーザーからの意見を収集するためのものだ。
実証実験内容は、視覚、聴覚、身体に障がいのある方の、サーキット場、サーキット場までの移動手段の課題を解決し、誰もがモータースポーツ観戦を楽しめるためるための取り組みとして、8つの実験が行われた。AIを活用した字幕提供、音の迫力で光るTシャツ、メタバースで会場の段差を来訪前に体験、iPhoneでの案内、CANデータを利用しレーシングカーに感情を持たせること、エンジン音と振動を軽いボール玉に振動と色に変換、空間を骨伝導でガイド、そしてレースの実況音声を完全自動でリアルタイム生成する実証実験だ。
トヨタ・モビリティ基金によると、11月末までに次のフェーズに続くチームを選出するとのことだ。選定基準は、当事者の方に喜んで使ってもらえるもの、多くの人に継続的に利用できることだそうだ。8つの実証実験の中で、一番気になった「VOICE WATCH」について株式会社電通の志村和広ディレクターにお話を伺った。
完全自動の実況中継
レースの状況を把握し、サーキットで音、匂い、スピード感ある車を見ると、レースって楽しいなと感じられるかもしれない。TV観戦にしろ、サーッキト観戦にしろ、レースの状況を把握することは必須だろう。視覚に障害のある方は、実況がなしではレースの状況把握は難しい。これを解決しようとしているのが、「VOICE WATCH」だ。
志村和広さん「サーキットに行ったことがある視覚障がい者に観戦時の気持ちを聞いてみたら、目の前で起きている光景を一緒に来ている友人に状況を説明してもらわなければいけないので気おくれするので、もう行きたい気持ちになれないと言われました。この情報格差を排除したいと志しました。」
かなり前だが、F1中継の古舘伊知郎アナウンサーや三宅正治アナウンサーの実況は楽しくTV中継を楽しみにしていた。レースにとって実況は凄く大事だと思う。しかし、真似すらできないのがレース実況だろう。ドラえもんポケットならともかく、実況を自動で行うなど想像ができない。
志村和広さん「スマートフォンカメラによる画像データ、レーシングカーのタイムや順位、ピエール北川さんのレース実況という3つの情報を使い、AIで実況を生成します。さほど難しい技術を必要としません。電通グループの約10人で3か月ぐらいでつくれました。」
実際に実況を聞かせて頂いたが、機械の自動実況とは思えない、抑揚のあるレース実況者は話している実況そのものなんで、既に使えるレベルになっている気がした。
11月20日豊洲で“こどもすぽりんぴっく”という運動会でも実験を行ったそうです。実験内容は、視覚障がい者のお父さんに、お子さんの徒競走を自動実況しお父さんに喜んで頂くという内容です。レースの情報が無いので、2つの情報でのAI実況だったのですが大成功だったそうです。
志村和広さん「この技術は、視覚障がい者の皆さんへの情報格差をなくすことができます。それ以外も利用の可能性はあると思います。例えば、マラソンです。TV中継されるのはトップ争いばかりですよね。自分が推しの人の実況をどんな順位でも聞けたら嬉しいですよね。この技術を使えば、推しの人中心の実況を実現できます。来年チャレンジ予定です。」
F1、SUPER GT、大学駅伝なども、推し中心の実況を望む方は多いと思う。一方で、沢山のアナウンサーが同じレースで選手別に違う実況をするのも難しが、「VOICE WATCH」なら可能だ。細かいこといえばカメラはどうするのかなど気になることはあるが、これが実現したらスポーツ観戦の革命かもしれない。電通さんが実験しているから、世界的なイベントで実証実験することも将来像に描いているんだろうなと勝手に想像している。
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