スーパー耐久第7戦富士で『共挑ピットツアー』を開催!マツダ、SUBARU、日産、ホンダ、トヨタのピットでファン至極の体験!
2023年11月11日〜12日、富士スピードウェイで開催された『第7戦 S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス』。予選日は冷たい雨が降り、決勝日は天候が回復したものの、寒波が襲来してこの秋一番の寒さになりました。そんな中でも多くのファンが富士スピードウェイに訪れ、各チームの寒さを吹き飛ばす熱いバトルに声援を送りました。
決勝日には、今年GAZOO.comが毎戦実施してきたピットツアーが「S耐ワイガヤクラブ」とコラボレーション。スーパー耐久のST-Qクラスを舞台に、マツダ、SUBARU、日産、ホンダ、トヨタという5社が行っている、メーカーの枠組を超えた取り組みをもっと知ってもらうために、それぞれの関連するチームの協力で『共挑ピットツアー』が行われました。その模様をリポートします!
『S耐ワイガヤクラブ』『共挑』ってなに?
ST-Qクラスにエントリーしているメーカー系マシンには『共挑』のステッカーが貼られています
『S耐ワイガヤクラブ』とは、スーパー耐久シリーズ2023のST-Qクラス(シーズン中でもマシンの開発が可能なクラス)に出場する自動車メーカー5社(マツダ、SUBARU、日産、ホンダ、トヨタ)が、メーカーの垣根を越えて意見交換していこうという取り組み。
【S耐ワイガヤクラブが目指すもの】
- スーツとネクタイを脱ぎ去った自由な意見交換
- スピードある開発
- レースで得た知見を市販車へフィードバック
- 若手エンジニアの育成
- カーボンニュートラル燃料や 水素エンジンの実証実験
など
いずれも「レースの現場だからこそできること」を旗印に、共に挑戦していこう=“共挑”をスローガンに活動しています。
共挑ピットツアーのスタート前にイベント広場のオフィシャルステージでは『共挑 S耐ワイガヤクラブ紹介』が行われ、各メーカーの担当者が同じステージ上にあがり、それぞれの活動をお話いただきました。これだけでメーカーの垣根を超えていることが感じられますよね。
では、なぜこの共挑の活動はスーパー耐久で行われているのでしょうか?それはスーパー耐久シリーズ機構事務局の桑山晴美事務局長のスピーチに現れています。
「ST-Qクラスの“Q”はQUESTION(クエスチョン)のQです。このクラスで行われている活動によってどんな未来が待っているのか。このクラスは未来に向かって挑戦しています。未来のモータースポーツ、未来のクルマに向かってどのようなことを行っていけばいいかを考え、挑戦していく場になっています。
すでに水素、バイオディーゼル、カーボンニュートラル燃料が使われていますが、これからさらにいろいろな挑戦を目の当たりにすることになります。このクラスに各社が揃ったことで、“日本”として未来を創っていくクラスになりました。そしてこの挑戦がいずれ市販車にも搭載されていくことを期待しています」
これから共挑ピットツアーに参加する人たちも桑山事務局長のスピーチを真剣に聞き、これから体験することに期待を膨らませていました。
オフィシャルステージでのトークショーが終了した後は、イベント広場に並べられたST-Qクラスに参戦する各社のマシンの市販モデル前で記念撮影。今回は各チーム15名ずつ当選したファンが一斉に写る集合写真はまさに圧巻です!
その後は、メーカーごとのグループに分かれてピットツアーに向かいます。ピットへと向かう地下通路を歩いている時も興奮を抑えきれない様子で、初対面の参加者同士が笑顔で話していたのも印象的です。
ここからは、各チームのピットで行われたピットツアーの様子をお届けしていきましょう。
MAZDA SPIRIT RACINGのピットツアー参加者を出迎えてくれたのは、監督の木田努さんとドライバーのみなさん。いつもスタンドから声援を送り、S耐TVで活躍を観ている憧れの人たちが目の前に登場して、感激している雰囲気が伝わってきます。
ST-Qクラス参戦車両の解説が終わると、ピットクルーの方々がツアー参加者のためにタイヤ交換や給油などのピット作業を実演してくれました。手を伸ばせば届きそうな至近距離でレースさながらの作業を見ることができたり、一緒に写真撮影ができたりしたのは、いい思い出になったはずです。
Team SDA Engineeringのピットツアーでは、子どもたちを中心にコクピットに乗せてもらうことができました。そしてピットクルーによるタイヤ交換作業とドライバー交代の様子を目の前で見せてもらい、参加者から歓声が上がります。さらにこれから決勝レースを走るマシンでタイヤ交換の体験までさせてもらうことができました。
