愛車の条件はやっぱり「カッコいい」!? 東京オートサロンに見る新型車と多様化する愛車の楽しみ方~「愛車」徹底討論 Vol.3~

  • 愛車徹底討論第3弾「愛車の条件」

アフターコロナに向けて大きく動きだした2023年春。自動車業界にとって年明けの恒例イベントとなっている「東京オートサロン」も、3年ぶりにほぼ従来の規模で開催されたのは嬉しいトピックでした。

そして東京オートサロンにはこれまでと変わらず多様な「愛車」のカタチがあふれていましたが、自動車業界は電気自動車(BEV)が各社から続々と発売され、カーボンニュートラルや自動運転など未来へのクルマ造りも進んでいます。

そんな未来の愛車とはいったいどういうものなになるのだろうか、という壮大なテーマを語り尽くす座談会企画をお届け。1回目、2回目は今回ご参加いただいている、自動車研究家の山本シンヤさん、プロドライバーの谷口信輝選手、フリーアナウンサーの安東弘樹さんの愛車遍歴と愛車への想いをたっぷり語っていただきました。

3回目は、とにかく自動車に対する愛が深い3人に「東京オートサロン」や「最近お披露目された新型車」をもとに「愛車」のカタチについて討論していただきました

東京オートサロンで感じたアフターパーツの進化

  • 東京オートサロンの会場イメージ

    東京オートサロンにおけるクルマと来場者の距離は、やっぱり近い

谷口:東京オートサロンといえば、チューニングカー。かつては「改造するのはダメ」「改造は悪」なんていう時代があったじゃない。自動車メーカーが改造を目の敵にするような時代。自動車メーカーとチューニング業界の間にはベルリンの壁よりも高い壁があった。

でも最近はメーカーも「チューニングも含めてみんなで盛り上げましょう」という感じで、壁がなくなったよね。いいことだと思う。

谷口:結果として、自動車業界全体が盛り上がる。どこの世界にも食物連鎖みたいなのがあって、自分だけじゃダメなの。何かを消すと、その影響がまわりまわって自分に返ってくる。だからみんなで自動車業界を盛り上げて、みんながハッピーという方向に進めたほうが絶対にいいと思うんだよね。

山本:確かにそうですね。

  • 東京オートサロン2023でドレスアップカー部門の最優秀賞を獲得したVeilSide FFZ400

    チューニングカーの展示も、かつてに比べて魅せる演出をおこなうブースが増えた

――谷口選手はむかしから東京オートサロンを見ていますよね。東京オートサロンに関することでもチューニング業界に関することでもいいのですが、時代による変化は感じていますか?

谷口:自動車メーカーがカスタムというものに寛容になるに従い、アフターパーツ自体もしっかり進化していると思う。
すべてが10年前、20年前と比べたらよくなったね。一見したところ変わっていないように見えるタイヤだって、ブレーキだって。なんでもそう。

――1995年にはじめて自動車メーカーが東京オートサロンに参入してきて、そこから30年経ちました。東京オートサロンに来ている層の変化などは感じました?

谷口:昔は情報って雑誌とビデオくらいしか発信がなかったのに、いまはネットでどんどん情報が広がる時代。
世界が近くなったし、日本の中でも東京に対して地方との距離が縮まったね。
東京オートサロンも、単にカスタムしたクルマを置いて自慢しているだけじゃなく、しっかりお客さんの対応ができるイベントになったと感じています。

みんなで盛り上がるには、“お花畑”もアリだと思う(安東)

  • 安東弘樹
  • ダイハツ・ATRAI WILDRANGER

安東:かつてに比べるとファミリー層の来場者が増えましたよね。自動車メーカーもいろんなトライをしていて、たとえばダイハツのブースはお花畑みたいな明るい雰囲気なんです。そういうのは昔の東京オートサロンとは全然違うじゃないですか。

