ヤリスカップ現地レポート@富士 魅力的で公平なレースに向け進化! 注目のCVTは!?
「Netz Cup Vitz Race(ヴィッツレース)」として2000年から始まり、ヴィッツ3世代(SCP10/NCP91/NCP131)の車両で開催。そして、2021年から「Yaris Cup(ヤリスカップ)」として生まれ変わった。その最初のレースが6月5日静岡県・富士スピードウェイにて開催された。
各セッションが始まるとピットロードはヤリスで埋め尽くされる。1.4kmに及ぶ国内最長のストレートでは、ヤリスだと175km/hほど出るが、スリップストリームによって180km/h近くまで最高速は伸び、1コーナーは絶好の追い抜きポイントになる。
ヤリスカップの特徴やヴィッツレースからの変更点は!?
専用車両だがエンジンなどはいわゆる「ヤリス」とまったく同じ。専用のサスペンションが装備されているが、こちらはややローダウンして、乗り心地は少し引き締められているものの、サーキット=ゴツゴツしたレース用、といったサスペンションではない。
安全性向上のためのロールバーや、バケットシートが装着される以外は、結構普通のクルマだ。
価格も6速マニュアルで217万1100円。CVTで238万100円。1500ccでNAエンジンのベースグレードのヤリス(X 1.5L·6MT·2WD)が154万3000円であるため、約60万円アップとなる。
だが、専用ロールバー、サスペンション、フロントアクスルハブボルト&スペーサー、エンジンオイルクーラー、牽引フック、6点式シートベルト、専用フロアマットが装備され、同様のチューニングを施すとなると100万円近い価格となるため、かなりリーズナブルに仕上げられていると言えるだろう。
レース時はメーカーによるサポートがあり、アクシデント時にパーツがその場で購入できたり、自走で参加するエントラントにはありがたいサービス
だが、車高やバネのプリロードなどが変更できる86/BRZレースに比べると、その範囲は狭い。
気温、湿度、路面温度のコンディションによって空気圧セットが変わる。それによって順位が左右することも。セッティング変更といっても交換するパーツはないので、コストが抑えられ誰もが楽しめるレースを目指しているのだ。
走行の前後以外は和気あいあいとした雰囲気あふれるパドックだが、ひとたび走ればドライバーは汗だくで帰ってくる。レーシングスーツもいわゆる吊るしのままからばっちりロゴが入っているものまで色とりどり
また、ヴィッツレースからの大きな変更点は予選開始時にフロントタイヤ2本を新品にすることが義務付けられたこと。駆動輪にすり減ったタイヤを使うとタイヤ外径が小さくなり、加速力がアップするのはワンメイクレースでは定説。新品タイヤにすることで、よりイコールコンディションで誰しも表彰台を狙えるレースが整備されているのだ。
タイヤはGOODYEAR EAGLE RS-Sport S-SPEC 195/50R15のみが使用可能。耐摩耗性が高く、練習走行が何回もできるのも魅力。グッドイヤーもサービステントを設け、現地でのタイヤ組み換えやバランス調整などを行ってくれる
開幕戦から白熱のレース展開!
レースは91台ものエントリーがあり、予選をA/B組に分けて行なう。予選時間は15分間で、そのときのベストタイムでスタート順位が決定される。スーパーGTのようなレースでは、このときの順位でスタートするが、ヤリスカップではちょっと異なる。
予選スタート時間はA組のあとにB組でその時間には数十分のズレがある。気温や路面の乾き具合など、完全なイコールコンディションではない。そこでその差をなくすために最速タイムを出したグループをポールポジション(富士の場合はアウト側)から順番に縦に並べ、イン側の列にはもう片方のグループを順番に並べる。
実際、今回は雨上がりの予選となり、B組の方が有利。ポールポジションはB組トップの#61 PAK☆SPEC7 Yaris 松本康平選手が獲得。イン側トップ(2番手グリッド)はA組トップの#62 N群馬GスパイスFKμYarisの松原亮二選手が獲得した。
予選時間は各組15分ずつ。クリアラップを確保するため、いち早くコースインが定説だが、後半の1周勝負に出る選手もいる。今回はウエット路面から乾いていったため、走りながらタイヤを温め、路面が乾いた一瞬を狙った選手が上位に入った。
ちなみにポールポジションスタートの松本康平選手はカート出身。父はレーシングドライバーでGT300などで活躍し、最近も86/BRZレースに参戦している松本晴彦氏というサラブレッド。