タイヤの重さやインパクトレンチの衝撃を直に味わった参加者は「普段レースを観ているとあっという間に行っているタイヤ交換がこんなに大変だとは思いませんでした。ドライバーはもちろん、ピットクルーの方々のプロフェッショナルさに感動しました」と話していました。
日産はこの最終戦ではST-Qクラスにエントリーしていませんでしたが、今回の共挑ピットツアーにはST-ZクラスとST-3クラスに参戦するTEAM ZEROONEに再びご協力いただきました。ドライバーズシートには子どもだけでなく大人にも座らせてもらうことができました。
ロールバーでガチガチに固められたコクピットに乗り込むのに四苦八苦。ドライバーたちがいかに大変なことをやっているかを体験します。シートに座らせてもらったお子さんはコクピットのスイッチ類の多さに「市販車とこんなに違うなんてビックリ!いつか運転してみたいです」と目を輝かせていました。
決勝に向けて慌ただしくパーツ交換が行われる中でのピットツアーとなったホンダ・レーシング。スーパー耐久シリーズの公式ステージにも登壇した青木武治さんがまずはピット裏でマシンの概要を解説し、その後参加者たちはピットに入っていきます。
間近でマシンを見て、子どもたちは実際にドライバーズシートに座らせてもらうことができました。SUPER GTにも参戦する人気ドライバーのみなさんも長い間一緒に参加してくれて、記念撮影&サインタイムに。ファンにとってうれしい時間となりました。
ORC ROOKIE Racingのピットツアーでは、まずピット裏にある給水素関連の設備について、過去との変化点に注目いただいた参加者の方もいらっしゃって急遽解説タイム!そしてピット内に入るとTOYOTA GAZOO Racingの藤原裕也さんが、自ら開発を進めるGR86 CNF conceptのボンネットを開けたりしてマシンを解説。間近でマシン内部を見ることができ、ファンとして大興奮です!
決勝前の時間帯ですが、スペシャルサービスとしてお子さんにグローブを付けてコクピットへの試乗体験も。最後はプロドライバーのみなさんから記念品をプレゼントしてもらいピットツアーが終了しました。
共挑ピットツアー参加者から将来のレーシングドライバーが現れるかも!?
決勝レース前の短い時間でしたが、各チームのピットで貴重な体験ができた参加者たち。本物のレーシングカー、しかもST-Qクラス参戦車両という“未来のクルマ”を間近で見て、コクピットに座り、そしてドライバーやチームスタッフからさまざまな話を聞くことができたのは、文字通り“一生の想い出”になったはずです。
ここでピットツアーに参加した方々のコメントを紹介します。
■MAZDA SPIRIT RACINGのピットツアーに参加した男性
マツダが大好きで、デミオに乗っています。だからマツダのピットツアーに参加できたのはすごく嬉しかったです。今日はレースカーに乗ることはできませんでしたが、間近でマシンを見ることができて興奮しました。忘れられない想い出になります!
■TEAM ZEROONEのピットツアーに参加した男性
「僕の愛車はR33型スカイラインGT-R。間近でスーパー耐久に参戦しているマシンに触れられるのは日産ファンとしてすごく貴重な体験でした。スタンドで観戦しているのとは全然違いますね。私は乗ることができませんでしたが、友人は実際にコクピットに座ることができたので、うらやましかったですね」
■Team SDA Engineeringのピットツアーに参加したご家族
はじめて参加してとても楽しかったです。クルマにも乗せてもらえて嬉しかったです。(お子さん)
短い時間の中でいろいろなことを体験させてもらえてとても楽しかったです。タイヤ交換体験は父親の特権で家族には譲りませんでした(笑)。スバリストとして、たまらない瞬間でしたね。(お父さん)
■ORC ROOKIE Racingのピットツアーに参加した男の子
「本物のレーシングカーに乗せてもらってすごく嬉しかったです。クルマの中にはいろいろなスイッチがあってビックリしました。走りながらそのスイッチを間違えないで操作しているのってすごいと思いました。なんて言えばいいのかな。レーシングカーってなんかすごい! ロールバーもたくさんあってビックリしました。僕はクルマが大好きだから、将来はレーシングドライバーになりたい! お父さんが86に乗っているから、僕が運転免許を取ったらそれをもらうつもりです(笑)」
ご協力いただいたS耐ワイガヤクラブのメンバーも充実の時間に
ST-Qクラスに参戦する5メーカーが共同で実施した共挑ピットツアーを終え、チームの中にもさまざまな手応えがあったようです。最後にピットツアーにご協力いただいたメーカー・チームの方々の感想をお届けしましょう!