もちろん、中にはそういう雰囲気は東京オートサロンらしくないから好きじゃないという人もいるかもしれないけれど、でもそういうブースがあるからこそ東京オートサロンに来るという人もいる。せっかくのお祭りなんだから、みんなで盛り上げていったほうがいいと思っています。

  • スバル・クロストレックBOOST GEAR コンセプト

    2023年の東京オートサロンは、リフトアップした“アゲ系”のカスタマイズが増えた印象

――以前に比べると来ている人のクルマの楽しみ方の幅が広がっている印象もありますね。

谷口:今年のトヨタのブースはびっくりしたよね。AE86が置いてあるんだから。

――あれは「古い車を乗っている人にも道を閉ざさない」というアピールでしたね。

山本:古いクルマに乗っている人も含め、みんなでカーボンニュートラルを考えていこうというきっかけになったと思う。

安東:東京オートサロンではなく東京モーターショーを見ていると、格調が高くなりすぎちゃった気がするんですよね。ほとんどの人はステージに飾られたクルマを遠くからしか見られない東京モーターショー(2023年の開催から「ジャパンモビリティショー」として一新する予定)。

いっぽうで東京オートサロンのほうが展示車両との距離は短い。なんとなく親しみを感じるじゃないですか。クルマを身近にしてくれるイベントだと思っています。

  • 電動化と水素エンジン化したハチロク(AE86)

    トヨタGAZOOレーシングのブースには、水素エンジンや電気自動車にコンバージョンされたAE86が展示された

トヨタ自動車社長とチューニングショップ社長が対等に話をするのがオートサロン

――今年の東京オートサロンで気になるクルマはありましたか?

安東:たとえばダンロップブースは、展示車両に旧車が多くあったんです。気がつけば、自分も旧車ばっかり気になっていたりして。自分の手の届く範囲で旧車をコツコツ楽しむのもいいのかなと思いました。そういうライフスタイルを提案するブースも、クルマ文化を広げてくれるんだなと感じましたね。

山本:見ていて面白かったのは、トヨタ自動車の豊田彰男社長とトップシークレット(日産車を中心に日本のカスタムカー文化をけん引する世界的に有名なチューニングショップ)社長である永田さんが話をしていたこと。ああいうのは東京オートサロンじゃないとみることができない。

  • 山本シンヤ
  • 豊田章男社長と永田和彦社長

――東京オートサロンはいろんな意味で垣根が低くて、それがいいところなのでしょうね。クルマ好き同士がまるでミーティングでワイワイやっているような気持ちになれる。そんな雰囲気が東京オートサロンにはまだ残っているのでしょう。

山本:そういう空気感は失わないで欲しいですね。

――ところで、東京オートサロンで自動車メーカーからお披露目された新しいクルマについてはどう感じましたか? たとえば2024年モデルの「日産GT-R」なんていかがでした?

  • 日産・GT-R(2024年モデル)

    日産自動車は東京オートサロンを新しいGT-Rの発表の場としている。2023年は24モデルを初公開

安東:田村(宏志)さん(かつてGT-R開発責任者で現在はアンバサダーという立場)は熱かったですね(笑)
メーカーにとってGT-Rのようなアイコンは大切だと思います。「GT-Rのある日産」と「GT-Rのない日産」を比べたら、クルマ好きにとって存在感が全く違いますよね。そういうクルマを東京オートサロンで発表するのは素晴らしいことですよ。

谷口:ボクはGT-Rに関して「2007年デビューでさすがに引っ張りすぎでしょ!」という気持ちと「もし次の36型GT-Rになったらこういうクルマにはできないのかな、だから35で頑張っているのかな」という気持ちの両方があったね。
どっちにしろ、今日産ができる最大限のことをやってくれていて、延命してくれるのはありがたい。

山本:GT-Rみたいな車種は、一回途切れさせてしまうと復活が難しいんですよ。継続することが大事だなって思いながら新しいGT-Rを見ていました。

新型プリウスはスバ抜けたデザインになって凄いことしてきたな(谷口)

