サラリーマンレーサーが本気で楽しめるレース! ヤリスカップ参戦者の実態をリサーチ
初代ヴィッツの登場とともに始まり、2代目、3代目ヴィッツで継続開催。そして、2021年よりヤリスで開催されることになった、TOYOTA GAZOO Racingの入門カテゴリーのワンメイクレース。
ナンバー付きで改造範囲は極めて少なく、指定サスペンションを使い、タイヤは銘柄もサイズも1種類のみ。選択できるのはブレーキパッド、ホイール、オイル、ドライビングシート程度。
あとはタイヤの空気圧、フロントのアライメント、リアの14段減衰力調整が変更できるだけ。
調整範囲が少ないからこそ誰にでも勝てる可能性があり、コストも抑えられる。
そんな本格的レースがナンバー付き車両で行われるので、自走で参戦する人がほとんど。コスト的にも準備的にももっともユーザーライクなレースなのだ。
とはいえ、それなりに時間もお金も掛かるのがレース。
では、実際に参加しているのはどんな人なのだろうか。究極の週末時々レーサーたちの実情を編集部が独自取材した。
ヤリスカップ開幕戦の現地にてローラー作戦で事情聴取を行い、今回は91台の参加者のうち50台に話を聞くことができた。
ヤリスカップ開幕戦にも関わらず91台がエントリー。シリーズ戦は東日本、西日本に分けて開催されるが、この開幕戦は東西合同で開催ということもあり、集まった91台のエントリー台数は人気の証
オーナー層はどんな人なの? 年齢層と職業から分析
20代:18.3%
30代:18.3%
40代:37.8%
50代:24.5%
圧倒的に40代の年齢層のエントリーが多い。続くのは50代だ。やはり金銭的な余裕が得やすい模様。
「仕事も落ち着いて、時間が取れるようになったので初レースにチャレンジした」(40代・男性)
「45歳から土日休みの業務になり、その頃からヴィッツレースに参戦」(50代・男性)という意見が見られた。
しかし、20代、30代も負けじと合計すれば40代とほぼ同数となる。
20代ではやはりレースへのチャレンジのハードルが最も低いのがヤリスカップだったという意見が多く聞かれた。
そんな参加者の職種は、
サラリーマン・公務員:43.7%
自営業:33.2%
ディーラーやカーショップスタッフ:22.8%
フリーター:0%
無職:0%
と、圧倒的にサラリーマンが多いという結果に。
時間が自由に取りやすい自営業がもっと多いかと思われたが約1/3。4割以上がサラリーマンなのである。
しかも、これには自動車販売関係の従業員は含まれない。ディーラーとして参戦している選手も数名いたが、ディーラースタッフだがプライベート参戦という人もいる。そういった販売店関係者を含むと過半数はサラリーマンなのだ。
そんなサラリーマンでも参戦しやすいのがヤリスカップということ。
平日に競技が行われることはなく、今回は土曜日だけのワンデー開催で、予選から決勝までが行われた。サラリーマンにも優しいのだ。
(他のレースでは、金曜日に練習走行、土曜日に予選、日曜日に決勝レースというスケジュールなどもある)
サポートスタッフもサラリーマンなど、いわゆる普通の人も多い。「週末レースメカニック」も緊迫した予選や決勝を固唾を飲んで見守り、一緒に楽しむことができる。
約1/3の参加者は今回がデビューレース!!
これまでのヴィッツレース経験者は72%。さすがに開幕戦に出てくるだけあって、ワンメイクレース経験者が多数を占めた。
しかし、逆に言えば『約3割が今回がデビューレース』だという。これは驚くべき数値。かなり早めに参戦を決めヤリスを注文し、タイヤやホイールなど準備をした人だけで3割もいるということ。
これから納車の方や準備中の方を含めれば、もっともっと新規参戦エントラントは増える。コスト的にも参戦体制的にもデビューしやすいレースなのだ。
そして、レース参加者の50%以上が「モータースポーツが好きでレースで競争してみたかった」というのが参戦のきっかけであるという。観るだけのものから、自分でやるものになったということだ。
ほかにも運転が好きでレースしてみたかったという人も多数見られた。
「通勤途中に参戦しているカーショップがあった」という日常でレース車両を目にしたのがきっかけという人もいる。
また、「モテたい」とか「友人に誘われて」という理由で参戦を決めた人も見られた。
ヤリスカップを選んだ理由としては、「近隣のお店が参戦していた」という人が16%と多かった。
個々の理由としては参戦費用などのコスト面や、レースレベルの高さが魅力的、非力なクルマが速くなるための登竜門だから、という意見も見られた。
予算は100万円以下が圧倒的! シリーズ参戦しても100万円以下で可能!!
やはり気になるのは参戦コスト。
車両購入費、納車時のパーツ代を除いて、メンテナンスや必要パーツ、エントリー費、遠征費用など含めて、年間100万円以下で済ませる人が2/3を占めた。全戦参戦予定のエントラントは50%(東西シリーズそれぞれに参戦)。全戦参戦予定の中で予算100万円以下は46.7%だった。
全戦参戦以外のエントラントは「富士スピードウェイの2回のみ参戦」という意見も多く、練習の成果を発表する場所としてホームコースでのレースのみに参戦しているようだ。
スポット参戦組では、自宅から比較的近いサーキットを中心に3~4戦参加するという意見がもっとも多かった。
シリーズチャンピオンを目指すだけではない、レースに向けて鍛錬し、レースを精一杯楽しむエントラントが数多く参戦していることが確認できた。
富士スピードウェイを中心に鈴鹿やSUGOに遠征する人や、旅行を兼ねて十勝にエントリーする人もいる。シリーズは追いかけず、富士だけを楽しむ人も多い。
レースの指南役はトヨタディーラーが最多。頼れるディーラーが増えている!!
参戦の手ほどきや疑問、メンテナンスやセッティングのコツなど、頼れるアドバイザーは欲しいもの。
そんなアドバイザーがトヨタディーラーという人は約50%にも登った。
これまでヴィッツレース時代には、ネッツ店がその役割を担っていたが、ヤリスカップになり全チャネルで車両を購入し参戦できるようになった。
それにともなってレースの指南役を担ってくれるトヨタディーラーも増えたことで、50%もの支持を獲得できたと思われる。
その他にはカーショップやT.R.A.事務局にアドバイスを求めている人が多かった。
メンテナンスを依頼する先もトヨタディーラーが約50%と圧倒的。同時に自身である程度作業する人も約30%と多かった。
完全なプライベーターはほとんどおらず、簡単な作業は自分で、レース前のメンテナンスなどはディーラーに依頼するという人が多かった。
練習走行は月に1~2回が最多。週末、時々レーサーになる
約34%がレース前を中心に月に1~2回の練習走行を行っているという。
ほかにはシミュレーターを活用したり、フィジカルトレーニングに励む人もいた。
逆に毎週練習走行をするような人はいなかった。まさに時々レーサーを満喫しているエントラントが多いことが確認できた。
これまで考察した結果見えてきたのは、ヤリスカップ参戦者は、
普段はサラリーマン、
月に数回レーサーになる。
という人が圧倒的に多いということ。それが可能なのがナンバー付きでコストが抑えられて、ハイレベルなレースを楽しめるヤリスカップなのである。
サラリーマンをしながら、自営業をしながら、ゴルフのように趣味として時折レースを楽しむ。レーサーとして非日常を楽しむ。そんな大人の趣味を実現できる夢の舞台がそこにはあるのだ。
(文、写真:加茂新、GAZOO編集部 山崎)
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