■MAZDA SPIRIT RACING 木田努監督
参加してくださった方がみなさん笑顔だったのが、私たちとしてもとても嬉しかったですね。タイヤ交換や給油を目の前で見られる機会はまずないと思うので、参加者にはとても貴重な体験になったのではないかと思います。みなさんが喜ぶ姿を見ることができたので、チームとしてもやってよかったなと感じています。
このような活動を通してお子さんたちがワクワクしてクルマを好きになったり、大人の方々がマツダのファンになっていただいたり、そんな風に広がっていけばいいなと思います。そしてS耐ワイガヤクラブの共挑を通じて各社がざっくばらんに意見を交換したりすることで、垣根がなくなってきているのを感じています。
■Team SDA Engineering 本井雅人監督
スタンドやピットウォークで柵の外からマシンを見るのと、ピットの中で見るのとでは、感じるものが全く違うと思います。せっかくのピットツアーなので、何をやったら参加者に喜んでもらえるかをみんなで話し合い、ドライバーチェンジを見てもらおうということになりました。
目の前で本物のドライバーが行う姿を見て、参加してくださった方々は興奮できたと思いますし、私たちとしてもすごくいい機会をいただけたと感じています。これをきっかけに一層SUBARUのことを好きになってくださったら本望ですし、ST-Qクラスに興味を持っていただける人が増えたらうれしいですね。こういうイベントは継続してこそ意味があると思います。私たちもみなさんと一緒に盛り上げていけたらと思っています。
■日産自動車 馬郡和哉さん
最終戦にST-QクラスでNISMOは参戦しませんでしたが、「日産のピットツアーに参加したい!」という方がたくさんいらっしゃったのは本当に嬉しかったです。こういうイベントでクルマに乗ってもらうのはお子さんが中心になりますが、NISMOをずっと応援してくださっている方がいらっしゃっていたので、せっかくだからと大人の方々にもマシンに乗っていただきました。「決勝直前にマシンに乗れるなんて!」と本当にうれしそうにされていたのがとても印象的でした。
共挑というスローガンの元に、メーカーの垣根を越えて共同でいろいろなことにチャレンジできることにも面白さを感じています。特にST-Qという新しいことへの挑戦でお互いに協力しあえるのは、市販車ベースであるスーパー耐久シリーズならではの面白さだと感じています。
■ホンダ・レーシング 渡邉和男さん
ドライバーと話をしたり、サインをもらったりして、参加してくださった方々が喜んでくれている姿を間近で見ることができたのは私たちも本当にうれしかったですね。これまでなかなかピットツアーを企画する機会がなかったのですが、S耐ワイガヤクラブとして共同で行うことができ、私たちにとってもいい経験になったと感じています。参加者にお配りした記念品も好評でよかったです。
これをきっかけにホンダのクルマに一層興味を持っていただき、実際に乗っていただいてそのクルマでサーキットに遊びに来てくれたらとても嬉しいですね。
■TOYOTA GAZOO Racing 藤原裕也さん
レースの現場だと、ファンの方々にチームの様子を間近で見ていただいたり、みなさんに笑顔をお届けする機会がなかなかなかったりします。実際にチームのピットを体感したり、クルマに乗り込んでいただいたりする機会を通して、我々がメーカーの垣根を越えて活動しているということを感じていただけたらうれしいですね。
レーシングカーは普段はなかなか触れることができないもの。だからといって敷居が高いわけでは決してなく、もっと身近なものだということをお伝えする機会になればと思います。今回はお子さんにもレーシングカーに乗っていただきました。私たちはメーカーとして、子どもたちがモータースポーツに夢を持てる場を残していきたいと考えているので、お子さんたちに喜んでいただけたのは本当によかったです。
クルマ好き、レース好きに肩書きは関係ない! 来シーズンのST-Qクラスに期待!
自動車メーカーといえば、お互いが自分たちのクルマに乗ってもらおうと魅力的な製品を開発しているライバル関係。レースではタイムを1/1000秒縮めて表彰台に上がるために、マシンの開発競争とレースでの熾烈なバトルを繰り広げます。
ライバル同士である自動車メーカー、そしてチームが「未来に向かって共に挑戦していこう!」とレースの中で争いながらもタッグを組んだS耐ワイガヤクラブは、奇跡と言っても言い過ぎではありません。
最終戦で開催された共挑ピットツアーに参加できた75名のファンは、各メーカーの心意気を直に感じることができたはず。
S耐ワイガヤクラブに対する各メーカーの想いは、オフィシャルステージで行われた『共挑 S耐ワイガヤクラブ紹介』でのTOYOTA GAZOO Racingの三好さんのコメントからも垣間見ることができました。
「『S耐ワイガヤクラブ』の“ワイガヤ”は、『ワイワイガヤガヤやろうよ!』というところから名付けました。実は決勝前日にもみんなでかつてないほど狭い部屋に集まって(笑)、肩を寄せ合いながらモータースポーツの未来について、ワイワイガヤガヤと話し合いました。話題はクルマのこと、新技術のこと、そしてピットツアーのようなファンの方々との交流のことなど多岐にわたりました」
三好さんによるとS耐ワイガヤクラブで集まるときは、お互いの肩書きなどは一切名乗らないそうです。年齢や立場などは関係なく、それぞれが一人のクルマ好きとして話をする。
そんな場から生まれるアイデアが来シーズン以降のスーパー耐久のST-Qクラスでどのように現れるのか、そしてどのようなクルマの未来を見せてくれるのか、同じクルマ好きとして期待したいですね。
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