2番グリッドは#62 N群馬GスパイスFKμYarisの松原亮二選手、3番グリッドは#34 LET's IMG Yaris 渡辺圭介選手、4番グリッドは#38 N中部GRGミッドレスYaris 神谷裕幸選手、5番グリッドはヴィッツレースの猛者女性ドライバー#930 ユニオンプロジェクトYaris 咲川めり選手が続く。松原選手、渡辺選手、神谷選手はいずれもヴィッツレースのシリーズチャンピオン経験者だ。
ヤリスになって初戦となったが、ヴィッツレース時代と変わらない台数がエントリー。1980年代の富士フレッシュマンレースにも負けない台数と熱気がそこにはある。
決勝レースは完全なドライコンディションの13時05分にスタート。綺麗なスタートで大きな順位変動はなし。ホームストレートに戻ってきた時点で上位に順位変動はないが、#99 KTGYIC京都WMYaris 大島和也選手が11位スタートから6位までジャンプアップ。このときはまだ誰しもノーマークだったはず。
4周目1コーナーで#61 PAK☆SPEC7 Yaris 松本選手に#62 N群馬GスパイスFKμYarisの松原選手が仕掛けている間に、#38 N中部GRGミッドレスYaris 神谷選手が2台をまとめて抜いてトップに。86/BRZレースでもクラブマンクラスでシリーズチャンピオンを獲得した神谷選手。その冷静なパッシングには余裕が見られる。
このまま神谷選手の横綱相撲かと思われたが、背後には11番手スタートの大島選手が迫ってきた。それでも抑えきるかと思われたが、ファイナルラップのコカ・コーラコーナーで大島選手が神谷選手をパッシング! トップに躍り出る。
神谷選手も諦めまいとダンロップコーナー進入でイン側から差し、並走して立ち上がるが、返しの左コーナーではイン側になる大島選手が守りきり、そのまま第3セクションを抑えきってゴール。11番手から見事優勝を飾り、ヤリスカップオープニングレースを制した。
- 勝利を挙げた大島選手には、予選前に一度話を伺った際「ヤリス カップカーになってちょっと自信を無くしてます」と話していた。
しかし、見事10台抜きでの勝利を挙げた後、再び話を伺ってみると、「何か」を掴んだようだ。
「予選で失敗したつもりはありませんでしたが、11番手ともうちょっとでした。しかし、テストしていく中で、ヤリスの美味しい走らせ方のポイントを見つけることができました。それもあって勝つことができました。セッティングとしては序盤からガンガン行く方向で、トップまで追いつくことができました」
一方、ファイナルラップで交わされた神谷選手は、非常に悔しそうではあったが、「スリップ(ストリーム)がかなり効くので、今後のレース展開は考えなくては」と、富士スピードウェイならではかもしれないが、ヴィッツレースとの違いを教えてくれた。
注目のCVTはどうだった!?
もうひとつ注目はCVTクラスが新設されたこと。
これまでのヴィッツレースもCVTで参戦は可能だったが、正直かなりの差があった。今回のA組予選トップの松原亮二選手をもってしてCVTでは予選通過がギリギリくらいと言えば、その厳しさがわかるだろうか。
しかし、ヤリスカップになり大きく変わった。まず、CVTクラスが設けられ、独立して表彰されること。そして、MT車との差を埋めるために、レース期間中はミッションコントロールコンピュータを専用品に交換し、よりタイムを出しやすいようになったのだ。
そんなCVTクラスには6台がエントリー。予選上位5台は決勝レースに進められるCVT枠が設定されたが、注目は#20 Tモビリティ神奈川Yaris 乙津竜馬選手。
トヨタモビリティ神奈川の社員ドライバーであり、レース自体は初というがCVTを手懐けるドライビングを心掛け予選はA組8位を獲得。決勝レースでも熾烈なバトルで順位を上げ、総合16位。CVTクラス初代ウィナーとなった。
「CVTはスタートとストレートスピードがやや厳しいです。スタートで数台抜かれ、ストレートスピードでもMTには少し劣りますが、それ以外のコーナーの立ち上がりなどはまったく遜色ありません」と乙津選手。
2021年から車両はヤリスに代わったが参加台数は91台とヴィッツレース時代とほとんど変わらず。納車待ちのエントラントもいるという人気っぷりをみせたヤリスカップ。タイヤはもちろん、工具もテーブルもイスも積んで自走で参加して帰れる本格レースであり、しかも今回は1日で予選&決勝が行われ、日帰り参戦も可能なレースは「サラリーマン、ときどきレーサー」が可能な貴重なカテゴリー。
今回は東西シリーズの合同開催となり、このあとはそれぞれのシリーズに戻って開催となるが、ヤリスカップ初年度の今年から多くのエントラントを集めそうだ。
(文:加茂新 / 撮影:加茂新、編集部 / 編集:編集部山崎)
[ガズー編集部]
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