  • トヨタ・プリウス

    そのカッコイイスタイルが話題になっている新型プリウス

――新型プリウスなんてどうでしょう? 今年の東京オートサロンは、多くの人にとっては初めて新型プリウスの実車を見る機会となりました。

安東:正直に言います。はじめてプリウスがカッコいいと思いました(笑)

谷口:プリウスは、刺激こそないけれど一台あれば何も困らないクルマだと思っています。超便利で、不満は何もなく、快適で、思い通り動いて、文句はなにもない。
そんなクルマがあんなスバ抜けたデザインになって、「凄いことしてきたな」っていうのがまず思ったこと。あのデザインは本当にいい。

――今回の座談会のテーマは「愛車」なのですが、谷口選手はそんな新型プリウスに愛を注げますか?

谷口:ボクの場合はノーマル状態で所有しないのがポリシーでありライフスタイルなので、クリアランスを保つための車高と電車のように引っ込んだタイヤはどうしても変えたい部分。それを乗り心地などに犠牲が出ないように頑張ってカスタマイズしたうえでなら、大丈夫。愛せますよ。

愛せないクルマは我が家に入れないけど、新型プリウスは大丈夫!

  • 谷口信輝
  • モデリスタ プリウス・ELEGANT ICE STYLE

――あとは刺激ですか?

谷口:そこは勘違いされやすいんですが、刺激が足りないといっても、とはいえ常に刺激が欲しいわけじゃない。
「木を隠すなら森へ」じゃないけど、時には「あっ谷口だ!」と特定されない時間も欲しいんですよ(笑)。そのためにはプリウスがとてもいい。
実はプリウスも持ってた。30(先々代)もあったし、50(先代)も買ったよ。

――なんと……それは意外ですね。山本さんはどんな印象ですか?

山本:新型プリウスは、はじめてクルマ好きが気になるプリウスになったと思う。プリウスっていままでは生活のクルマというイメージがあったけれど、新型はクルマ好きにとっても「積極的に買いたいクルマ」になったと思いませんか。やっぱカッコって大事だよね(笑)

<プリウスの試乗記をチェック!>

  • プリウスと山田弘樹
  • プリウスと矢田部明子

新型プリウスがどのような方に「愛車」として迎え入れて欲しいのか。山田弘樹さんと矢田部明子さんお二人が思う愛車像を元に、プリウスの愛車としての価値を存分に語っていただきいたGAZOO.comオリジナルの試乗記です。

――なるほど。

山本:ただ、どんなにカッコよくても工業製品だから万人受けするように作っている。それをカスタマイズして完全に自分好みに仕上げるのがドレスアップの醍醐味ですかね。

――やっぱりカスタマイズが大事ということ!?

谷口:いずれにせよ、俺らみたいなカスタム大好き派からすると、モーターショーと違っていろんな愛車のカタチが混在するオートサロンに対してメーカーが近づいてきてくれたのは嬉しいよね。

  • 谷口信輝、山本シンヤ、安東弘樹

    左からレーシングドライバー谷口信輝さん、自動車研究家山本シンヤさん、そしてフリーアナウンサーの安東弘樹さん。クルマ好きの3人の話はいつまでも止まらない(写真:堤晋一)

クルマ好きにとっては、東京オートサロンや東京モーターショーという大きなイベントはやはり特別な意味を持つようですね。
昨今は環境性能が声高に叫ばれ、エモーショナルなクルマ作りが二の次になっているようなイメージもありますが、実は新型プリウスのようにクルマ好きの感性に訴えかけてくるクルマが増えているようです。クルマを「愛車」として付き合うには、そういったエモーショナルな部分が大切なのかもしれません。

というわけで、留まるところを知ならない3人の愛車話はまだまだ続きます。次回第4弾は未来の愛車について熱く語っていただきましょう。

(司会/まとめ:工藤貴宏 写真:堤晋一/工藤貴宏/東京オートサロン/GAZOO編集部)

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